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【百万PV感謝!】転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第三十章:ワーク・ライフ・インテグレーション

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皇宮内三ノ宮家の私室にて、その一

 春咲山(はるさきやま)で結婚式を挙げ、伊吹達は東京へと帰って来た。


 本来であれば翌日にも皇宮へと報告に伺う予定だった伊吹だが、皇宮内がバタバタしているからという事で、数日間待ってほしいとの連絡があった。


 そして今日、伊吹と美哉(みや)橘香(きっか)の三人のみが伊織(いおり)から招かれた。

 何故か二人との子供である咲哉(さや)伊月(いづき)、そして妊娠中の藍子(あいこ)は絶対に連れて来ないようにと指示を受けた。


 現在、皇宮にある三ノ宮家(さんのみやけ)の私室にて待機中だ。


「てっきりおじい様の私室へと招かれるのかと思ったけど、一ノ宮(いちのみや)でもなくここで会うのか。

 面会予定がずらされた事と言い、皇宮内の警備が厳しくなっている事と言い、何かあったか?」


「さぁ」

「聞いてない」


 今回の結婚式の報告については形式だけであり、面会して直接話すだけの予定だった。

 (おさむ)がなぎなみ動画で限定生配信をし、身内に公開していた。

 当然、皇宮内にいた祖父母、父親、弟夫婦にも結婚式に間接的ではあるが、参加してもらっている。


 改めて、結婚式を挙げた後に直接会って話すだけの予定を、わざわざずらされたという事は、何か不測の事態が起こったと考えるのが妥当である。


「治、何か聞いてるか?」


『すまない、親父殿。

 皇太子殿下から直接ご報告があるので、俺様の口からは伝えられない』


 治の返答を受けて、伊吹は何か重大な異常が発生した事を察した。

 執事である智紗世(ちさよ)と、引き継ぎ中の智佳(ちか)に目を向けるも、二人も何も知らない様子で、伊吹に向けて首を横へ振っている。


 伊吹は侍女である美子(よしこ)への目を向けたが、目を伏せて答えようとしない。

 その態度から、美子は事態を把握しているが、今すぐ何か対応が必要ではないのだろうと伊吹は受け止めた。


「そうか、分かった。

 誰かの命に関わるような事じゃないんだな?」


『あぁ。後始末もほとんど終わっている。

 皇太子殿下も、もう間もなくご到着予定だ』


 治がそう言ってから、数分後に伊織が伊穂(いお)を伴ってやって来た。

 伊吹と美哉と橘香が立って待っていると、二人は土下座をせんばかりの勢いで頭を下げて、謝罪をしてきた。


「俺の不始末のせいで迷惑を掛けた。本当にすまない!!」


「私の母がご迷惑をお掛け致しまして、本当に申し訳ございません!!」


「ちょっと待ってくれ! 俺はまだ何も聞いてないんだ、謝罪も何も何をされたのかすら知らないんだ!! まずは説明してくれ!!」


 伊吹が何とか二人をソファーへと座らせて、今回の騒動について聞く事となった。

 美子が用意したお茶を飲み干した後、伊織が改めて口を開いた。


「話は咲弥(さくや)が皇宮を出た原因の説明からとなるんだが……」


「お母様が俺を普通の男の子として育てたいと言ったからだと聞いたような気がするが」


「いや、本当は違うんだ」


 伊織は美子へ視線をやるが、すぐに伊吹へと向き直った。


「俺の第一夫人と第二夫人、佑子(ゆうこ)依子(よりこ)が、咲弥に対して目に余るほどの嫌がらせを始めたんだ」


「……俺を身籠った事がきっかけか」


 元々、咲弥に対しての嫌がらせは伊織の目の届かないところで行われていたのだが、咲弥が男児を身籠ったと判明した日から、隠せないほどの嫌がらせを始めたのだ。


「体面上、二人と離縁する事は出来ず、俺は父上を説得し、咲弥を逃がす事しか出来なかった。

 その頃の二人の実家、問屋田家(とやだけ)の力が大きくてな。皇宮としても強く出れなかった」


 その事をきっかけとし、伊織はある程度に留めていた転生者として前世の知識を全力で使い、皇宮と大日本皇国の影響力を増していく為に動き始めた。


「もっと早く俺が転生者として動き、力を付けていれば。咲弥はまだ生きていたかも知れない……」


 そう零す伊織に対し、伊吹は何も言葉を掛ける事は出来なかった。


「……後悔してもし切れないが、今は置いておこう。

 その後、佑子と依子には手も触れなかったんだ。愛する人を奪った者の相手など出来る訳がない。

 しかしすでに依子は妊娠しており、伊穂を産んだ。

 二人に対して怒りや恨みはあったが、伊穂には関係ないと思い、皇太子ではなく父親として接してきたつもりだ。

 そのお陰か、伊穂は素直で礼儀正しい男に育ってくれた」


「何だ? 突然息子自慢か? 俺も息子なんだが?」


 伊吹はあえて冗談を言い、場を和ませようとする。

 伊織も伊穂もその事に察し、笑顔を浮かべた。


 しかし、美哉も橘香もすまし顔で表情を崩さない。


「お前達三人の結婚式の後、二ノ宮(にのみや)の私室に依子が伊穂への縁談を大量に持って来たらしい。

 伊穂は第一夫人である貴子(たかこ)の臨月が近いので、今そんな話をしたくはないと依子を突き放したそうだ」


 本当は結婚式の最中の事だったが、三人のお祝いに対しケチを付けたくないと思い、伊織はあえて結婚式の後と伝えた。


「素直で礼儀正しい息子が、妻を優先して母親である自分に反抗して来た、と」


「その通りだな。

 ショックを受けた依子は、何を思ったか、お前と藍子(あいこ)との男の子を取り上げて、自分で育てようと考えたらしい」


「……姉妹揃って何を考えてんだ?」


 佑子も依子も、揃って伊吹の息子を自分のものにしようと企み、見事に失敗している。


「未遂とはいえ、母が考えた事は許されない行いです。

 本当に、申し訳ございません」


 伊穂はソファーに座ったまま、伊吹に向けて両手を膝に置いて深く頭を下げる。


「きっかけが伊穂とのやり取りだったとしても、伊穂が謝る事じゃない」


「全ては俺のせいだ。

 咲弥を皇宮から逃がすのではなく、佑子と依子に対し真剣に向き合うべきだったんだ。

 そうすれば、今も咲弥は……」


 悔しそうに俯く伊織に対し、伊吹が声を掛ける。


「それはそうかも知れない。

 けど、その過去があるから今があるんだよなぁ。

 お母様が皇宮を出てくれなかったら、俺は春咲山で幼馴染二人とこんなにも仲良くなれてなかったかも知れない。

 こうして結婚もしてなかったかも知れないし、そもそも一緒に遊ぶ事すら出来なかったかも。

 お母様にも孫を見せたかったけど、その孫が生まれなかったら意味がないしなぁ」


「伊吹……」


 伊織はそう言って苦笑を浮かべる伊吹に対し、何も言い返せないでいる。


「それで、今は解決したんだよな?

 依子様はどうなったんだ?」


 伊吹は二十年前の事よりも、今現在の事を教えてほしいと伝える。


「依子は……、姉が妊娠している事を知り、佑子に襲い掛かろうとしたところを侍女に止められた。

 事情聴取をしても埒が明かず、困っていたところを治が助けてくれたんだ」


「妊娠!? 佑子様が!?」


「「おめでとうございます」」


 伊吹は驚いて声を上げ、美哉と橘香はお祝いの言葉を伝えた。


「うん、まぁありがとう、だな。

 伊月を取り上げようとした佑子に対し、罰として毎日俺の寝室に来るように言ったんだ。

 咲弥を逃がさなければならない状況になったのは、佑子と依子を愛さなかった自分にも責任があるから、な」


「そりゃあ出来るな、まぁおめでとう。

 それよりも、佑子様とお腹の子は大丈夫だったのか?」


「あぁ、すぐに医者に見せたが問題ないとの事だった。

 で、依子は現在皇宮の一室に軟禁中だ」


「そうか……。

 伊穂、お前は悪くない。責任を感じる必要なんてないからな?」


 実の母親が自らの姉に襲い掛かろうとし、拘束されている。

 伊吹は悲壮な表情を浮かべている伊穂に対し、そう声を掛けた。


「はい、ありがとうございます……」


 伊穂としては、そう答えるしかなかった。

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