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戦の王と神獣


大国のグラディア王国は、大陸の国だ。技術と魔法が発展し、工業が盛んな王国は、軍団が統率されている。

そしてこの世界には、優れた王の元に現れるとされる吉兆をもたらす神獣がいる。龍ではあるが、人間の姿になり、王を支える。国の王が求めてやまない神獣ーーそれがジェードだ。数千年前ーーグラディア王国を作った初代王の頃から存在した。


「国とは民ありて存在する。私はこの国を民達の為の国にする」


初代王はその生涯を国の為に尽くした。ジェードはそばで支え続けた。


「民を想うその心こそ王の器。貴方こそが黎明の王。俺は貴方の旅路の終わりまで付き従います」


時代は移り変わり、王が民に圧政を敷く時代が訪れた。


「民を蔑ろにする者は王の器では無い」


ジェードは冷たくそう言って必死に引き留める王の元を離れた。その後、革命により、王は滅びた。ジェードを求め、戦争が起きたこともあった。


「我が国こそが手に入れる!」


「いや、私こそが賢王だ!」


怒鳴り合う王達にジェードは冷たく告げた。


「民を蔑ろにする者が、賢王と呼ばれるわけが無い」


王達は誰も選ばれなかった。

そして数千年ぶりに再び、グラディア王国に若き賢王が現れた。その名はエリオス。彼は戦の王と呼ばれる程の軍師だった。彼は隣国に攻め込み、ジェードを奪った。旗が燃える中、彼は黒と金の軍服を赤く染めてジェードを見下ろしていた。


「…俺について来い」


冷たい紫の目でそう告げる。隣国は降伏し、植民地となった。そして、それこそが戦の王と呼ばれるエリオスの初の戦だった。彼は勢いを弱らせることなく、その後も戦をし、勝利し続けた。民達はそんな王を噂する。ーー彼の後には血の道が続く。戦の王だと。


「王、民達から不満が出ている。戦ばかりで国土を広げても、統治し続けるかは別だ」


進言したジェードを見ることなく、黒髪の男ーーエリオスはその紫の目を書類に落としたまま答えた。


「ならば制圧すれば良い。それにインフラは整えてやっている」


冷たく低い声。ジェードはため息をついた。


「確かに、水道や電気の普及、橋をかけたりと賢王ではあるんだよな…ただ、気性が荒すぎる」


彼は呟き、エリオスに再び進言する。


「ルピカ王国からグラディア王国との関係良好の為、縁談の申し込みがある。…いい加減、家庭を持って落ち着いて欲しいなってジェードは思ったり…」


ジェードは指先を合わせて小さく言った。


「女をやるから攻めないでくれ…小国が考えそうなことだ」


表面上は関係良好の為だが、実際には政略結婚では無く、生贄であることをエリオスは指摘した。


「ルピカ王国…小さな島国の国だよね。…今度はくれぐれも、作法がなって無かったとか、態度が気に入らなかっただとか、退屈だとか言って殺したりしないでくれよ」


ジェードはエリオスに文句を言った。彼の長い生涯の中で、エリオスは一番手を焼く王だった。


「それが理由で戦争になったこともある。民達もいい加減、平和を望んでいるんだ」


歴代の王の肖像画が並べられている壁には、初代国王の肖像画もあった。エリオスの肖像画は無い。描いた絵が気に食わないと画家を殺したせいでグラディア王国の画家は誰も依頼を受けなくなった。


「うるさい。どうせ今度の女も今までと同じ、俺を見て怯えて震える女だろう」


エリオスは窓の外を見た。その目に感情は無く、冷たい。つまらなそうに変わらない景色を眺めている。


「確か…名前はステラ嬢だな。氷の令嬢と呼ばれていて婚約破棄されたそうだ」


エリオスは冷たく笑う。


「誰が来ようと一緒だ。構わない」


ジェードはため息混じりに呟いた。彼の緑色の目が長いまつ毛に伏せられる。白銀の髪が開いた窓から入って来た風に吹かれて揺れる。


「絶対生まれてくる時代間違えてるよ、この人の子。乱戦の世に生まれてくるべき逸材だった」


ジェードは肩をすくめる。それが歴史を見て来たジェードの現王への感想だった。


「この王が愛を知ることなんてあるのだろうか。もし、あったら面白いんだけどな」


彼はそう呟いてカリスマはあるが、気性が荒すぎる王を眺めた。


ーーステラがグラディア王国に嫁ぎに来る数日前の話しだった。


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