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未来からの伝言  作者: 涼
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変化した未来

■ 2019年1月21日(月)


今日は見事な快晴だがかなり寒い。また寒波がきているようだ。10:00前に会社に出勤して朝礼のためにフロアの前のほうに行って立っていた。社長と西浦真美がフロアの真ん中に来て、また長い社長の話がはじまった。社長はよく喋る人なのか、これほど社員に話すことがあるとつくづく思う。今日は社員のコミュニケーションの話をしているが、社長は誰とコミュニケーションをとっているのか謎である。長い社長の話が終わると西浦真美が「では今週もみなさんがんばりましょう」と言って朝礼が終わった。


俺は自分の席に座ってパソコンの電源を入れると、黙々と業務を続けていた。最近は特に変わったこともないのでまったりしていたが、本当はこんなことをしている場合じゃないのだ。そういえば2033年から届いたメールには次に莉奈と口喧嘩する予定になっているが、今のところそんなことは起こりそうにない。やはり未来や過去の改変をしているため、起こるはずの事が起こらなくなってきているのかもしれない。そう考えると世界線の分岐はもう近いのかもしれない。そんなことを考えながら業務をしていると西浦真美から『ちょっと聞きたいことがあるの』とテレパシーが送られてきた。俺は『聞きたいことって何?』とテレパシーを送ると西浦真美から『水嶋君はスノーボードできる?』とテレパシーが送られてきた。俺は西浦真美に『俺はスキー専門だけど、ちょっとくらいならスノーボードは滑ったことあるよ』とテレパシーを送った。しばらくして西浦真美から『ちょっと相談があるから休憩室に来てもらえる?』とテレパシーが送られてきた。俺は『すぐに行くよ』とテレパシーを送って休憩室へ向かった。


休憩室に入って椅子に座って待っていると西浦真美が入ってきて椅子に座った。


「西浦さんが相談って珍しいね。どうしたの?」

「今週末ね、藤堂君にスノボーに行かないかって誘われたんだけど、わたしやったことがないのよ」


そういえば2033年から送られてきたメールには西浦真美と藤堂晃がデートにスノーボードに行くと書いてあった。西浦真美がケガをするから阻止してほしいとのことだった。


「それで西浦さんはスノボーに行く予定なの?」

「どうしようか迷ってるのよね。藤堂君は教えてくれるって言ってるんだけど、わたしに滑れるかしら?」

「うーん・・・自信がないなら行くのを辞めといたほうがいいんじゃない?」

「それがね、藤堂君はどうしても行きたいみたいで、絶対に滑れるように教えるからって言ってるから悩んでるのよ」

「でも西浦さんがケガをするかもしれないから、俺は行くのは辞めたほうがいいと思う」

「そうよね。でも、藤堂君がなんだか可哀そうな気がするのよ。あれだけ行きたいって言ってるから断りにくいのよ」

「スノボーだけは避けたほうがいいと思うよ。本当にケガする可能性があるからね」

「水嶋君らしくないこと言うじゃない。どうしてそこまでわたしがスノボーに行くのを止めるの?」

「いや、俺もスキーするからね・・・ほら、骨折とかする可能性もあるわけだしね」

「怪しいわね。もしかしてわたしがスノボーでケガすることを知ってるんじゃないの?」


西浦真美はこういうことには鋭い。俺はどう言えばいいのか少し躊躇した。


「知ってるというより、そういう予感がするんだよ。俺から藤堂さんに話をしてみようか?」

「予感ねえ・・・まあいいわ。水嶋君が藤堂君に話をしなくてもいいわよ。相談したことを知られると藤堂君も気を悪くするかもしれないから」

「まあ、そうだね。とにかく俺は西浦さんがスノボーに行くのは辞めたほうがいいと思う」

「ちょっと考えてみるわ。でもやっぱり断りにくいから行くかも。危ないと思ったらすぐに辞めるようにするわ」

「そっか・・・仕方ないね。わかったよ」

「こんな相談でごめんなさいね」

「いや、いいよ。じゃあ俺は戻るね」

「わかったわ。わたしも戻るわね」


俺と西浦真美は休憩室を出た。そして俺は自分の席に戻って考えてみた。西浦真美と藤堂晃がスノーボードにデートに行くということを阻止することはできなさそうだ。これに関しては俺が介入できる問題ではない。しかしこれもなんとかしないと未来を改変させることはできない。しかし、おかしいのはその前に莉奈と口喧嘩をするはずなのだ。まだ一週間あるが、その間に莉奈と口喧嘩するのだろうか。やはり過去や未来を改変してズレが生じてるのかもしれない。どちらにしても似たようなことが起こるのは間違いなさそうだ。それにしても今週末に西浦真美はスノーボードに行ってしまうとケガをする可能性は高い。これを阻止する方法はないものか。この日はずっとそのことばかり考えていた。そして勤務時間終了の19:00になったので俺はさっさと退社した。


自宅に帰って夕食をさっさと終えるとシャワーを浴びて自分の部屋に入った。パソコンの電源を入れてもう一度2033年から送られてきたメールを読みなおしてみた。やはり先に莉奈と口喧嘩をして一週間連絡を取らなくなると書いてある。その次が西浦真美と藤堂晃がデートをすると書いてある。しかし、今のところ莉奈と口喧嘩はしてない。順序が逆になってるだけなのかもしれないが、今までは順番通りに起こっていた。週末までに莉奈と口喧嘩してしまうということになる。そこは注意するとして、問題は西浦真美と藤堂晃のスノボーデートをなんとかしないといけない。いや、ちょっと待てよ。ここには西浦真美がケガをするので阻止してほしいと書いている。デートにスノーボードを行くことを阻止するんじゃなくて、西浦真美のケガを阻止するとも読み取れる。つまり、二人がデートにスノーボードをすることが問題ではない。阻止するべきなのは西浦真美のケガなのだ。それなら、俺も一緒について行くことはできないだろうか。今週末の予定は特にないので一緒に行けばいいのではないか。しかし、二人のデートに俺一人がついて行くのもおかしいので、莉奈を連れていければいいのだが、莉奈はスキーやスノボーは滑れるんだろうか。そんな話はしたことなかった。だから今シーズンはバックカントリースキーの予定は入れてなかったのだ。一応、聞くだけ聞いてみようか。そう思って俺は莉奈に電話をした。


「もしもし、莉奈、突然ごめんね」

「もしもし、祐樹君、どうしたの?」

「一応聞いてみるだけなんだけど、莉奈ってスキーやスノボーって滑ったことある?」

「スキーなら何度か滑ったことあるよ。スノボーはあまり好きじゃないんだけど、どうして?」

「莉奈がスキーって想像つかなかったんだよ。どのくらい滑れるの?」

「わたし、これでも小学生の頃からスキーは滑ってるんだよ。最近は全然行ってなかったんだけど、上級者コースでもゆっくりなら滑れるよ」

「今週末なんだけど、もしかしたらスキーに誘うかもしれないけど、一緒に行ってくれるかな?」

「別にいいよ。久しぶりだからどのくらい滑れるかわからないけどね。でも祐樹君って山に登ってスキーで滑って下りてくるんだよね。そういうのはできないかもしれないよ」

「いや、まず行くのは普通のゲレンデだから大丈夫だよ」

「それなら別にいいよ」

「それと行くなら西浦さん達と一緒になるけどそれでもいい?」

「西浦さんってスキーできるんだ?別にいいよ」

「いや、なんかスノーボードするらしいんだけどね。じゃあまた連絡するね」

「はーい」

「じゃあおやすみ」

「おやすみ」


莉奈がスキーができるとは思いもしなかった。それに最近の10代や20代はみんなスノーボードをするので莉奈は一緒にスキーをしてくれる人がいなかったのかもしれない。聞いておいて本当に良かった。それなら明日、西浦真美に一緒に行っていいか聞いてみようか。そう思いながら俺はベッドに横たわって知らない間に眠っていた。


■ 2019年1月22日(火)


朝10:00前に会社に出勤してパソコンの電源を入れた。俺はすぐに西浦真美に『週末に藤堂さんと行くスノボーだけど、俺と莉奈も一緒に行っていいかな?』とテレパシーを送った。すると西浦真美から『藤堂君に聞いてみるわね』とテレパシーが送られてきた。もし一緒に行くことができるのであれば、西浦真美のケガを阻止することができるかもしれない。ずっと業務を黙々と続けていたが西浦真美からの連絡はこなかった。


午後なって業務をしていると西浦真美から『藤堂君に確認したわ。別に一緒に来てもいいらしいわ』とテレパシーが送られてきた。俺はすぐに西浦真美に『じゃあ俺達は直接ゲレンデに行くようにするから、何時にどこのスキー場に行けばいい?』とテレパシーを送った。しばらくして西浦真美から『風吹スキー場って知ってる?そこに朝九時に待ち合わせでいいらしいわ』とテレパシーが送られてきた。俺はすぐに『そのスキー場なら知ってるよ。じゃあ朝9時にゲレンデ入口で待ってるね』とテレパシーを送った。これで西浦真美を注意して見ておけばケガは阻止できると思う。その後、この日は何も起こらず勤務時間終了の19:00になったので俺はさっさと退社して帰宅した。


帰宅後、夕食を終えてシャワーを浴びた後、自分の部屋に入って莉奈に電話をした。今回は莉奈の家の方向なので週末の26日土曜日の朝7:00に迎えに行くことになった。


その後、この週末までは何事も起こらなかった。


■ 2019年1月26日(土)


今日は天気は快晴といえる。雪焼けしないように日焼け止めを持って行くことにした。そしてスキー板とスキー靴を車に積んで莉奈の家近くのコンビニエンスストアへ向かった。朝6:55に莉奈の家近くのコンビニエンスストアに到着すると莉奈がスキーウェアを入れたバッグを持って待っていた。そして風吹スキー場へ向かって車を走らせた。車内で莉奈と何気ない日常会話をしながら車を走らせていたが口喧嘩になるようなことはなかった。


高速道路を走ってインターチェンジを出ると県道を山のほうへ走らせた。莉奈は助手席でぐっすり眠っていた。俺は小さな音で音楽を流しながら車を走らせた。そして8:50に風吹スキー場の駐車場に到着した。今回は俺と莉奈のスキー板は持ってきていたが、莉奈のスキー靴だけはなかったのでレンタルすることにした。そして9:00前にゲレンデの入口に行くと黒いスノーボードウェアを着た藤堂晃とピンク色のスノーボードウェアを着た西浦真美が待っていた。俺は「おまたせ」と言って合流した。ゲレンデに入って1日リフト券を購入すると藤堂晃が「午前中は西浦さんにここの初心者コースで滑り方を教えますので、お二人は滑ってきてください」と言った。俺は「じゃあ12時にそこのレストランで待ち合わせして、一緒に昼食をとろう」と言った。ここの初心者コースならケガをすることもないだろうと思った。


俺と莉奈は二人でゲレンデのトップまでリフトで上がっていった。ここのゲレンデトップは中級者から上級者向けのコースだが、莉奈の滑りを拝見しようと思った。リフトを降りると、最初は上級者向けの斜面といってもいい。俺は先に「莉奈、滑ってみて」と言うと莉奈は「わかった」と言って滑っていった。どこで学んだのかわからないが、莉奈は結構ターンも上手く切れて滑れている。莉奈はかなり下のほうまで滑っていき、途中で止まって俺のほうを振り向いた。そしてストックを上にあげたので、俺にも滑ってきてという合図だろう。俺も滑走して莉奈のところまで追いついた。俺は「莉奈、結構スキー上手いね」と言うと莉奈は「そんなことないよ」と言った。その後、俺と莉奈は二人でゲレンデの下まで滑っていった。初心者コースのところを見ると西浦真美が少し怯えながらゆっくりとスノーボードで滑っている姿が見えた。まあ、午前中はこの初心者コースで滑っていれば安心だと思ったので、莉奈と二本目の滑走をするためにゲレンデのトップまで再びリフトに乗って上がっていった。莉奈はスキーの感覚を思い出したようで、スイスイと滑っていた。俺はそんな莉奈の滑りを見ていて、これはバックカントリースキーに連れていけると判断した。再びゲレンデの下まで滑走して三本目の滑走するために再びゲレンデのトップまでリフトに乗って上がっていった。ゲレンデのトップに着くと俺は莉奈に「今度は俺についてきて」と言った。そして滑走してゲレンデの途中で止まった。そこにはゲレンデの分岐があり看板が立っていた。その看板には未圧雪、最上級コースと書いていた。


「祐樹君、もしかしてこっちに行くの?」

「そうだよ。もうこのコースは飽きたし、こっちのほうが面白そうだからね」

「だって、この先は最上級コースって書いてあるよ?それに未圧雪って何?」

「未圧雪ということはパウダースノーってことだよ。バックカントリースキーも未圧雪だからね」

「わたし大丈夫かな?いけると思う?」

「莉奈の滑りを見ていると行けると思うよ。とにかく行こうよ」

「うん・・・わかった」


そして、俺と莉奈は未圧雪で急斜面の最上級コースのほうに滑っていった。さすがに最上級コースと書かれているだけあって、すごい急斜面だ。しかも未圧雪なのでかなり滑りにくそうだ。しかし、俺はこれまでバックカントリースキーでこのくらいの斜面を滑っている。さすがの莉奈も心配そうに斜面を眺めている。俺は「莉奈なら大丈夫だよ。さあ滑ってみよう」と言った。莉奈はおどおどしながら斜面をゆっくりと滑りはじめた。もはや滑るというよりスキーで下りているといってもいい。しかしバックカントリースキーをするならその意識は必要なのだ。要するにスイスイ滑走するのではなく、スキーでここを下れるかどうかが問題なのだ。ところが莉奈はターンを細かくしてゆっくりと滑ることができている。俺もここはスイスイ滑るのではなく、ゆっくりとターンを切りながら下っていく感じになる。飛び跳ねるようにターンをしていけばスイスイいけるのだが、未圧雪なのでどこに何があるかわからない。そして、俺と莉奈は転ぶことなく見事に最上級コースの斜面を滑り下りた。俺は「莉奈、ここも意外と滑れるでしょ?」と言うと莉奈は「でもちょっと怖かったよ」と言った。そしてゲレンデの下まで行くと続いて四本目の滑走をするために再びゲレンデのトップまでリフトに乗って上がった。リフトに乗ってる時に俺は「莉奈、今度バックカントリースキーに行こう!莉奈なら行けるよ」と言った。莉奈は心配そうに「わたしでも山に登ってスキーで下りれるの?」と言ったので、俺は「そこまでの技術があったら大丈夫だよ。ゲレンデなんかより人もいないし楽しいから」と言った。続いて別の最上級コースを俺と莉奈は滑走していった。莉奈も二回目とあって未圧雪に慣れてきたようで、さっきよりスムーズに滑走することができた。ゲレンデの下まで滑走して時間を見ると12時前になっていた。さすがに四本連続の滑走で疲れたのでレストランの前で待つことにした。しばらくすると藤堂晃と西浦真美がレストランの前にやってきた。藤堂晃は「水嶋さん、お待たせしました」と言って四人でレストランに入った。


レストランで俺と藤堂晃はカツカレー、莉奈は胡麻味噌ラーメン、西浦真美はオムライスを注文した。そして四人でテーブルの椅子に腰かけて食事をしながら少し話をした。


水嶋祐樹「ところで西浦さんはどこまで滑れるようになったの?」

西浦真美「初心者コースはなんとか滑れるようになったわ。午後から中級者コースに行こうって話になってるの」

藤堂晃「西浦さんは飲み込みが早いから教えるの楽でしたよ」

水嶋祐樹「じゃあ午後からは俺達も一緒に滑るね」

笹原莉奈「祐樹君、もう最上級コースはいいの?」

水嶋祐樹「もうあれだけ滑れたらいいよ」

藤堂晃「お二人とも最上級コースを滑っていたのですか!?すごいですね」

笹原莉奈「祐樹君に無理矢理連れて行かれました」

西浦真美「水嶋君、莉奈ちゃんにもっと優しくしないとダメよ」

水嶋祐樹「いや、だってバックカントリースキーをするなら最上級コースくらい滑れないとダメだからね」

藤堂晃「バックカントリーされるんですね。すごいです」

笹原莉奈「今度、わたしも連れていかされることになりました」

西浦真美「水嶋君は登山バカだからスキーもめちゃくちゃなところ滑るんでしょうね」

水嶋祐樹「むちゃくちゃなところって別にそんなことはないよ。それより西浦さんは中級者コース行って大丈夫?」

藤堂晃「もう大丈夫だと思いますよ。西浦さん、かなり上達しましたし、もう自由自在に止まれるようになっています」

水嶋祐樹「かなりの上達ぶりなんだね」

西浦真美「そんなことないわよ」


そして昼食を終えて午後になると、今度は四人で中級者コースを滑走することにした。リフトに乗ってる間、俺は莉奈に「お願いがあるんだけど、西浦さんが危なくならないか注意して見ていてほしい」と言った。莉奈は「どうして?西浦さんのこと心配なの?」と聞いてきたので俺は「ちょっと心配なんだよね。なんとなくケガする気がするんだよ」と言った。莉奈は不思議そうな表情をしつつ「わかった」と言った。リフトを降りると中級者コースといっても結構な斜面だった。西浦真美は少しおどおどしながら滑りはじめた。俺は西浦真美に危険があればすぐに助けれるくらいの距離で滑走していた。莉奈も俺の後に続いて滑走してきた。西浦真美は何度か転んでいたがスピードも出ていないしケガをする感じではなかった。一本目はなんとかゲレンデの下まで滑ってくることができた。続いて二本目も同じコースで滑ることになった。俺は莉奈と二人でリフトに乗りながら考えていた。もし西浦真美がケガをするのであれば、滑りに慣れてきた頃ではないだろうか。誰もが慣れてきた頃に油断ができる。そう思いながら二本目の中級者コースを滑っていった。西浦真美の様子を見ていると二本目になると慣れてきた感じはあった。藤堂晃が西浦真美は飲み込みが早いと言っていたが本当のようだ。二本目はあまり転ぶことなく西浦真美はゲレンデの下まで滑ることができた。続いて三本目も同じ中級者コースを滑ることになった。そろそろ慣れてきた頃だと思った。リフトを降りると西浦真美はスイスイと滑っていった。さっきよりスピードが出ている。俺は何かあった時のために西浦真美と同じスピードで滑走していった。西浦真美はターンも切らずに直滑降で滑りだした。これはバランスを崩すとかなりまずいと思った。西浦真美は「きゃー」と叫びながら滑走していた。俺はすぐに西浦真美を止めようとスピードを上げた。すると西浦真美はバランスを崩しながらも自分で止まることができた。俺は「西浦さん、あのスピードはヤバイよ」と言った。すると西浦真美は「アイスバーンになってるところがあってターンが切れなかったの」と言った。しかし、転ばずになんとか自分で止まることができたのだ。莉奈は「西浦さん、無理しないでね」と言って藤堂晃は「もう少しゆっくり滑ろう」と言った。そこからゲレンデの下で少し休憩をして五本目、六本目と滑ったが西浦真美はケガをすることはなかった。そして四人とももう疲れてきたので16時を過ぎた頃に帰ることにした。


駐車場で俺は藤堂晃と西浦真美に「今日はありがとう。二人ともじゃあ気を付けて帰ってね」と言った。そこで二人と別れて俺と莉奈は車に乗った。車内で莉奈が不機嫌そうな表情をしていた。俺はしばらく黙っていたが、莉奈もなにやら黙り込んでいる。気になったので俺から話しかけた。


「莉奈、なんか怒ってる?」

「怒ってはないけど、祐樹君、午後から西浦さんのことばっかり気にしてたよね」

「まあ、それはケガしないか心配だったんだよ」

「なんでそこまで西浦さんのこと気にしてたの?」

「特殊能力じゃないけど、ずっと嫌な予感がしてたんだよ。でも何もなくてよかったよ」

「なんか、わたしほったらかしにされてる気がしてた」

「そんなことないよ。ほったらかしになんかしてないよ」

「だって、祐樹君、午後はわたしのこと全然みてなかったもん」

「それは莉奈が思った以上にスキーが上手だったからだよ」

「わたしより西浦さんのほうが大事だったの?」

「そういう言い方をするのはよくないよ。そもそも誰のために・・・いやなんでもない」

「誰のためにって西浦さんのためじゃないの?」


俺はここで思った。これ以上は口喧嘩になる。それだとあの2033年から届いたメールに書かれていたことが現実に起きてしまう。


「莉奈、ごめんね。別にほったらかしにしたつもりはなかったんだけど、莉奈がそう思ったんだったら俺が悪いよ」

「いいの。わたしのほうこそムキになってごめん。ちょっと悲しかっただけだから」

「ただね、今日、西浦さんには絶対ケガさせたくなかったんだよ。ずっと嫌な予感しかしてなくてね。でも、そのことで莉奈を悲しませてしまった。本当にごめんね」

「もう謝らなくていいよ。祐樹君が嫌な予感してて助けたかった気持ちはわかるから。そういう優しいところが祐樹君らしいよね」


全ては莉奈の運命を変えるためにやっていることだが、こんなことでまた口喧嘩になるかもしれない。もうごまかしきれないように思うが、絶対に莉奈には言えない。何か上手く伝える方法はないかと考えた。そして俺はあることに気づいた。


「莉奈、俺が前に重要な人物の話をしたの覚えてる?」

「覚えてるよ。絶対に他言無用と言われてるんだっけ?」

「そうなんだよ。それでね、俺はその重要な人物から重要な任務を受けてて、今それをしてるんだよ」

「その重要な任務のことも言えないの?」

「それは時が来れば莉奈に話そうと思うけど、今は絶対に言えないんだよ。ただ、危険なことをしてるんじゃないから心配しないでね」

「もしかして、今日の西浦さんのこともその重要な任務に関係してたの?」

「関係していなかったといえば嘘になるんだけど、でも西浦さんは無事だったから大丈夫。でもこれからこういうことがあるかもしれないから、莉奈にはわかっててほしいんだよ。俺が重要な任務をしてるからってことをね」

「わかった。その重要な任務のことはもう聞かないようにするね。でもいつか話してくれるのを待ってるよ」

「ありがとう。俺は莉奈だけだからね。それだけは信じてね」

「うん。わかった」


そういう話をしながら莉奈の家近くのコンビニエンスストアに到着した。莉奈は荷物を降ろして俺が帰るのを見送ってくれた。そして俺は自宅に戻った。


自宅に戻って夕食を終えてシャワーを浴びた後、自分の部屋に入ってスマホで世界線の数値を確認した。数値は5.73となっていた。前にスキーバスの事故を未然に防いだ時は5.54なので数値が変わったことになる。ところが今日は西浦真美がケガをすることもなく、莉奈とも口喧嘩になることもなかった。しかし、世界線の状態は変化したということになる。一体何がそうさせたのかわからない。もはや2033年から届いたメールに書かれていたこととは完全にズレている。俺が過去や未来の出来事を改変していったからなのだろうか。今はもはや変化した未来になっているんだ。おそらくもう少しで世界線は分岐するに違いない。しかし過去や未来を改変させるためにはタイムリープの必要がある。そのためには過去にタイムリープする必要があるが、そのためにはその時のことを思い出さないといけない。今日から俺は毎日何があったか日記を書くことにした。


■ 2019年2月1日(金)


朝8:00に目覚まし時計が鳴って起きた。風吹スキー場に行って以来、この週は特になにも起こることがなかった。世界線の数値も5.73のままで状態は変化していない。それより2033年から届いたメールに書いていることは起きなかった。変化した未来になってると考えればこれからは自分で未来を改変させていかないといけない。もう2月に入ってしまった。もう莉奈が死ぬまで時間がなさすぎる。


会社に10:00前に出勤してパソコンの電源を入れた。俺はやはり世界線を分岐するのは難しいのだろうかと考えていた。しばらく業務を続けていると西浦真美から『ちょっと休憩室まで来てもらえる?』とテレパシーが送られてきた。俺は西浦真美に『すぐに行くよ』とテレパシーを送った。


休憩室に入って椅子に座って待っていると西浦真美が休憩室に入ってきて椅子に座った。そして西浦真美が話しはじめた。


「その後、世界線の状態はどうなってるの?」

「西浦さん達とスキーに行った時に数値が変わって5.73になってるけど、それからずっとこの状態は変わってないよ」

「そう。もうあまり時間がないのね」

「本当に世界線は分岐するのか心配になってきたよ。でも何か分岐する出来事があるのかもしれない。今までやってきたことを無駄にはしたくないね」

「そうよね。たしか莉奈ちゃんが死ぬのは2月の下旬って言ってたわね。それまで出来るだけのことはしたほうがいいわよ」

「まだ諦めるつもりはないんだけど、その日が近づくにつれて俺は悲しくなってくるんだよ」

「まるで余命宣告されてる感じよね。水嶋君、本当に最後まで諦めないでね。わたしも協力するから頑張ってよ」

「ありがとう。西浦さんがそう言ってくれて心強いよ」

「それにしても2月に何が起こるかが問題よね。せめて未来にタイムリープできればいいんだけど、過去にしかできないのよね?」

「未来にタイムリープはできないね。未来をイメージすることはできないからね」

「たとえば近未来透視能力でいろんな人を見てみるのはどうかしら?」

「それもやってるんだけど、そこまで大きな出来事が起こらないんだよ」

「そのうち何かが起こるはずよ。ここまで未来や過去を改変させてきたんだから、きっともうすぐよ」

「そうだね。諦めずにやってみるよ」

「水嶋君、ここ最近、ずっと悲しそうな表情になってるから心配だったのよ」

「そっか。俺そんな表情してたのか。そんな表情してる場合じゃないよね」

「とにかく細かいことでも徹底的に未来を改変していくようにするのよ」

「わかった。じゃあ俺はそろそろ戻るね」

「うん。わたしもそろそろ戻るわね」


俺と西浦真美は休憩室を出た。俺は自分の席に戻っていろいろ考えた。莉奈の死ぬ日が近づくにつれて悲しい表情になっていってるのか。しかも周りの人からもそう見られているのはまずい。俺は最近になって近未来透視能力を使っていろんな人を見ているが、大した出来事が起こるわけでもなく、ただこの日も何も起こることなく勤務時間終了の19:00になった。俺はさっさと退社して自宅に帰った。


自宅に帰ると夕食を終えてシャワーを浴びた後、自分の部屋に入った。そしてメールをチェックすることにした。DMやニュースメールなどが届いている中に「2019年2月の俺へ」という件名のメールが届いていた。俺はすぐにそのメールを確認した。


2019年2月の俺へ

2033年の水嶋祐樹だ。


このメールが届いたということは2月になっても世界線は分岐されていないのだろう。

まだ諦めないでそっちの俺には頑張ってほしい。

必ず世界線が分岐する出来事が起こるはずだ。


2月に起こることを伝えておくが、

そっちの俺はかなり過去や未来を改変させているはずなので、

この出来事が起こるかわからない。

1月に起こる出来事を伝えていたが、出来事にズレがあったり

その出来事が起こらなかったかもしれない。


1.池上有希が階段から転落する

→会社の中で起こるので転落しないようにしてほしい


2.連休に笹原莉奈と女神の高原に行く

→女神の高原に行かないようにしてほしい


この他にも大きく過去を改変するべきことがあるかもしれない。

それはそっちの俺の判断に任せる。

何度も言うがこのメールのことに関しては他言無用。

もう2033年からメールを送ることはないかもしれない。

最後まで諦めずに頑張って世界線を分岐させてほしい。


俺はこのメールを読んでかなり未来が変化していることがわかった。2月の連休といえば2月9日だが、その日は俺と莉奈はバックカントリースキーに行く予定になっている。既に莉奈はスキー靴を買った。女神の高原には行かないだろう。それ以外であれば池上有希が階段から転落することだけだが、いつのことかわからないので、これからは数日間は池上有希を中心に近未来透視をしていこう。これが2033年から送られてくる最後のメールになるようなことも書いている。おそらく2033年の俺は莉奈との未来がある世界線に分岐させるためにメールを送ってきていたのだろう。莉奈の死は俺の人生を真っ暗にしてしまっていて、2033年になってもその出来事は俺の心に残り続けているということになる。絶対に最後まで諦めずに世界線を分岐させてやる。俺は最後の未来改変の行動をすることにした。

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