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【百万PV感謝!】転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第三十章:ワーク・ライフ・インテグレーション

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実家の庭で

 伊吹と美哉(みや)橘香(きっか)との結婚式を終えて、皆で実家の屋敷へと戻って来た。

 式は早朝から執り行われたので、今から昼食となる。


 屋敷の食堂は広いが、今回実家まで付いて来てくれた涼香(すずか)杏奈(あんな)達をもてなすには足りない。

 伊吹としては、無理を言って付いて来てもらったのだから、何らかの形で労いたいと考えた。

 そこで、伊吹の希望により庭でバーベキューをする事となった。


 皇宮警察や地元警察や宮坂警備保障の者達も、交代で参加してほしいと伊吹が声を掛けた。


 昔からよくご近所さんを集めてバーベキューをしていたので、野外用のテーブルやイスなどは揃っている。

 バーベキューコンロも複数あり、伊吹の近くにあるコンロは、美哉と橘香が焼き担当をしている。


 今日くらい座っていたら良いのにと思う伊吹だったが、二人が自分のお世話をするのが生きがいであると知っているので、 笑顔で見守る事にした。

 二人はここぞとばかりに侍女服を着て、野菜を切ったり飲み物を用意したりしている。


 親王妃のする事ではない、油が跳ねて火傷をするから危ないなど、二人に苦言を呈するような人物は、この屋敷にはいない。


 儀礼指南役として三ノ宮家(さんのみやけ)へ派遣されており、今回の旅にも同行している式部(しきぶ)(つかさ)も、生き生きとした表情で働いている美哉と橘香を、笑顔で見守っている。


 ちなみに司の姉である教子(のりこ)は、伊吹との子を身籠っているので、本社ビルでお留守番だ。


「懐かしいなぁ」


「よくこうしてお外でお食事をしていたの?」


 伊吹の両隣には燈子(とうこ)藍子(あいこ)が座っている。


 二人は美哉と橘香から直々に、座っているようにとお願いされている。

 自分達の仕事を取ってほしくないからだ。


「してたよ、ご近所さんを集めてみんなでバーベキューしてた。

 まぁ、ご近所さんだと思っていたのは、みんな僕の侍女さんだったって後になって知ったんだけど」


「この子が産まれたら、伊吹が育ったとの同じように育てたいな」


 藍子がお腹を撫でながら、バーベキューの準備をしている侍女達を眺める。


 みんな、伊吹と美哉と橘香が小さい頃から見守っていてくれた人達だ。

 今日はある意味、そんな人達に向けた結婚披露宴と言っても良いかも知れない。


「「おぎゃぁ、おぎゃぁ」」


「あら? お腹が空かれましたか?」


「お二人揃って、仲がよろしいですね」


 ベビーカーに寝かされていた咲哉(さや)伊月(いづき)が、同じタイミングで泣き出した。

 紅葉(もみじ)が咲哉を、雪羽(ゆきは)が伊月を抱き上げて、自らの胸元を晒す。


「あー、屋敷に戻っても良いよって言うべきかな?」


「え、何で?」


 伊吹の言葉の意図が分からず、燈子は首を傾げる。


「人前で授乳するのって、嫌がる人はいないの?」


「そんな話、聞いた事ないよ」


「私も」


 伊吹の疑問に対し、藍子と燈子が答える。

 伊吹の前世世界では、子供におっぱいをやる為に、人のいない別室へ移動したり、胸が見えないようにケープで隠したりするのが一般的だった。


 散々子育てを手伝わされていた伊吹でも、姉達が子供らにおっぱいをやっているのをじっくりと見た事はない。


「そうなんだ、まぁそれなら良いんだけど。

 それにしても、自分の子が母親以外の人からおっぱいを貰っているのって、不思議な光景だね」


 自分の子供に乳母が付いているという事が、伊吹には未だにしっくりと来ていない。

 自らの時も、乳母はおらず、母親である咲弥(さくや)からしかおっぱいを飲ませてもらっていない。


「そうかな?」


「男の子はそういうものだと思うけど」


 藍子も燈子も実際には見た事はないが、腹違いの弟である賢章(けんしょう)にも、乳母はいたはずだ。


 美哉と橘香が子供達に授乳しないのは、三々九度の際に少量とはいえお酒を飲んだ後だからだ。


 アルコールは血中から母乳へと流れ、子供の口に入ってしまうので、母親は妊娠中だけでなく、子供の授乳期間が終わるまでは飲酒は避けるべきだ。

 決して伊吹のお世話を優先している訳ではない。多分。


「出来た」

「配る?」


 子供達が一生懸命おっぱいを飲んでいるのを眺めていた伊吹の元へ、美哉と橘香が焼きたての肉を皿に取って持って来た。


「ありがとう。

 じゃあ行ってくるね」


 藍子と燈子の元にも、美子(よしこ)京香(きょうか)によって肉が運ばれた。


「いってらっしゃい」


「先に頂いてるね」


 二人を残し、伊吹は美哉と橘香を伴って、涼香達のいる席へ向かった。


「い、伊吹様っ」


 声が掛けられる前から涼香は伊吹の接近に気付いており、自分達に用があるのだと察し、杏奈と共に立ち上がって待っていた。


「楽にしてよ、涼香先生。杏奈さんも。

 焼きたてのお肉を配ってるんだ、お皿を持って」


「は、はいっ」


 事前に伊吹が焼きたての肉を参加者へ配ると伝えていたので、こちらのバーベキューコンロにはまだ肉が乗せられていない。

 空の取り皿を両手で差し出して、涼香が伊吹から肉を受け取る。


「伊吹様はもうお食べになったのですか?」


 伊吹が食べていないのに、自分達が先に食べるのは憚られると杏奈が言う。

 この世界にも主催者が来客者をもてなす文化はあるが、男性を差し置いて先に食べるというのは、杏奈にとって居心地の悪いものだ。


 来客者が居心地が悪いのであれば、主催者として本末転倒となってしまう。


「あ、そうだ。

 美哉、僕にお肉食べさせて」


「はい」


 あーん、と美哉が箸で摘まんだ肉を食べる伊吹。


「次は僕が美哉に食べさせてあげる。

 はい、あーん」


 ぱくっ、と伊吹から差し出された肉を食べる美哉。


「あーん」


 伊吹が考えている事をすぐに察し、橘香が肉を摘まんで伊吹へと箸を向ける。

 伊吹はそれを食べて、同じように伊吹が橘香へと肉を食べさせてやる。


「私達は何てものを見せられているの……?」


「何か涙出て来たんですけど……」


 とんでもない顔を向けられているのに気付き、伊吹が涼香と杏奈へ説明する。


「僕の前世の世界では、ファーストバイトって言って、新郎と新婦がお互いに食べ物を食べさせ合うという儀式があったんですよ。

 一生食べ物で苦労させない。一生美味しい料理を作る。

 そうやってお互いに誓い合うものなんですけど。

 今日結婚式だったんで、ちょうど良かったです」


 男である自分が食べたので、さぁどうぞ食べて下さいと言いたかった伊吹だが。


「あの、私にも食べさせて下さいませんか!?」


「杏奈ちゃん!?」


 杏奈が顔を真っ赤にさせながら叫び、涼香を驚愕させる。


 涼香共々、伊吹に抱かれた事のある杏奈とはいえ、第三夫人と第四夫人の目の前で、受け取りようによっては伊吹への結婚の申し込みとも取れる発言だ。


 伊吹達が気を悪くすれば、職を失うだけでなく、藍吹伊通(あぶいどお)り一丁目からも放り出され、恥知らずとして世間から白い目で見られる可能性まである。


「ん? 良いよ、はい。あーん」


 しかし伊吹がそんな事で気を悪くするはずもなく、橘香から差し出された皿と箸を受け取り、伊吹が杏奈へ肉を食べさせてやる。


「ん~~~、はひはほふほはひはふっ」


「はい。涼香先生も、あーん」


「へっ、あむっ……」


 涼香は杏奈を羨ましいと思う間もなく、気付けば伊吹から肉を食べさせてもらっていた。


「じゃ、二人とも楽しんで下さいね」


 涼香も杏奈も、突然の幸運を噛み締めている間に、伊吹は別のテーブルへと向かってしまった。


「私にもお肉を食べさせて頂けるんでしょうか……?」


 伊吹はその後、バーベキューの参加者全員に肉を食べさせて回る事となった。

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