年末の未来改変
■ 2018年12月17日(月)
目覚まし時計がなって朝7:30に目が覚めた。あと一週間もすればクリスマスイブだ。今年は莉奈とクリスマスを過ごそうと思うがここは俺達らしく山で過ごしたい。2033年から届いたメールには俺達はホテルで過ごすと書いてあったが、今のところその予定はない。今週は寒波がきているので積雪の状態によっては連れていきたいところがある。週末はから連休になるが土曜日と月曜日の祝日は山に行くといいだろう。
外に出ると曇り空で雪でも降ってきそうなくらい寒い。ここまで寒いと耳が痛くなってくる。駅に到着していつもより早い電車に乗った。あれから特に変わったことはなかったが、スマホで世界線の数値を確認すると5.42のままだった。これは重要なポイントで未来を改変させることによって数値が変わるようだ。本当にこのまま未来を改変させていくとナンバー5から新しい数値に変わるのだろうか。それだけがずっと心配になっているが、まだ二ヶ月の期間がある。どこかのポイントで未来を改変させた時に変更するのだろうと思う。そんなことを考えていると会社の最寄り駅に到着した。
9:40頃に会社に出勤して先に自分の席に座ってパソコンの電源を入れた。朝礼まで時間があるので、さっさと業務をする準備をしておいた。そして9:58を過ぎた頃にフロアの前のほうに行って立ちながら社長が出てくるのを待っていた。しばらくすると社長と西浦真美がフロアの真ん中にやってきて、社長の長い話がはじまった。他の会社では年末は忙しいようだが、この会社では忙しいのは年末調整をする総務部くらいで俺がいるシステム開発部はそこまで忙しい感じでもない。長い社長の話が終わると西浦真美が「では今週もみなさんがんばりましょう」と言って朝礼が終わった。
俺は自分の席に座って業務を黙々としていた。まだ付き合ったばかりの児島信二が気になったので俺は”児島君はクリスマスイブの予定はどうなってるの?”とメッセージを送ってみた。しばらくして児島信二から”山内さんと市街地で過ごして夜は港で夜景と海が見えるレストランに行く予定ですよ”とメッセージが返ってきた。みんな考えることは一緒なんだと思うが、俺はそこをみんなとは違う過ごし方を考えている。
この日は何も起こらず勤務時間終了となった。俺はさっさと退社して自宅に帰った。いつものように夕食を終えてシャワーを浴びた後、自分の部屋に入ってパソコンの電源を入れた。そして山の積雪情報を確認していた。まだそこまで積もっていないようだが、山では雪が降って数センチほど積もったようだ。このまましばらく山で積雪してくれればクリスマスイブには最高の雪山登山ができる。そう思っていると莉奈から電話がかかってきた。
「もしもし祐樹君。あのね、今日いい物を手に入れたんだよ」
「いい物って?」
「来週の24日のクリスマスイブなんだけど、ホテルの宿泊券を手に入れたんだよ」
「もしかして莉奈がホテルの宿泊券を買ったの?」
「ううん。今日ね同僚の保育士さんにもらったんだよ。本当は彼氏とホテルで過ごす予定だったみたいだったんだけど、その彼氏とは別れちゃったみたいで、譲ってくれたんだよ」
「そうなんだ。でも俺はクリスマスイブの予定はもう決めてるんだよね」
「ええー!ペアの宿泊券だから祐樹君と一緒にクリスマスイブはホテルで過ごそうと思ったのに・・・」
「いや、クリスマスイブは莉奈が喜びそうなところに連れていくから、その宿泊券は他の人に譲ったほうがいいよ」
「せっかくのクリスマスイブだよ?ホテルの宿泊券なんてなかなか手に入らないから誰かに譲るなんてもったいないよー」
「クリスマスイブにホテルで過ごすなんて俺達らしくないと思うし、莉奈にはプレゼントも用意してるから、ホテルじゃないところに行こう」
「でも勿体ないなあ・・・でも祐樹君が乗り気じゃないんだったら仕方ないね」
「うん。申し訳ないけど、その宿泊券は他の誰かに譲ってあげて。俺達がホテルで過ごしてもそこまで楽しくないと思うんだよ。それに次の日は平日だしね」
「うーん・・・わかった。じゃあこの宿泊券は誰かに譲るよ」
「ごめんね。その代わり絶対に莉奈が喜びそうなところに連れていくから」
「わかったよ。でもクリスマスイブは楽しみにしてるね」
「あと週末の土曜日だけど、登山ショップに行こう。莉奈も雪山装備を揃えないといけないからね」
「うん。じゃあ土曜日の予定は空けておくね」
「雪山装備は結構高いけど大丈夫?」
「貯金があるから大丈夫だよ」
「じゃあ土曜日の13:00に駅前ロータリーに来てね」
「うん。わかった。じゃあまたね。おやすみ」
「おやすみ」
莉奈と電話を切って俺は2033年から届いたメールに書いていたことはそういうことだったんだと思った。クリスマスイブはホテルで過ごさないようにと書かれていたので、これでまた未来を改変することができる。そもそもクリスマスイブにホテルで過ごすなんて俺らしくない。なんとかそれは回避できそうだ。
それから週末までは何事もなく過ごすことができた。世界線の数値もずっと5.42のままだった。次のポイントはクリスマスイブなんだろうと思った。
■ 2018年12月22日(土)
今日は13:00に駅前ロータリーに莉奈と待ち合わせしている。山ではすでに30センチほどの積雪になっていた。しかもクリスマスイブの24日の天気予報は晴れだ。あとは雪が解けないことを祈るだけだ。昼食を終えて12:45になったので俺は家を出た。
車に乗って駅前ロータリーへ向かった。12:55くらいに駅前ロータリーに到着すると既に莉奈が待っていた。莉奈は俺の車に気づいて車のほうへ歩いてきた。そして莉奈は助手席に乗った。俺が行こうとしている登山ショップは以前の夏に行ったアウトレットの登山用品が売っている登山ショップだ。冬山装備は何かと高い。俺は車を走らせながら「莉奈、今日はいくらくらい持ってきたの?」と聞いた。すると莉奈は「一応、10万円持ってきたよ」と言った。俺は「そんなにいらないよ」と言うと莉奈は「だって雪山装備って高いって言ってたからそのくらいいるのかなって思ったんだよ」と言った。まあ、他にも必要なものがあるかもしれないからいいかと思った。車内で莉奈と話をしていると目的の登山ショップに到着した。
登山ショップに入ると莉奈は「まずは何が必要なの?」と言ったので俺は「アイゼンから見よう」と言った。莉奈は「軽アイゼンなら持ってるんだけど、それじゃダメなの?」と言った。俺は「本格的なアイゼンじゃないとダメだよ」と言ってアイゼンのアウトレット商品を見た。この際、デザインなんて気にしてられない。俺は店員さんに女性用の12爪アイゼンがないか聞いてみた。すると一つだけあると言って店員さんが持ってきた。あとは莉奈の登山靴に合うかどうかが問題だ。莉奈は冬用の登山靴はすでに購入していたのでそれと似たような登山靴を探して合わせてみた。サイズはバッチリ合っていたので、俺は莉奈に「このアイゼンにしよう」と言った。莉奈はデザインがあまり気に入らないようだったが、俺は「アイゼンなんてどれも同じような感じだから」と言って莉奈を説得した。続いて冬用のトレッキングポールを見ることにした。アウトレット商品なので値段はそこまで高くなかった。莉奈は赤色のトレッキングポールを持って「これがいい」と言った。俺は「じゃあそれでいいよ。次にピッケルだね」と言ってトレッキングポールのすぐ隣にピッケルがいくつかあった。ピッケルについては身長と合わせる必要があるのであまりデザインは決めれない。店員さんが莉奈の身長に合いそうなピッケルを三本ほど選んでくれた。莉奈はどれでもいいという感じだったので俺はシルバーのピッケルを持って「莉奈、これにするといいよ」と言った。あとは冬用の手袋を見にいった。アウトレット商品なので手袋もデザインを選べないが、莉奈は茶色の手袋を持って「これがいい」と言った。手袋のサイズは莉奈に合っていたのでそれでいい。続いて冬用の靴下を見ていたが莉奈に合うのは一つだけだった。靴下は特にデザインにこだわる必要がないのでグレーの靴下を持った。俺は買い物かごをもってきて、選んだ商品を入れた。購入予定のものは全て選んだが莉奈は「もうこれだけでいいの?まだお金に余裕はあるよ」と言った。俺は店内を見渡すとソフトシェルジャケットのアウトレット商品が目に入った。そして「莉奈、まだ余裕があるならソフトシェルも買っておこうか」と言った。ソフトシェルジャケットは持っていると雪山には便利なのだ。まさかアウトレット商品であるとは思わなかった。莉奈はソフトシェルジャケットをいろいろ見ていた。すると莉奈は黒色に赤のチャックのソフトジェルジャケットを取り出して試着した。俺は「そのソフトシェルジャケットがいいの?俺のと似てるんだけど」と言った。莉奈は「これが一番カッコいいんだよ。祐樹君のと似ててもいいよ」と言った。そしてそのソフトシェルジャケットを買い物かごに入れた。俺は「もうこれで揃ったね」と言った。莉奈は買い物かごを持って会計に行った。全部で4万円くらいで購入することができたようだ。
登山ショップを出て近くのファーストフード店に入ることにした。俺も莉奈も昼食は食べていたのでホットコーヒーだけを注文した。そして席に座って話をした。
「祐樹君、あのね、なんかわたしに隠してることない?」
「え?どうして?」
「前もそうだったけど、最近の祐樹君はときどきわたしの顔をみて悲しい表情するときあるよ」
「そうかな?俺、そんな表情してた?」
「してたよ。何か悩んでることとかあるんだったら言ってほしい。わたし、なんでも協力するから」
まだか莉奈がこの先に死ぬなんて絶対に言うわけにいかない。未来改変していることも今の莉奈に話すわけにもいかないのだ。俺はしばらく沈黙しながらどう言おうか考えていた。これ以上、隠してはおけないが、正直に言うこともできない。そこで俺は考えて少しだけ話すことにした。
「莉奈、あのね、これはあまり言えないことなんだけど、このままだとこの先に大変なことが起こるんだよ」
「大変なことってどんなこと?」
「何が起こるかは絶対に言えないんだけど、俺はそんなことが起きないようにしようと思っているんだよ」
「それってわたしにも関係あることだよね?」
「莉奈にも関係あることなんだけど、詳しいことは絶対に言えないんだよ。ごめん」
「絶対に言えないんだ・・・わかった。じゃあこれ以上、詳しいことは聞かないけど、祐樹君、無理をしないでね」
「わかってる。無理はしないけど、これから俺、莉奈に無茶なことを言うかもしれないけど、それは大変なことを起こさないためだからわかってね」
「うん。わかった」
なんとかうまく莉奈を誤魔化すことができたが、いつまで隠しておけるか心配になってきた。だからといって絶対に何が起こるのかは莉奈に話すことはできない。
その後、莉奈と何気ない話をした後、荷物が多いので莉奈を家の近くまで車で送った。
■ 2018年12月24日(月)
朝4:00に目が覚めた。今日はクリスマスイブで莉奈と二人で過ごす予定だが、市街地ではなく俺達らしく雪山に行くことにした。今回行くのは薊平という場所で、素晴らしい霧氷と高原地帯がある。天気予報では晴れで昨日の山記事では積雪量は四十センチほどある。雪が解けていなければクリスマスにはふさわしい景色を望むことができる。朝早くから冷蔵庫から高級な牛肉など昨日買っておいた食料を出した。そしてザックに簡易テントと食料を入れた。
雪山装備をチェックすると5:40になったのでザックと登山靴を車に積み込んで駅前ロータリーへ向かった。車の温度計をみると外は2度とかなり寒そうだ。駅前ロータリーには5:50過ぎに到着した。まだ莉奈はきていなかったので少し待っていた。しばらくすると茶色いザックに黒のソフトシェル、茶色のトレッキングパンツをはいた莉奈が駅の階段を下りてきた。莉奈は俺の車に気づいて歩いてきた。俺は「莉奈、おはよう。今日はクリスマスイブにふさわしい最高の景色が見れるかもしれないよ」と言った。すると莉奈は荷物を車の後ろに積みながら「それは楽しみだよ」と言った。莉奈が助手席に乗ると車を走らせた。まだ外は暗いが薊平に到着する頃には明るくなっているだろう。車内で莉奈はすぐに眠った。やはり朝早かったので寝不足だったんだろう。俺は好きな音楽を流しながら車を走らせた。高速道路に入って40分ほどで走らせると高速道路終点からバイパスに入った。ここから1時間半ほど国道を走らせる。そして集落があるところから県道に入って山へあがっていく。その県道の途中に温泉があるのだが、帰りにこの温泉に行く予定になっている。さらに県道で山をあがっていくと今度は右に曲がって細い林道をあがっていった。さすがにこの林道はガタガタ道で眠っていた莉奈も目を覚ました。林道は除雪されていないが轍があるのでそれに沿って林道を走った。車はもうスタッドレスタイヤをはいているので雪道になっても問題はないが、あまりにも積雪量があると四輪駆動でないと進めない。まだこの付近の積雪量は数センチ程度なので駐車場まで行けるだろう。そして10分ほど林道を走らせると広くなった駐車場に着いた。駐車場には既に数台の車がとまっていたが、そこまで登山者が多くなさそうだ。
車を降りて俺は莉奈に「これが俺からのクリスマスプレゼントだよ」と言って紙袋を渡した。莉奈は「なにこれ?」といって紙袋からハードシェルジャケットを出した。俺から莉奈のクリスマスプレゼントは黒いハードシェルジャケットなのだ。俺は「莉奈、これを着ると暖かいからね」と言った。莉奈は「ありがとう」と言いながらハードシェルジャケットを着た。莉奈は「山道具がクリスマスプレゼントだなんて祐樹君らしい」と笑いながら言った。俺は「そう言うけど、このハードシェルはかなり高いんだよ」と言った。そのハードシェルジャケットは黒でピンクの可愛らしいロゴが入っているのだが、実際に購入すると4万円くらいするのだ。それを俺は登山メーカーの知り合いにお願いして卸売価格で購入したのだ。俺と莉奈は登山準備が完了して車の鍵を閉めて登山を開始した。
まずは林道の終点まで歩いていかないといけない。途中で登山届を提出して坂道になっている林道をどんどん歩いていく。積雪量はまだ10センチメートルくらいなのでアイゼンの装着は必要なさそうだった。そして林道の終点に到着すると沢筋の登山道を歩いていく。まだ積雪量は少ないがこの先から積雪のある岩場や沢を渡ったりするので、ここでアイゼンを装着することにした。莉奈にはあらかじめアイゼンの装着方法を練習しておくように言っていたのだが、まだまだ不慣れな感じだった。なんとかアイゼンを装着して沢筋の登山道を歩いていった。沢を渡るポイントでロープが設置されているが、アイゼンを装着しての沢渡りで莉奈は少し苦労していた。そして積雪した岩場を登っていく。さらに沢を渡ってハシゴを登って沢筋の登山道をどんどん登っていった。そして沢筋の登山道が終わる地点には落差40メートルほどの薊滝が見える。薊滝はすっかり凍っていて氷瀑になっていた。莉奈は氷瀑を見るのが初めてだったらしく「あの氷のかたまりは何?」と聞いてきた。俺は「あれは薊滝なんだけど、もうすっかり凍って氷瀑になっているんだよ」と言った。すると莉奈は「滝が凍ってるってすごいね!氷瀑っていうんだ。あんなのはじめて見た」と驚いていた。すこし薊滝の展望ポイントで休憩をして、今度はいよいよ登りがはじまって標高があがっていく。
つづら折れの登山道をひたすら登っていくと積雪量が増えてきた。ときどき歩いていると雪の中にズボッと足がはまる。そしてさらに登っていくと辺り一面が霧氷になっていた。莉奈は「霧氷がすごいね。この木にギザギザについてるのは何?」と言ったので俺は「それはエビの尻尾といって、木に雪がついて風が吹いてそんな形になってるんだよ」と言った。莉奈は「へえーすごいね」と言って何もかもはじめてみる雪景色のようではしゃいでいた。さらに登山道を登っていくと上が明るくなってきた。そして美しい青空と霧氷の世界になった。莉奈は「すっごく綺麗だね!雪山ってこんな景色が見えるんだ」と感動しているようだ。そして霧氷のトンネルのようになっている登山道を歩きながら莉奈は感嘆の声をあげていた。高度計を確認すると標高1200メートルを少し超えていた。俺は「莉奈、もうすぐ薊平だよ」と言った。そこから20分ほど登山道を登っていくと小屋が見えた。霧氷の登山道を登っていき広い高原地帯に出た。
薊平は広い高原地帯になっているが、まるで白銀の世界と化していた。青と白のコントラストは言葉にできないくらい美しい。莉奈は「青空と雪景色ってこんなに綺麗なんだね。ここすごいよ!」と感動していた。この薊平は何度か訪れたことはあるが、いつも吹雪いているかガスっていて、こんな青空の雪景色を見るのは俺も初めてなのだ。北側の山も霧氷で南側の山も霧氷になっていて文句のない青空での白銀世界。莉奈はまるで子供になったかのようにはしゃいでいる。俺は「莉奈、ここは俺達らしいクリスマスイブの場所でしょ?」と言うと莉奈は「うんうん!そうだね」と言った。俺は樹林帯の中に入っていって比較的平らになっている場所を探した。そして、そこに簡易テントを建てた。二人用のテントだが、莉奈と二人なのでちょうどいい。テントの中にアルミシートを敷いて登山靴を脱いでテントに入った。莉奈もテントに入ってきて二人で座ると俺はべニア板をザックから取り出して、その上にバーナーを設置した。そしてチタンのフライパンを出して牛肉を軽く焼いた。そこにすき焼きのタレを入れて豆腐や野菜などの具材を入れた。テント内はすっかりすき焼きの匂いで充満した。そして持ってきていた卵を出して小さなチタンの食器に生卵を入れた。俺は「これはいい牛肉だから美味しいと思うよ。じゃあメリークリスマス」と言った。莉奈も「うん。メリークリスマス」と言ってすき焼きを食べはじめた。山で食べるものは何でも美味しいが、さすが高級な牛肉だけあってかなり美味しく感じる。莉奈も「すっごく美味しいね」と言いながら食べていた。青と白のコントラストに高級な牛肉のすき焼きを食べるのは、俺達にとってはかなりの贅沢のように思えた。すき焼きのシメにはうどんを入れて食べた。すき焼きのタレはすっかり肉汁がしみ込んでいてうどんもかなり美味しい。俺と莉奈はすっかり満腹になったところで、食後にホットコーヒーを飲んだ。そして食器類などを片付けて外に出た。
俺は持ってきていたヒップソリを出して「莉奈、ちょっとこれで遊ぼう」と言った。莉奈は「もしかして滑るの?」と言ったので俺は「そうだよ」と言った。テントとザックをそのままにしておいて、薊平から斜面を少し登ってヒップソリで滑った。かなりのスピードで滑っていく。莉奈は「きゃー」と言いながら滑っていった。莉奈は「超楽しいこれ!」といいながら三回ほど登ってヒップソリで遊んでいた。そしてテントを片付けて下山することにした。俺は「莉奈、そのヒップソリを持ちながら下ってね」と言った。莉奈は不思議そうに「うん」と言った。そして下山しはじめてつづら折れの道のところで俺は「莉奈、ヒップソリで滑るよ」といった。樹林帯の中をショートカットするように俺はヒップソリで滑っていった。それに続いて莉奈もヒップソリで滑ってきた。莉奈は「こういう下り方もあるんだ」と言った。俺は「これも雪山登山の楽しみの一つなんだよ」と言った。その後、何度かヒップソリで滑りながら下山をして、沢筋になったところでヒップソリを片付けた。そして沢筋をひたすら戻っていって林道まで戻ってきた。ここでアイゼンをはずそうか考えたが、積雪量が少ないとはいえ、坂道になっているので駐車場までアイゼンを装着しながら歩いていった。そして駐車場まで戻ってきてアイゼンをはずして荷物を車に積み込んだ。
車を走らせて途中にある温泉の駐車場に車をとめた。そして俺と莉奈は温泉に入った。雪山登山の後の温泉は冷えた体が癒される。それにしても今日はかなりの絶景を見せてくれた。せっかくのクリスマスイブなのでこの後に夜景でも見て帰ろうかと考えながら温泉に入っていた。浴場を出て休憩室のソファーに座って待っていると莉奈が出てきて「あー気持ちよかった」と言った。俺は「雪山登山の後の温泉は気持ちいいよね」と言った。温泉の休憩室で30分ほどまったりして、俺と莉奈は温泉を出て車に乗った。
帰りの車内で俺は「莉奈、夜景でも見て帰ろうか」と言うと莉奈は「うん!」と言った。俺は高速道路に入らずそのまま国道を北上した。そして国道の交差点を左折して山のほうへ車を走らせた。一応国道だが、かなり細い道をひたすら車で走り続けた。そして山道の路肩に車を駐車した。外はすっかり暗くなっていたので俺と莉奈はヘッドライトをザックから取り出した。そこから細い坂道を登っていくと広い場所に出た。そしてそこを右にまがって山道をひたすら歩いていくと丘が見えた。丘の上に登った先には一つだけベンチがあってものすごい光量の夜景が見えた。この夜景スポットは以前、藤堂晃が西浦真美とデートする時に教えた場所だが莉奈を連れてきたのははじめてだ。奥行のある凄まじい光量で迫力ある夜景。莉奈は「これはすごい」と言葉を失っているようだった。この場所はいつ来てもすごい夜景だと思う。市街地に伸びていく道路のラインが特徴的で、まるで宙に浮いて歩いていけそうな気がする。そして視界も広くてこんな夜景を望める場所は他にはないだろう。俺と莉奈はベンチに座ってしばらくの間夜景を眺めていた。莉奈は「こんなところがあったんだ。どうして今まで連れてきてくれなかったの?」と言った。俺は「いや、機会がなかっただけだよ」と言った。この夜景を見るためだけにここに来るのはなんだかもったいない気もしていたので、なかなか莉奈を連れていく機会がなかったのだ。しばらくすると寒くなってきたので俺は「莉奈、そろそろ戻ろうか」と言った。そして駐車場所に戻って車に乗った。すっかり遅くなったので莉奈を家の近くまで送っていくことにした。
莉奈の家近くにあるコンビニに着くと莉奈は車の後ろから荷物を降ろして「いいクリスマスイブだったよ」と言ってくれた。その言葉だけで俺は嬉しかった。俺も「いいクリスマスイブになってよかった」と言った。そして莉奈は帰っていった。俺もすぐに自宅に戻った。
夕食をさっさと終えて自分の部屋に入った。今日は莉奈と素晴らしい青と白のコントラストを見ることができて、最後には素晴らしい夜景を望むことができた。2033年からの送られてきたメールにはホテルで過ごさないようにしてほしいと書いてあったが、全く違うことをしたのだ。俺はすぐにスマホで世界線の数値を確認した。すると5.81と表示されていた。前回の5.42からかなり数値は変化したように思うが、それだけ世界線の状態が変化したということではないのだろう。つまり5.42という世界線の状態から5.81という世界線の状態になったというだけで数値の変化の大きさは関係ないのだ。おそらく、この数値が下がって5.60の状態になったり、数値が上がって5.90の状態になったりするのだろう。西浦真美が言ってたように目指すのは6ではないのだ。世界線が完全に分岐すると5というナンバーが全く別のナンバーに変更するのだろう。大きく分岐するのはいつかわからないが、俺はこれからも未来を改変させていくしかないのだ。
■ 2018年12月27日(木)
朝8:00に目覚まし時計が鳴って目が覚めた。今日は本年度最後の業務の日だ。次に気をつけなければならないのは年末の高熱だが、どう体調管理をしていいのかわからない。ただ、昨日からサウナに行って発汗してビタミンCをとっている。今のところ体調に異常はない。年末ということは明日あたりからかなり気をつかわないといけない。念のため風邪のひきはじめ用に薬を買っておいて飲むことにした。
家を出るとかなり寒いので急いで駅に向かった。天気は晴れなので雨や雪が降る心配はなさそうだ。駅に到着していつもの時間の電車に乗った。本当なら明日から休みなので山に行きたいところだが、体調が崩れるとまずいので正月登山まで我慢することにした。これまでは2033年から届いたメールに書いてる通り未来の改変をする行動していたが、体調管理だけは難しい。少しでも体調に異常がでた場合、すぐに病院に行ったほうがいいのかもしれない。そんなことを考えていると会社の最寄り駅に到着した。
会社には10:00前に出勤した。俺は自分の席に座ってパソコンの電源を入れた。今日は年末年始のためにサーバーのチェックを念入りにしておく必要がある。もしサーバーに障害が発生した場合、年末年始にも出勤しなければならない。業務を黙々続けていると西浦真美から『休憩室に来て』とテレパシーが送られてきたので俺は『すぐに行くよ』と西浦真美にテレパシーを送った。
休憩室に入って椅子に座って待っていると西浦真美が入ってきた。西浦真美は椅子に座って話しはじめた。
「水嶋君、その後、世界線の数値はどうなってるの?」
「今のところ5.81になっているけど、数値があがっても喜べないんだよね」
「そうよね。その数値は世界線の状態を示してるだけだと思うから、小数点の数値があがってもあまり喜べないわね」
「おそらくだけど大きな世界線のナンバー5の中にいろいろ絡み合った状態があって、それが変化してるだけだと思うんだよね」
「そうよね。それより、明日からしばらく休みになるけど念のために何かあった時に連絡を取り合ったほうがいいと思うの」
「そうだね。何かあったらすぐに西浦さんに連絡するようにするよ」
「それについてなんだけど、電話で話せる内容じゃないような気がするのよ。もし誰かに聞かれたらまずいでしょ?」
「たしかに、電話だと誰かに聞かれる可能性はあるよね。でもそれだったらどうするの?」
「とにかく何か起こった場合はどこかで会って話をしたほうがいいと思うのよ。あと電話で莉奈ちゃんに関する話はしないほうがいいと思うわ」
「電話で会う時間と待ち合わせ場所だけの話だけして、肝心なことは会ってから話すってことか・・・なるほど」
「このテレパシー能力が使えるといいんだけど、たしか500メートルくらいまでしか使えないのよね」
「でもどこで話をするかが問題だね。年末年始でどこの店も閉まっていると思うし、話せそうな場所ってないよね?」
「ここでいいんじゃないかしら?水嶋君は面倒かもしれないけど、この会社の休憩室なら誰にも聞かれないんじゃない」
「ここか・・・でもそれしかないかもね。ただ、俺は年末に家から出たくないんだよ。体調を崩すわけにはいかないんだよね」
「それって莉奈ちゃんのことと関係あるの?」
「それがどうやらあるようなんだよ。重要な人から年末に高熱を出さないように言われてるんだよ」
「そうなの。体調管理までしないといけないのね。できるだけ年末には連絡しないようにするわね」
「でも何か大変なことが起こったら年末でもここに来るようにするよ」
「何も起こらないことを祈るわ」
「じゃあ、そういうことで、俺はそろそろ戻るね」
「わかったわ。水嶋君、くれぐれも体調を崩さないでね」
「うん。ありがとう」
そして俺は休憩室を出て自分の席に戻った。とにかく年末に高熱を出さないように注意しないといけない。俺は頭の中でそのことばかり考えていた。この日は体調が崩れることもなく、勤務時間終了の19:00になった。俺は日根野部長に「良いお年を」と挨拶して、さっさと退社した。そして帰りにサウナに行くことにした。
自宅の最寄り駅を下りて駅から少し歩いたところにサウナのある風呂屋がある。ここだと自宅からも近くて湯冷めすることもないだろう。気になるのは年末にかけて寒波で気温が下がるという予報だ。とにかく年末は家でまったり過ごしているといいだろう。とにかくあまり家から出ないで体を温めておけば風邪をひくことはないだろう。サウナに入った後、近くのコンビニエンスストアでビタミンCたっぷりの飲み物を飲んでおいた。そしてさっさと帰宅して夕食を終えてさっさと寝ることにした。
■ 2018年12月28日(金)
朝10:00に目が覚めた。よく眠れて目覚めもよくてスッキリしていた。念のために熱を測ってみると36.5度だった。それでも心配だったので、俺は朝食を終えた後、風邪薬を飲んでおいた。とにかく今日から家でまったりすることにした。本当は莉奈に逢いたいところだが、それは正月登山の時まで我慢することにした。部屋でただインターネットで山記事をみたりブログ記事を整理したりしていたが、だんだん暇になってきた。だからといって油断すると風邪をひいてしまう可能性がある。あまりにも暇だったので登山道具の整理をはじめたり、部屋の掃除をしていた。結局、インターネットでゲームをして一日を過ごしていた。夜になって熱を測ってみると36.3度だった。この日は特に体調不良になることはなかった。
■ 2018年12月29日(土)
昨日は早く寝たせいで朝6:00に目が覚めた。熱を測ってみると36.6度だった。今朝も体調に異常はないようだ。問題は明日に家族で墓参りに行くことになっている。そこで風邪をひいてしまったらまずいのだが、行くのを断るわけにもいかない。朝食をしっかり食べて買っていたビタミンCのドリンクを飲んで、風邪薬も飲んでおいた。午前中はまったりとインタネットでゲームをしていた。午後になって昼食を食べ終えると眠くなってきた。ベッドに横たわって一時間ほど眠ってしまった。目を覚ますと少し寒気がしてきた。まさかと思って熱を測ってみると37.2度になっていた。これはまずいと思った。これまで体調管理をしていたのに微熱になってしまっている。仕事の疲れが完全にとれていないのか、俺は焦った。ただ、このくらいの微熱で病院に行くのはどうかと思った。年末なので病院に行くとしても救急しかない。サウナに入って発汗して熱を下げたいが、近くの風呂屋はやってない。俺はインターネットでどこか開いている銭湯がないか探してみた。ここから車で15分ほどのところにスーパー銭湯があって、そこは年末年始でもやっているようだ。俺は体を冷やさないように厚着をして、すぐに車でそのスーパー銭湯に行くことにした。
スーパー銭湯で飲料水を購入して高温の湯舟に入ったあと、サウナに入った。10分ほどサウナに入ると水風呂に入らず、露天風呂のエリアにある椅子に座って体を冷やした。そして少し肌寒くなると再びサウナに入った。そして10分ほどサウナに入って発汗させると、また露天風呂のエリアにある椅子に座って体を冷やす。ときどき水分補給をしながらサウナに出たり入ったりしてとにかく発汗するようにした。かなり体の中が温まってきて体が楽になってきた。そして体を洗ってすぐに浴場を出てバスタオルで体をふいて服を着た。体はかなり温まっていてスーパー銭湯を出ても汗が出てくるほどになっていた。俺はすぐに車に乗って帰宅した。
自分の部屋に入って熱を測ると36.8度になっていた。まだ微熱だといえるので油断はできない。ビタミンCのドリンクと風邪薬を飲んでおいて、部屋の中で暖房をつけながら電気ストーブをつけてベッドに横たわった。とにかく体を温めて発汗させることにした。発汗したらすぐに着替えるようにして、バスタオル数枚と着替えを三枚ほど用意していた。夕食の時間になったのでキッチンへ行って、いつもより多くご飯を食べておいた。そして食後にはビタミンCのドリンクと風邪薬を飲んですぐにベッドに横たわった。夜にもう一度熱を測ると36.5度になっていた。明日の朝にどうなっているかわからないが、とにかく早く寝ることにした。
■ 2018年12月30日(日)
昨日は早く寝たにもかかわらず9:00まで眠っていた。体がスッキリした気がした。すぐに熱を測ってみると36.4度になっていた。今日は墓参りに行く日だが、念のために俺は両親に体調が悪いという理由で行くことを断った。念のために朝食後にビタミンCのドリンクと風邪薬を飲んでおいた。体はもう大丈夫のように思えたが、油断すると高熱が出るかもしれないのでベッドに横たわりながらインターネットでアニメを見ていた。面白そうなアニメだと思って見てみると本当に面白くて、ずっとそのアニメを見続けていた。昼食の時間になったが、両親は墓参りでいなかったのでキッチンに行って冷蔵庫にある適当な食材で昼食を作って食べた。昼食後もビタミンCのドリンクと風邪薬を飲んだ。そして自分の部屋に戻ってベッドに横たわりながらアニメの続きを見ていた。そして14:00頃になって両親が墓参りから帰ってきた。俺は念には念を入れて今日もスーパー銭湯に行くことにした。
昨日と同じようにスーパー銭湯に入って飲料水を購入した。そして高温の湯舟に入って体を温めた後、サウナに入った。10分ほどサウナに入って、露天風呂のエリアにある椅子に座って体を冷やした。ときどき水分補給をしながらサウナに出たり入ったりしてかなり体の中が温まってきた。過敏になりすぎてるのかもしれないが、これで世界線の状態が変わるのであれば、こうするしかないのだ。そして体を洗ってすぐに浴場を出てバスタオルで体をふいて服を着た。昨日と同じようにスーパー銭湯から外に出ても汗が出てくるほどになっていた。今日も俺はすぐに車に乗って帰宅することにした。
帰宅して自分の部屋に戻って熱を測ると36.4度になっていた。夕食の時間になったのでキッチンへ行って、今日もいつもより多くご飯を食べておいた。そして食後にはビタミンCドリンクと風邪薬を飲んでおいた。その後、熱を測ってみると36.5度になっていた。どうやら高熱は防げたようだが、まだあと1日あるので油断はできない。ベッドに横たわりながらアニメを見ていて眠くなってきたので寝ることにした。明日の朝、平熱になっていれば、おそらく2033年から届いたメールに書いてあったことにはならなかったのだろうと思った。
■ 2018年12月31日(月)
朝8:00に目が覚めた。俺は起き上がってすぐに熱を測ってみると36.4度になっていた。どうやら年末に高熱を出すのは防げたようだ。今日一日でいきなり高熱になることは考えにくい。体調に異常もないし体はスッキリしている。キッチンへ行って朝食を食べ終えた後、念のためにビタミンCのドリンクと風邪薬を飲んでおいた。今日は大晦日だが、明日は正月登山に行く予定なのだ。そこまで大変なルートではないので明日の昼くらいから莉奈と二人で登ろうと思っていた。俺はベッドに横たわりながらインターネットでアニメを見ていた。ずっとアニメを見ていると昼食の時間になったのでキッチンへ行って昼食を食べた。おそらくこれで最後だろうと思われるビタミンCのドリンクと風邪薬を飲んでおいた。部屋に戻って熱を測ってみると36.3度になっていた。これでもう大丈夫だろうと思ったのでスマホで世界線の数値を確認してみた。すると5.77という数値になっていた。小数点の数値が下がったが、年末の高熱を防いだことによって世界線の状態が変化したのだ。しかし今回の2033年から届いたメールには来月のことは何も書いてなかったので、これからどう未来を改変するべきか考えなければならない。それともまたメールを送ると書いてあったので、明日になればメールが届くのだろうか。とにかく世界線のナンバー5という整数値が変わってないということは、またメールが送られてくるのだろう。そんなことを考えていると莉奈から電話がかかってきた。
「もしもし祐樹君。年末、全然連絡なかったけど忙しかったの?」
「ちょっと体調を崩してしまったんだよ。ごめんね」
「ううん。体調は大丈夫なの?」
「もう大丈夫だよ。それよりどうしたの?」
「明日ってお昼から山に行くんだよね?」
「そうだよ。昼過ぎから出発して、夜に下ろうかなって思ってるんだけどね」
「じゃあ今夜、わたしの家近くにある神社に初詣に行かない?」
「初詣か・・・そうだね。行こうか。何時に行けばいい?」
「23時頃にわたしの家近くの駅まできてくれる?」
「そっちの駅に行けばいいんだね。23時か・・・わかったよ」
「じゃあ今夜待ってるね」
「うん。じゃあ夜ね」
莉奈との電話を切って俺は少し寝ることにした。23時ということは夜遅くまで起きていないといけない。明日の登山のこともあるので寝不足にならないようにしないといけない。ところがいざ寝ようと思ってもなかなか眠れなかった。インターネットのアニメを見ながらベッドに横たわっているだけになってしまった。夕食の時間になったのでキッチンに行くと天ぷらそばとおにぎりがテーブルに置かれていた。これは年越しそばの代わりなんだろうか。俺は夕食を食べて、シャワーを浴びた後、部屋に戻った。そして暇だったのでアニメの続きを見ていた。そして22:00になったので着替えて家の外に出た。
夜に駅まで歩いていくと家族連れと思われる人がたくさんいた。みんな初詣に行くんだろうか。この近くだと山平神社に行くのだろうか。山平神社といえば、2006年8月25日の花火大会で俺が片桐杏奈に告白した場所なのだ。もうあの神社に行くことはないだろうと思う。駅に到着して電車に乗って莉奈の自宅近くの最寄り駅に到着した。改札口を出ると白いコートを着た莉奈が待っていた。そして莉奈が「祐樹君、こっちだよ」と言って手を繋いで神社まで案内してくれた。
莉奈の家近くにある神社は夜にもかかわらず屋台などが並んでいた。そして参拝にはかなりの人が並んでいた。俺と莉奈も並ぶことにした。まだ年は明けてないので参拝までに時間がある。列が動かないまま数十分待っていると年が明けたようで、騒がしくなった。そして並んでいる列が動き出した。俺は神社で参拝して何かお願いするなどあまり興味がないが、今回はお願いしたいことがある。俺と莉奈がお参りする番になって5円玉を賽銭箱に放り投げた。そして手を叩いて俺は「莉奈との未来がありますように」と強く願った。莉奈は一体何をお願いしているんだろうか。そして参拝が終わると莉奈が「おみくじを引こうよ」と言った。俺と莉奈はおみくじを引いてみた。俺は中吉で莉奈は小吉だった。おみくじなんて信じていないが、これも莉奈との一つの儀式だと思っていた。そして焚き火をしているところに行って暖まりながら莉奈と話していた。
「祐樹君は何をお願いしたの?」
「それは内緒だよ。そういうことは人に言うもんじゃないからね」
「それもそうだね。でもわたしは祐樹君のことをお願いしたんだよ」
「そうなんだ。俺の何をお願いしたの?」
「そういうことは人に言うもんじゃないんでしょ?」
「まあ、そうだね」
「祐樹君と一緒に暮らすまであともう少しだね」
「そうだね。莉奈と同棲生活か・・・」
「あっ言い忘れてた!祐樹君、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「莉奈、明けましておめでとう。こっちこそ今年もよろしくね」
俺はまた悲しい気持ちになってきた。世界線を分岐させて莉奈との同棲生活をすることができるのだろうか。莉奈との未来がどうなるのか今の段階ではわからない。世界線の状態を示すナンバーはまだ5のままなのだ。このナンバーはいつどのタイミングで変わるのだろうか。来年の初詣も莉奈と一緒に参拝できればどれだけ嬉しいことか。とにかく年は明けたのだ。いよいよ未来の改変の終盤になる。本当に世界線は分岐するのだろうか。不安だらけだが、俺はもうやるしかないのだ。未来を改変させて莉奈との未来がある世界線へと分岐させるのだ。俺は焚き火にあたりながらそんなことを考えていた。




