王女姉妹との婚姻について
直近のお話と矛盾が生じている箇所がありますが、そうなんだなぁと鼻をほじりながら読んで頂ければ。
皇宮内、皇王陛下の私室に近い応接室にて。
皇王陛下、皇太子陛下、内閣総理大臣以下閣僚が集まっている中に、伊吹が遅れて到着した形となる。
「お待たせしても申し訳ございません」
「いや、疲れているであろう中で急に呼び出したのはこちらだ、スマンな」
皇王である伊澄が謝ってみせる。
その事で、伊吹はこの集まりが非公式なものである事を察する。
「気付いただろうが、この場での発言については一切記録を取る事はない。
伊吹の本心を教えてほしいと思っている」
「はい、分かりました、おじい様」
伊吹の返答を受けて、伊澄が満足そうに頷く。
「さて、父上に代わって俺が司会進行をさせてもらおう」
伊織が伊吹に向き直り、今回皆が集まった趣旨についての説明を始める。
内閣閣僚達は誰も口を開かず、目を伏せて可能な限り存在感を消している。
「アルティアン王国から伊吹と、リツ王太女殿下並びにマヤ殿下のと婚約についての内々の打診があった。
単刀直入に聞く。
伊吹はこの婚約についてどう思う?」
父親にそう問い掛けられた伊吹は、さすがに驚いてしまった。
皇宮に来るまでの車中にて、摩耶との婚約の話なのではと智沙世と話し合っていたが、さすがにその姉で王太女でもある律とも婚約の話が来るとは思いもしなかったのだ。
ちなみに、キャリーと摩耶について口を滑らせてしまっている治は、自重して自ら未来の情報を伝えるような事はしなかった。
また、伊吹も治に聞けば未来の事が分かる、という事が頭から抜けていたので、治に問い掛ける事はしていない。
「えっと、摩耶はともかくとして、会った事もない女性と婚約したいかと聞かれても、会ってみないと分からないとしか答えようがないんですが……」
伊吹は他国の王女と関係を持つに留まらず、婚姻関係を持つなどの考えていなかった。
ましてや律に関しては次期女王となる事が決定している王太女だ。
いずれ自分が女王の伴侶、王配になるかも知れないなど、誰が想像出来るだろうか。
「つまり、実際に会う事が出来れば考えられる、という事で良いな?」
「まぁ、それはそうですが」
伊織の問い掛けに答えた伊吹の言葉をきっかけとし、一人の女性が立ち上がって一礼をし、足早に応接室を出て行った。
「今のは外務省の事務次官だ。
アルティアン王国の駐日大使に、リツ王太女殿下の訪日が可能かどうか打診する」
「会えば考えられるとは言いましたが、お見合いの為に次期女王が来日されるでしょうか?」
「どの王室も世継ぎの為ならフットワークは軽くなるさ。それに、アルティアンは世界一の親日国だ。
それと、これはあまり大きな声では言えないが、伊吹と両殿下の子供が王位継承権を持つ事になれば、半ば属国化した状態と言える。
欧州に対する影響力を増せるのなら、皇国としては非常に良い機会となる」
男女比が一対三万となってしまったこの世界において、男系継承を続けるのは非常に難しい状態になってしまっている。
男系継承を尊守しているのは今や大日本皇国のみと言っても過言ではない。
皇宮内ではいずれ世界中の王室に伊吹の子供を送り込む計画を立てており、今回のアルティアン王国との縁談は、良いモデルケースであると見られている。
「それとは別に、アルティアン王国からの、伊吹と両殿下との婚姻が成った際の見返りについて説明しよう」
伊吹は、もし律と結婚したら、自分がアルティアン王国の公爵に叙される事や、公爵領が下賜される事など、事前にアルティアン王国から提示されている内容を聞かされる。
「結婚するだけで公爵になり、領地まで与えられるんですか……」
「まぁ、それだけの価値が伊吹にはあるからな。
今のところ、リツ殿下は妊娠の兆候が見られた事は一度もないらしい。
マヤ殿下が伊吹との子を授かれば問題ないが、二人まとめて伊吹と婚姻関係に持ち込める事が出来れば、より確実に子を授かれるという思惑だと思う」
「相手の思惑とか、私自身が直接お会いして考えるなども大事ではあるのですが、まずは一度妻達と話し合いたい。
恐らく反対はされないにしろ、彼女達の与り知らないところで勝手に決めたくはないので」
「まぁ、それはそうだな」
この世界において、男性の結婚を決める際は本人の意向、もしくは親の意向が重視され、すでに男性の妻となっている女性に意見が求められる事はない。
しかし、伊吹と同じような価値観を持つ転生者である伊織は、伊吹の気持ちに理解を示した。
「失礼致します。
マヤ殿下が駐日大使を伴って、皇宮へお越しになりました。
ご用件は、リツ王太女殿下の来日についてとの事です」
伊織が目線を送ると、伊澄が小さく頷いて見せた。
「私が会おう。
と言っても、さすがにこの部屋でと言う訳にはいかんな。
王女殿下をお招きするに相応しい部屋へお通しするように」
伊織が素早く指示を出し、伊吹へ同席するよう伝える。
「分かりました。
明日大喜利大会なんだが」
小声で伊織へそう言うと、伊織は怪訝な表情で問い返した。
「明日? 来週だと聞いているが?」
「は? いやいやいや、明日だよ」
「明日大喜利大会を開催するなら、お前が今ここにいるのはマズイだろう。
ライブもするんだろ? ならゲネプロとか、大会自体のリハーサルとかあるはずじゃないか」
伊織の言葉を聞いて、伊吹が固まってしまう。
「ご主人様。皇太子殿下が仰る通り、大喜利大会は来週開催予定です」
智紗世から耳打ちされ、伊吹は思い違いをしていた事に気付く。
「……何で明日だと思ってたんだろう」
「まぁそういう事もあるさ、お前は忙し過ぎるんだよ」
伊織は何でもない事のように笑い飛ばす。
「それよりも、今はアルティアンの王女姉妹の話だ。
お前が口説いた女なんだ、お前が責任を持って相手しろよ」
「摩耶はそうだが、その姉もだなんて聞いてない」
「姉妹丼だ、楽しめ楽しめ」
「他人事だと思って……」
「いやぁ、楽しそうで羨ましい」
「代わりたいなら……、いや、何でもない」
「お? もう独占欲か?」
「自分が抱いた女を親父に抱かれると想像しただけで勃たなくなりそう」
「おい、それはマズいぞ、それだけは何とか回避してくれ」
伊吹と伊織は応接室の準備が出来るまで、こそこそとくだらない事を話して過ごした。
姉妹作品の主人公である艦治の介入により、世界線が変わりました。
その事を伊吹が知覚出来る訳ないんですが、分かりやすく演出として表現しております。
(と言う事にしておいて下さいw)




