異世界生活日記Part2
■ 2018年11月7日(水)
朝8:00に目覚まし時計が鳴って起きた。この世界線にやってきて三日目の朝だ。今日こそは特殊能力悪用者を見つけて解決させたい。各自が部屋を出てキッチンでご飯と味噌汁、そしてローストチキンなど豪華なおかずを食べていた。それにしてもこの世界線の藤堂晃は金持ちなんだろうか。朝食や夕食はかなり豪華だ。そして今日も完璧な変装して藤堂晃の家を出た。俺達三人は藤堂晃について行って駅に到着すると電車に乗った。そして会社の最寄り駅に到着して10:00前に出勤した。いつものように俺達三人は清掃員室に入った。
水嶋祐樹「とにかく今日は木場健吾と加賀美樹をマークしよう。西浦さんは木場健吾さん、莉奈は加賀美樹さんの様子を伺ってほしい。まずは午前の見回りをしよう」
西浦真美「わかったわ。清掃の仕事をしながら様子を伺ってみるわ」
笹原莉奈「わたしも加賀美樹さんのこともっと観察するね」
俺達三人はそう話してまずは午前の見回りをした。今日は俺がアプリケーション事業部のフロアと営業部のフロアを見回った。莉奈と西浦真美は一番大きなフロアでそれぞれ見回って怪しいと思われる木場健吾と加賀美樹の様子を伺うことにした。アプリケーション事業部のフロアも静かで誰も何の会話もせず、黙々と業務をしている。この世界線でも宮ノ下和宏はいるようだが、かなり警戒しているような表情をしている。続いて営業部のフロアを見回ったが、西浦真美の言った通り、営業部らしくないお通夜のような雰囲気だ。これだと会社の経営はよくないことがわかる。この世界線でも営業部長は遠藤篤のようだが、すっかり腑抜けた感じで営業成績も悪いようだ。見回りが終わって各自が清掃員室に戻った。
笹原莉奈「加賀美樹さんってなんかいつも止まってるような感じで仕事してるような感じでもなかった」
西浦真美「木場健吾は無口で黙々と業務だけしてるようだったわ。まるで機械のようだわ」
水嶋祐樹「アプリケーション事業部と営業部のフロアを見回ったけど、もう社員達は静かで不気味な雰囲気だったよ」
西浦真美「昨日と一昨日は午後に錯乱状態になった人がいたわね。今日も午後に何か起こるんじゃないかしら」
水嶋祐樹「とにかく誰かが錯乱状態になったら、俺はすぐにその場に行くけど、莉奈と西浦さんは木場健吾と加賀美樹の様子を見にいっておかしな挙動をしてないか確認しよう」
笹原莉奈「どちらか二人が怪しいもんね」
西浦真美「そうね。とにかくその二人に焦点をあてて調査しましょう」
この日の午前中も結局何も起こらなかった。昼休みになって、この世界線でも同じであればチーズチキンランチがあるはずなので、会社近くの定食屋に行ってみた。やはりチーズチキンランチがあった。莉奈が「このお店は何がオススメなの?」と聞いてきたので俺は「チーズチキンランチだよ」と言った。俺達の世界線と同じように蒸したチキンにたっぷりとチーズがのっている。莉奈は「美味しい!」といいながらチーズチキンを食べていた。味も値段も全く俺達の世界線と同じで本当に安くて美味しい。各自がワンコインを支払って定食屋を出ると、急いで会社に戻った。
清掃員室に戻って俺達三人は昼休みに何かが起こらないか構えていたが、結局昼休みには何も起こらなかった。午後の業務がはじまったので、俺達は清掃をしているフリをしながら各フロアを見回ることにした。今回はもう少し社員の様子を一人一人観察するようにした。一時間ほど見回って社員達の様子をみていたが、誰も同じような感じで黙々と業務をしてるだけだった。もし特殊能力悪用者がこの社員の中にいるのであれば絶対にどこかでボロを出すはずなのだが、この会社の雰囲気にすっかり溶け込んでいるのだろうか。各自が見回りを終わって清掃員室に戻った。
西浦真美「本当にこの会社の社員の中に特殊能力悪用者がいるのかしらね」
笹原莉奈「外部の人かもしれないってこと?」
水嶋祐樹「外部の人間がこの会社に入り込んで特殊能力を使ってるとは思えないんだよね。もし外部者なら能力を使った後にどこかに隠れるかすぐ逃げるかすると思うんだよ」
西浦真美「そうよね。隠れる場所なんかないし、すぐに逃げていくなら怪しい足音が聞こえるはずよね」
水嶋祐樹「やっぱり木場健吾か加賀美樹の二人が怪しいんだよね。でも何かを俺は見落としてるような気もするんだけどね」
笹原莉奈「祐樹君、昨日から何か引っかかってるっていってたけど、不自然なことってあったかな?」
水嶋祐樹「うーん・・・とにかく次に誰かが錯乱状態になった時にその場に行ってよく確認してみるよ」
そう俺が話してた瞬間、カスタマーサポートのほうから女性の大きな声が聞こえてきた。何か怒鳴っているようだ。俺は「莉奈、すぐに加賀美樹さんの様子を見に行って!西浦さんは木場健吾さんのほうをお願い」と言って俺はカスタマーサポートのほうへ走っていった。この声はカスタマーサポート主任の栗原加奈子に違いない。カスタマーサポートのデスクフロアに行くと栗原加奈子が電話をしながら怒鳴っている。栗原加奈子は「お前なんか客でもなんでもねえよ!何偉そうに言ってんだバカ!」と怒鳴っている。カスタマーサポートの女性社員が「栗原主任、お客様にそんな言い方しないでください」と言っている。ところが栗原加奈子は電話で「はあ?誰が口が悪いだと。ふざけんな!あたしはお前のために働いてるんじゃねえよ」と電話の相手に怒鳴っている。すると山内美沙が「栗原主任が錯乱状態になってます!誰か何とかしてください」と必死に周囲を見渡している。俺も周囲を見て怪しい人がいないか確認しているが、カスタマーサポートの社員達が騒いでいるだけで怪しい人はいない。さらに栗原加奈子は「お前うぜー!もう二度と電話してくんじゃねえぞ!」と怒鳴りつけて電話を切った。カスタマーサポートの女性社員が「栗原主任、落ち着いてください!」と必死に言ってる。すると栗原加奈子は「あっ!あれ?あたし、今なにをしてた?」を言った。するとカスタマーサポートの女性社員が「栗原主任、お客様に怒鳴りつけていましたよ」と言うと、栗原加奈子は「あたしがお客様を怒鳴ってた?えっ?本当に?」と不思議そうな表情をしていた。そして山内美沙が「栗原主任、さっき錯乱状態になっていたと思います」と言った。そこに藤堂晃が走ってきて「どうしました?何かありましたか?」と言った。すると山内美沙が「栗原主任が錯乱状態になっていました」と言った。藤堂晃は「今日は栗原主任ですか。栗原さん、もう大丈夫ですか?」と言うと栗原加奈子は「はい。あたしがお客様に対して怒鳴っていたようで、記憶にありませんが、お騒がせしたようですみません」と言った。俺は栗原加奈子が錯乱状態になっている時にカスタマーサポートのあちこちを確認したが怪しい人物はいなかった。これはおかしいと思った。そして藤堂晃は「蒼井さーん」と大きな声で呼んだ。するとフロアの右側から「はい」と言いながら蒼井菜穂がやってきた。蒼井菜穂は「また錯乱状態になった人がいましたか?」と聞くと藤堂晃が「栗原主任がどうやら錯乱状態になったようなんだ。記憶がなかったみたいなんだけど、この記録もしっかり取っておいてください」と言った。蒼井菜穂は「はい。かしこまりました」と言った。そして藤堂晃と蒼井菜穂が去っていった。俺もとりあえず清掃員室に戻ることにした。
西浦真美「木場健吾は何事もなかったかのように黙々と業務をしていたわ」
笹原莉奈「加賀美樹さんは相変わらず体が止まってるような感じだったけど、ずっと席に座ってたよ」
水嶋祐樹「うーん・・・これは振り出しに戻ったのかな。でも怪しいのはその二人なんだけどね」
西浦真美「この世界線では人格入れ替わりを遠隔でできるのかしら?」
水嶋祐樹「それはないと思う。とりあえず藤堂さんに二人と話すように言ってみるよ」
俺は藤堂晃に『木場健吾さんと加賀美樹さんから話を聞いてみてほしい』とテレパシーを送った。すると藤堂晃から『わかりました。休憩室に呼び出して話を聞いてみますので、みなさんはこっそり話を聞いていてください』とテレパシーが送られてきた。しばらくして藤堂晃から『二人を休憩室に呼び出しましたので、みなさんは外で話を聞いていてください』とテレパシーが送られてきた。俺は「莉奈、西浦さん、休憩室前でこっそり話を聞きにいこう」と言った。休憩室の前でしゃがみこんで話を聞くことにした。
藤堂晃「お二人は錯乱状態になった社員がいたとき、どうして何もされないのですか?」
木場健吾「私は派遣でこの会社に来ているんですよ。錯乱状態になった社員のことなんて知りませんよ」
加賀美樹「わたしはここの社員と関わりたくないのです。藤堂さんは派遣社員に社員の体調まで心配しろと言うのですか?」
藤堂晃「そういうわけではありませんが、周りが騒いでいるのに無視しながら業務をしているのは不自然な気がします」
木場健吾「私には関係のないことですし、私は言われた通りの業務をしているだけです」
加賀美樹「わたしは正直、ここの社員さんが錯乱状態になっている時は怯えて体が動かなくなってしまいます」
藤堂晃「お二人のお話はわかりました。業務中に呼び出して申し訳ありません」
木場健吾「では、私は失礼して業務に戻ります」
加賀美樹「わたしも戻りますね」
俺達三人はすぐに休憩室を離れて清掃員室へ戻った。そして藤堂晃から『あの二人の話を聞かれましたか?』とテレパシーが送られてきた。俺は藤堂晃に『聞いたけどあの二人が言ってることはおかしくないと思う』とテレパシーを送った。しかしさっきのカスタマーサポートのデスクフロアに行った時もだが、何かが引っかかっていた。どこかに不自然なところがあるように感じる。何が不自然なんだろうかわからない。
西浦真美「やはり振り出しに戻ったの?」
水嶋祐樹「木場健吾さんと加賀美樹さんはちょっと冷たい態度なんだけど、おかしなことは言ってないと思うんだよ」
笹原莉奈「自分には関係ないって冷たい人だよね。それに加賀美樹さんは怯えていて体が動かなくなっていたんだね」
水嶋祐樹「うーん・・・でもなんか不自然な感じがするんだよね。特に昨日、総務部で多田さんが錯乱状態になってる時から何かが引っかかってるんだよ。ただ、何が不自然なのかわからないんだよね」
西浦真美「そういえば、錯乱状態になった人の記録を取ってるんじゃなかった?それを見てみると何かわかるんじゃないかしら?」
水嶋祐樹「そうだね。藤堂さんにそれを見せてもらおうか」
俺は藤堂晃に『錯乱状態になった人の記録を取ってるんだよね?それを見せてもらうことは可能かな?』とテレパシーを送った。すると藤堂晃から『わかりました。蒼井さんからファイルをコピーしてもらいますのでお待ちください』とテレパシーが送られてきた。しばらくすると藤堂晃から『蒼井さんからファイルをコピーしてもらいました。共有フォルダの中に社員体調管理表というファイルを入れましたのでそれを確認してください』とテレパシーが送られてきた。俺達三人はノートパソコンの画面を見ながら西浦真美が社員体調管理表というファイルを開いた。そこには”2018年11月5日にシステム開発部の児島信二が錯乱状態になり日根野部長を怒鳴っていた”や”2018年11月6日に総務部の多田美枝子が錯乱状態になり仕事がバカバカしいと叫んでいた”などと書かれていた。さらに過去の情報を見ると”2018年10月30日にアプリケーション事業部の宮ノ下和宏が錯乱状態になり木本部長をバカ部長と怒鳴っていた”や”2018年10月25日にカスタマーサポートの山内美沙が錯乱状態になり栗原主任を怒鳴っていた”などと書かれていた。この記録だと最初に社員が錯乱状態になったのは2018年10月11日のようだ。それより過去の記録はなかった。
西浦真美「一つ共通点を見つけたわ。社員が錯乱状態になるのは一日に一人だけってことね。一日に二人以上の社員が錯乱状態になった記録はないわね」
水嶋祐樹「たしかにそうだね。でも人格入れ替わり能力って一日に何人もできるよね。どうして一日に一人なんだろう」
笹原莉奈「何人も人格入れ替わり能力を使っちゃうとバレるからじゃないかな?」
水嶋祐樹「たしかにそれはそうなんだけど、人格入れ替わりをしたら元の体が絶対その近くにあるはずなんだよね。それがこの三日間で錯乱状態になった社員の周りをみてもそんな体はなかった」
西浦真美「そこが変なのよね。本当に人格入れ替わり能力なのかしら?他の能力を使ってる可能性はないかしらね」
水嶋祐樹「いや、他の能力ではない気がする。錯乱状態から元に戻った時の社員の挙動を見ると、あれは人格入れ替わり能力を使われてるはずだよ」
笹原莉奈「こっそりデスクの下とかに隠れて人格入れ替わり能力を使ってるとかかも」
水嶋祐樹「それだと逃げれないと思うんだよね。うーん、でも俺の中で何か引っかかってることがあるんだけど・・・何か不自然な感じがしてるんだけど、それが何かわからないんだよね」
西浦真美「水嶋君、ずっとそれ言ってるわね。その不自然なことがわかれば特殊能力悪用者が誰なのかわかる感じ?」
水嶋祐樹「かもしれない・・・ちょっと見回ってくるね。莉奈と西浦さんはここにいていいよ」
俺はそう言って清掃員室を出た。そして一番大きなフロアを清掃しているフリをしながら社員達を観察していった。誰もが黙々と業務をしているだけだ。声がするのは電話対応しているカスタマーサポートくらいだろうか。それにしても表情がみんな暗い。藤堂晃の席のほうへ行ってみると蒼井菜穂と何か話しているようだ。蒼井菜穂は笑顔で藤堂晃と話している。何か楽しい話でもしているんだろうか。他にもシステム開発部のデスクフロアや営業部、アプリケーション事業部のフロアも見渡したが、誰もが同じように暗い表情をしながら黙々と業務をしている。みんな同じような表情をしているので誰が怪しいのかわからない。これだと全員が怪しいように感じてくる。俺は全フロアを見渡して清掃員室に戻った。結局、この後は何も起こらず勤務時間終了の19:00になった。そして藤堂晃が清掃員室にやってきて「みなさん、今日はどうでしたか?」と聞いてきた。俺は何かが引っかかっているんだが何かがわからないと藤堂晃に話した。そして俺達三人と藤堂晃は家に帰ることにした。帰りの電車の中で俺はもう一度頭の中を整理してみた。社員の中に特殊能力悪用者がいるとすれば、その社員だけはおかしな挙動をしているはずだが、誰もが表情が暗くて同じような感じだ。しかしその中の誰かが暗い表情をしながら、心の中では笑っているんだろうか。あれこれ考えていると俺はあることに気づいた。考えてみればたった一人だけ暗い表情をしていない社員がいた。総務部の多田さんが錯乱状態になっている時や今日の栗原加奈子が錯乱状態になっている時もその社員の行動は不自然だった。そう考えると全てのつじつまが合う。しかし、わからないのはどうして人格入れ替わり能力を使っているのにその社員の体が見えないのか。その謎さえ解ければ全てがわかる。そう思った俺は今夜、四人で話し合うことにしようと思った。
藤堂晃の家に到着すると夕食をとって各自がシャワーを浴びた後、俺達三人と藤堂晃で話し合いをした。俺は自分が電車の中で推測したことについて説明した。
藤堂晃「まさか・・・水嶋さん、それは確かなことなんでしょうか?」
水嶋祐樹「あの暗い表情をした社員の中でたった一人だけそうじゃない人がいる。それにその人の行動は不自然なんだよ」
藤堂晃「もしそうだったとすれば、僕は大きなミスをしていました。でも信じられません」
笹原莉奈「あの人が特殊能力悪用者だなんて信じられないよね」
西浦真美「でも人格入れ替わり能力を使ってるとすれば、元の体がないのはどうしてかしら?」
藤堂晃「もしかすると透過能力を使いながら人格入れ替わり能力を使っているのかもしれません」
水嶋祐樹「透過能力?それって透明人間になれるってこと?」
藤堂晃「そうです。透過能力は笹原さんだけが持っていた特殊能力です。ただし、エネルギー消費が激しいので一日で使えるのは一回が限度でしょう」
水嶋祐樹「なるほど。だから錯乱状態になる社員は一日に一人だけだったんだ。これで謎が解けたよ」
笹原莉奈「この世界線でのわたしは透明人間になれる能力を持ってたんだ。なんかすごいね」
藤堂晃「でも僕はまだ信じられません。あの人がそんなことをするなんて・・・会社に恨みでもあるんでしょうか?」
水嶋祐樹「その動機がわからないんだけど、西浦さん、明日会社に行ったらすぐにその人を調査してほしい」
西浦真美「わかったわ」
水嶋祐樹「そして明日、特殊能力悪用者にエネルギー消費をさせて透過能力を使えないようにしてしまってから能力を奪い返そう。その前に社員の誰かが錯乱状態になったとき、莉奈にその人の席を見に行ってほしい。絶対に席には居ないと思うし、姿が見えないと思う」
笹原莉奈「わかった。確認してみる」
水嶋祐樹「藤堂さん、うまくいけば明日の勤務時間終了後に特殊能力を奪い返せると思う。明日の帰りに特殊能力悪用者の後をつけていって捕まえよう」
笹原莉奈「捕まえてからわたしがその人に人格入れ替わりをすればいいのね?」
水嶋祐樹「うん。そして莉奈が特殊能力を奪い返す。それでいこう」
藤堂晃「でもまだ信じられません。僕はそうであってほしくないです」
水嶋祐樹「藤堂さん、それを明日確認するけど、もしそうであれば現実を受け入れてほしい」
藤堂晃「わかりました。ではそろそろ寝ましょうか」
西浦真美「そうね。そろそろ眠くなってきたわ」
笹原莉奈「じゃあ部屋に行くね。おやすみなさい」
水嶋祐樹「おやすみ」
そういって各自が部屋に入って眠った。俺の推測が正しければ明日、全てが解決する。そして俺達の世界線に無事に戻ることができる。いや、その前にもう一つやることがある。そう考えながら俺は眠った。
■ 2018年11月8日(木)
朝8:00に目覚まし時計が鳴って起きた。俺の推測が正しければ今日こそ特殊能力悪用者を見つけて解決させることができる。各自が部屋を出てキッチンで高級なパンを食べながらコーヒーを飲んでいた。藤堂晃は朝から暗い表情をしている。やはり俺の推測を聞いてショックが大きいのかもしれない。しかし現実を受け入れないといけない。そうしないとこの世界線での問題は解決しないのだ。朝食を終えると今日も完璧な変装して藤堂晃の家を出た。俺達三人と藤堂晃は駅に到着すると電車に乗った。そして会社の最寄り駅に到着して10:00前に出勤した。いつものように俺達三人は清掃員室に入った。
西浦真美は依頼した通りノートパソコンを起動させて特殊能力悪用者と思われる人物の情報を調べていた。俺と莉奈は清掃員のフリをしながら、各フロアを見回ることにした。この世界線のこの会社にきてわかったことは、社員が錯乱状態になるのは午後ということだ。莉奈から『あの人の影ってちょっと薄い感じがする』とテレパシーが送られてきた。俺もその人物を見に行ってみるとたしかに影が薄い。俺は藤堂晃に『この人の影が薄いんだけど、どういうことなんだろう?』とテレパシーを送ると藤堂晃から『おそらく特殊能力に適合していないのかもしれません。このまま能力を使い続けると存在が消えてしまうかもしれません』とテレパシーが送られてきた。莉奈の特殊能力を奪ったが、それが体に適合していないということなんだろうか。とにかく俺と莉奈は清掃員室に戻った。
西浦真美「あることがわかったわ。わたしも思い出した。この人の父親はもともとわたしが入社する前に社長秘書をやっていたの。わたし達の世界線ではその父親は独立するために退職したんだけど、この世界線では過労により退職したみたいね」
水嶋祐樹「つまり、その父親が過労により退職したことで、特殊能力悪用者はこの会社に恨みがあるというわけだね?」
西浦真美「その可能性が高いわね。でも、その父親は今何をしてるのかわからないのよ」
笹原莉奈「過労って仕事をしすぎたってことでしょ?でも今はもう回復して他の仕事をしてるんじゃないかな?」
西浦真美「もしかするとこの世界線にいるわたしのように、その人の父親は精神疾患を患ってるかもしれないわ」
水嶋祐樹「どちらにしても動機はそこにありそうだね。とにかく、今日、誰かが錯乱状態になるのを待とう。その時に全てが明らかになると思う」
西浦真美「そうね。まったり待っていましょうか」
俺達三人は社員の誰かが錯乱状態になるのを待っていた。しかし午前中には何も起こらなかった。昼休みになったが、何かが起こる可能性があるので、今回は莉奈にコンビニエンスストアで弁当を買ってきてもらった。そして清掃員室で食べることにした。昼休みに何かが起こることも今までなかったので、やはり午後になると予想していた。そして昼休みが終わって午後の業務になった。一応、清掃員の仕事をしないといけないので、見回りも兼ねて俺達三人は各フロアを見回りながら清掃の仕事をしていた。一人の人物を除いて全員の表情は暗い。今日は一体誰が錯乱状態になるんだろうか。清掃作業が終わって各自清掃員室に戻ってまったりしていた。
そして14:30を過ぎた頃に営業部のほうから怒鳴っている声が聞こえてきた。俺は「莉奈は例の人物の様子を見に行って!」と言って莉奈は「わかった」と言って走っていった。俺と西浦真美は営業部のフロアに走って行った。営業部長の遠藤篤が大きな声で「こんな会社の営業なんてやってられねーよ!もううんざりだ。みんなもそう思うだろ!違うのか?」と怒鳴っている。そして遠藤篤は持っていたペンを壁に投げつけた。営業部の男性社員が「遠藤さんしっかりしてください!」と言っている。もう一人の営業部の男性社員が「遠藤さんが錯乱状態になってるみたいです。どうしましょうか?」と騒いでいる。遠藤篤は「誰が錯乱状態だボケ!お前もこんな仕事はもううんざりだと思ってるんだろうが!!」と営業部の社員達に怒鳴りつけている。営業部の男性社員達は「遠藤さん、落ち着いてください」、「遠藤さん気をしっかり持ってください」などと言っている。遠藤篤は「バカじゃねえのかお前ら!いい加減バカバカしい仕事をしてるって気づけよ!」と怒鳴っている。営業部の男性社員達は騒ぎながら「遠藤さん、しっかりしてください!」と声をかけている。すると遠藤篤が落ち着いて「あ、あれ?私は今、何を・・・」といって正気を取り戻したようだ。営業部の男性社員達が「遠藤さん、大丈夫ですか?落ち着きましたか?」と言った。すると遠藤篤が「私は何かしてたのでしょうか?」と言った。そして営業部の男性社員の一人が「遠藤さん、錯乱状態になっていましたよ」と言った。それを聞いた遠藤篤は「そうだったのか。それは申し訳ないことをした」と言った。そして藤堂晃が営業部のフロアへ走ってきて「どうしました?何かありましたか?」と聞くと営業部の男性社員の一人が「遠藤さんが錯乱状態になっていました」と言った。藤堂晃は「蒼井さんを呼びに行ってきます」と言うと、営業部のフロアの外から「あ、はいはい。藤堂さんどうしました?」と言いながら蒼井菜穂がやってきた。蒼井菜穂は「営業部で錯乱状態になった人がいましたか?」と聞くと藤堂晃が「遠藤部長がどうやら錯乱状態になったようなので、この記録もしっかり取っておいてください」と言った。蒼井菜穂は「はい。かしこまりました」と言った。藤堂晃は「遠藤さん、もう落ち着きましたか?」と聞くと遠藤篤は「もう大丈夫です。お騒がせして申し訳ありませんでした」と言った。藤堂晃はホッとしながら蒼井菜穂と一緒に営業部のフロアを去っていった。俺と西浦真美も清掃員室に戻ることにした。
笹原莉奈「祐樹君の言った通りだった。あの人の姿を見に行ったけどどこにもいなかったよ」
水嶋祐樹「これで確実だよ。ハッキリわかった。今回は莉奈のお手柄かもしれない」
笹原莉奈「わたしのお手柄ってどういうこと?」
水嶋祐樹「莉奈があの人をよく観察してたってことかな」
笹原莉奈「なんかよくわかんないけど、それならよかった」
西浦真美「それで水嶋君はどうするつもりなの?」
水嶋祐樹「今日の帰りに特殊能力悪用者の後をつけよう。もちろん藤堂君も一緒にね」
西浦真美「捕まえて莉奈ちゃんに人格入れ替わり能力を使ってもらうわけね」
水嶋祐樹「そういうことになるんだけど、相手も警戒してるかもしれないから注意して後をつけないといけないね」
笹原莉奈「わたし、うまく人格入れ替わり能力を使えるかな?」
水嶋祐樹「大丈夫。莉奈、よろしく頼むよ」
そして俺は藤堂晃に『特殊能力悪用者の正体は確実にわかったから、今日の帰りに後をつけるよ。そして特殊能力を奪い返すよ』とテレパシーを送った。すると藤堂晃から『やはり水嶋さんの推測が正しかったのですね。僕は気づくことができませんでした。本当に情けないです。それに残念です。では今日の帰りに後をつけましょう』とテレパシーが送られてきた。そしてそのまま俺達三人は清掃員室で勤務時間終了までまったりしていた。
勤務時間終了の19:00になった。藤堂晃が走って清掃員室へやってきて「さあ、みなさん行きましょう」と言った。俺達三人と藤堂晃は会社のビルの外で特殊能力悪用者が出てくるのを待っていた。するとエレベーターから特殊能力悪用者と思われる人物が出てきた。会社のビルを出るとその人物は駅のほうへ向かって歩いていった。俺達三人と藤堂晃はその人物の後をつけていった。しばらくするとその人物は後ろを振り向いて大通りを走って右に曲がっていった。俺は「気づかれたか!」と言うと藤堂晃は「水嶋さん、トランセンド状態になって追いかけてください!」と言った。俺はすぐにトランセンドレッド状態になって逃げて行った人物を追いかけていった。すごいスピードで走ることができる。その人物は会社のビルの裏通りを真っすぐ進んでいった。俺はその人物に追いついて腕を掴んだ。そして会社のビルの裏側の公園へ引っ張っていった。後ろからトランセンドブルーの状態になった藤堂晃が走ってきて、その後ろから莉奈と西浦真美が走ってきた。この公園には縁があるんだろうか。俺達の世界線でも小松結衣や山内美沙、児島信二を助けた公園だ。三人とも公園に入ってきて変装に使っていたマスクやつけ黒子をはずした。俺と藤堂晃はトランセンド状態を解除した。
藤堂晃「まさか特殊能力悪用者が君だったとは思わなかったよ。蒼井菜穂さん」
蒼井菜穂「特殊能力って何のこと?」
水嶋祐樹「蒼井さん、もう全てわかっているんだよ。あなたが透過能力を使って人格入れ替わり能力をつかって社員達を錯乱状態にしていたってことをね」
蒼井菜穂「あなたはまさか水嶋祐樹!?それにあなたは笹原莉奈・・・どうして?生き返ったの?それともタイムリープを使って未来にきたの?」
西浦真美「違うわ。わたし達は別の世界線にいる人間よ」
蒼井菜穂「あっ西浦真美!どうしてあなたまで・・・別の世界線ってどういうこと?」
笹原莉奈「さあ、わたしの能力を返してもらうね」
蒼井菜穂「嫌ーーーーー」
蒼井菜穂はそう言って両手で目を隠した。
藤堂晃「蒼井さん、あなたの体にその特殊能力は適合していないんだ。だから影が薄くなっている。このまま特殊能力を使い続けると蒼井さんの存在が消えてしまう可能性があるんだ」
蒼井菜穂「嫌嫌嫌ーーー!この能力はわたしが神様からもらったのよ。だから絶対に返さない」
西浦真美「蒼井さん、あなたのお父さんは今何をしてるの?わたし達の世界線では独立するために退職したんだけど、この世界線では過労で退職したみたいね」
蒼井菜穂「わたしのお父さんは今も入院してるわ。過労で血をはいて倒れたの。それ以来、精神的におかしくなったのよ!全ては会社の責任なのよ。それなのに会社は何もしなかった」
水嶋祐樹「それでその特殊能力はどこで手に入れたの?この世界線での莉奈は死んだはずらしいんだけど・・・」
蒼井菜穂「わたしのお父さんが入院している病院に笹原莉奈が息を引き取ったのよ。その時、わたしが笹原莉奈の病室の前にいたの。そしたらピンク色の光がわたしの中に入ってきた。そして不思議な能力が使えることがわかったのよ」
藤堂晃「なるほど。近くに適合できそうな人物に特殊能力が渡ってしまったというわけか・・・でも蒼井さん、やはり君の体には特殊能力は適合していない。だからこの莉奈さんに特殊能力を返してあげてほしい」
蒼井菜穂「そんなこと絶対に嫌!それにわたしを警察につきだすんでしょ?わたしは特殊能力を使って悪いことをしたわけだし・・・」
西浦真美「特殊能力を悪用しましたって警察につきだせるわけないでしょ?それにそこまで悪いことをしたわけでもないと思うわ」
蒼井菜穂「そんなこと信じられない!だって、わたしは暴力事件を起こさせて、西浦真美を精神疾患にさせた。わたしは犯罪者なの」
藤堂晃「西浦真美さんに強いショックを与えたのは君だったのか・・・でもどうしてそんなことをしたの?」
蒼井菜穂「わたしのお父さんの次に社長秘書になった西浦真美は平然とあんな会社の仕事をしてた。だから許せなかった。わたしはタイムリープをして西浦真美に入れ替わったの。そして水嶋祐樹が滑落する夢を見させてあげたのよ。そして何もできなかった西浦真美はかなりのショックを受けた」
藤堂晃「そういうことだったのか」
水嶋祐樹「それで、藤堂さんはこの蒼井菜穂をどうするつもり?やっぱり許せない?」
藤堂晃「いや、もうそれはいいです。それよりこれ以上会社の経営を悪化させないと約束して、笹原さんに能力を返してあげてくれれば、僕はもう何も言いませんよ」
笹原莉奈「蒼井さん、あなたはわたしとよく似てると思う。本当はそんな悪い人じゃないと思う。だから、その特殊能力をわたしに渡して!」
蒼井菜穂「なにもかも信用できないわ。わたしがやったことは犯罪なんだから、このまま藤堂さんが本当に許してくれると思えない。それに明日からどんな顔をしてわたしは会社に出勤すればいいの?」
水嶋祐樹「蒼井さんがやってたことって透過能力を使って人格入れ替わりで社員達を錯乱状態のようにしただけなんだよ。子供っぽいことをやってると思ってたし、大したことをしたわけじゃないんだよ」
蒼井菜穂「でもどうしてわたしだとわかったの?」
水嶋祐樹「社員が錯乱状態になってる時、藤堂さんが蒼井さんを呼ぶとすぐにどこからともなく蒼井さんは現れた。これが不自然だと思ったんだよ。タイミングが良すぎると思った。それと総務部の多田さんが錯乱状態になってる時、総務部の近くの席にいるはずの蒼井さんの姿がなかった。その時から不自然だと思ったんだよ。あと、あの蒼井さんが記録していた社員体調管理表をみると錯乱状態の内容が少し詳しく記載されていたのもおかしいと思ったんだよ」
蒼井菜穂「そういうことだったのね。でももうわたしは取返しのつかないことをしてしまった。藤堂さんはわたしをどうするつもりですか?」
藤堂晃「どうもしないよ。蒼井さん、その特殊能力をこの笹原さんに返してほしい。それでもう会社の経営を悪化させるようなことをしないと約束してくれるのなら、僕は明日からも蒼井さんと一緒に普段通りの仕事するよ。蒼井さんは本当によく頑張ってくれてるからね」
蒼井菜穂「藤堂さん、それは本当ですか?こんな暴力事件を起こしたり西浦真美にショックを与えたり、社員さんを錯乱状態にしたわたしのことを許してくれるのですか?」
西浦真美「蒼井さん、あなたが特殊能力を使い続けると、あなたの存在が消えてしまう可能性があるの。それに無関係の社員をあなたのお父さんのようにしたいの?このままだと精神的におかしくなる社員がでてくるかもしれないわよ」
蒼井菜穂「それは・・・」
藤堂晃「蒼井さん、僕はもう怒っていないし許すので笹原さんに特殊能力を返してあげてほしい」
蒼井菜穂「わかりました・・・」
そう言って蒼井菜穂は両手を目から話して目を開けた。俺は「莉奈、人格入れ替わりをして」と言った。そして莉奈は「わかった」といって蒼井菜穂の目を見て人格入れ替わりをした。体が入れ替わった笹原莉奈は「なんだかすごい力がわたしの中に入ってくる」と言った。そして莉奈は全ての力を吸収して元の体に戻った。
笹原莉奈「すごい!私の中で力がみなぎってるよ」
藤堂晃「蒼井さんの影が元にもどりましたね。みなさん、本当にありがとうございました」
蒼井菜穂「藤堂さん、いろいろと申し訳ありませんでした。わたしはずっと罪を償っていくようにします」
藤堂晃「蒼井さん、明日からは僕と一緒に仕事をしていこう。そして会社経営を取り戻していってほしい。蒼井さんは仕事のできる人だと思うから」
蒼井菜穂「はい。わかりました。でも西浦真美さんのことは本当にどうすればいいか・・・あんなショックを与えてしまって取返しのつかないことをしてしまいました」
水嶋祐樹「蒼井さん、そのことなら心配いらないよ。俺達がなんとかするから」
藤堂晃「水嶋さん、まだ何かするつもりですか?」
水嶋祐樹「ああ、まだもう一つやることがあるからね」
藤堂晃「まさか・・・西浦さんを?」
水嶋祐樹「俺に考えがあるんだよ。とにかくこっちはこれで解決したね」
そして俺達三人と藤堂晃、蒼井菜穂は一緒に駅まで歩いていき、蒼井菜穂とは駅で別れた。俺は藤堂晃に「明日は午後から出勤にして、午前中にこの世界線の西浦さんのお見舞いに行こう」と提案した。藤堂晃は不思議そうな表情をして「わかりました」と答えた。そして藤堂晃の家に戻って夕食を終えてシャワーを浴びた後、各自が部屋で眠った。一仕事終えた感じでかなり疲れていたが、もう一つの問題を解決させてからでないと元の世界線に戻ることはできない。俺はそう考えながら眠りについた。
■ 2018年11月9日(金)
この日は朝7:00に目覚まし時計が鳴って起きた。今日は早めに藤堂晃の家を出て9:00にはこちらの世界線にいる西浦真美のお見舞いにいくのだ。各自が眠そうな表情をして部屋を出た。そしてキッチンで高級なパンを食べながらコーヒーを飲んでいた。藤堂晃は昨日から「水嶋さん、一体何をするつもりですか?」と聞かれたが、俺もどう説明していいのかわからないのだ。朝食を食べ終えて、一応変装しておいたが、今日からもう清掃員として出勤しなくていいことになったので普段着に着替えた。俺は「じゃあ西浦さんは言った通りの手はずでよろしくお願いね」と言って西浦真美は「わかったわ」と言った。藤堂晃が「西浦さんは連れていかないのでしょうか?」と言ったので俺は「西浦さんには後で来てもらう」と言った。そして俺と莉奈と藤堂晃は三人で家を出た。駅まで歩いていってる間に莉奈が「どうして西浦さんは後で来るの?」と聞いてきたので俺は「ちょっとやってもらいたいことがあるからだよ」と言った。駅に到着して電車に乗った。こちらの世界線にいる西浦真美は会社の近くにある総合病院に入院しているらしい。正直、今からこちらの世界線にいる西浦真美に俺がやろうとしてることは成功するかわからない。しかし、何もしないで元の世界線に戻るわけにいかない。成功率は五分五分といった感じだろうか。
会社の最寄り駅に到着して、会社のビルより山のほうに歩いていき坂道をあがっていくと大きな総合病院がある。こちらの世界線にいる西浦真美はこの総合病院の神経科病棟に入院しているという。俺と莉奈と藤堂晃は総合病院に入ってエレベーターで六階まであがった。そしてナースステーションを通過して病棟の通路を歩いていくと西浦真美と書かれたプレートのある病室の前までやってきた。この病室はどうやら個室のようでよかった。藤堂晃が「では、お二人はここでお待ちください。僕が先に入って様子を見てきます」と言ったので、俺は「藤堂君、待った!」と言った。藤堂晃は「水嶋さん、どうしました?」と聞いてきたので俺は「藤堂君が病室に入る前に、先に入ってもらおうと思ってる人がいるから待って」と言った。しばらく病室の前で立って待っているとサングラスをかけた西浦真美がやってきた。莉奈は「あれ?西浦さんいつの間にきたの?」と聞くと西浦真美は「今さっきよ」と言った。俺は「じゃあ西浦さん、病室に入ってお願いするね」と言った。西浦真美がサングラスをはずして一人で病室へ入っていった。
藤堂晃「水嶋さん、どういうことでしょうか?そっちの世界線の西浦さんとこちらの世界線の西浦さんを会わせて何をするつもりですか?」
水嶋祐樹「藤堂さん、まあ待ってよう」
笹原莉奈「どういうことなの?なんかさっきの西浦さん、ちょっと雰囲気が違うような気がした」
それから15分ほど待っていると西浦真美が病室から出てきた。西浦真美はサングラスをかけて「ちゃんと話してきたわよ」と言ったので俺は「ありがとう」と言った。そして俺はスマホで西浦真美に電話をして「もしもし西浦さん、もう一つに戻っていいよ」と言った。するとサングラスをかけた西浦真美が消えていった。
藤堂晃「これはどういうことでしょうか?西浦さんが消えましたよね?」
笹原莉奈「確かに西浦さんがいて、今消えていった。祐樹君、どういうこと?」
水嶋祐樹「さっきここに来ていた西浦さんはポジティブな西浦さんで、今俺が電話した西浦さんは本体でネガティブな西浦さんなんだよ。西浦さんは分裂能力があってポジティブとネガティブな二人に分かれることができるんだよ」
藤堂晃「そんな能力があったんですね。僕も知らなかったです。そのポジティブな西浦さんは何を話したのでしょうか?」
水嶋祐樹「この世界線の西浦さんにポジティブな考えを取り戻してもらおうと思ってね。うまくいったかわからないけど、とりあえず藤堂さん、病室に入ってみて」
藤堂晃「わかりました。先に僕が入って、真美の様子を見てからお二人を呼びますね」
藤堂晃はこの世界線にいる西浦真美の病室に入っていった。すると中から少し大きな声で「真美、本当に話せるようになったの?」という藤堂晃の声が聞こえた。そして病室のドアが開いて藤堂晃が驚いた表情をしながら「お二人とも、真美が話せるようになりました。とりあえずお入りください」と言った。そして俺と莉奈は西浦真美の病室へ入った。
藤堂晃「真美、水嶋さんと笹原さんだよ」
西浦真美「えっ?どういうこと?だって、水嶋君と莉奈ちゃんはもうこの世にはいないはずなのに・・・」
水嶋祐樹「えっと、こっちの世界線の西浦さん、こんにちわ。今ここにいる俺と莉奈は別の世界線からやってきたんだよ」
藤堂晃「真美、水嶋さんと笹原さんが健全に生きてる世界線があるんだよ」
西浦真美「ということはこの水嶋君と莉奈ちゃんは別の世界の人ってことなの?」
藤堂晃「そういうことだね」
水嶋祐樹「この世界線では俺と莉奈は死んでしまったみたいだけど、こうやって俺達の世界では健全に生きてるんだよ」
西浦真美「とても信じられないわ。でも特殊能力を使えば別の世界にも行けるってことなのね」
水嶋祐樹「この世界線ではもう俺と莉奈はいないけど、藤堂さんとこの世界線の西浦さんで特殊能力を使っていろんな人を助けていってほしい。藤堂君の特殊能力は俺から譲り受けたものらしいからね」
笹原莉奈「そうだね。これからは二人で協力しあっていくのがいいと思う」
西浦真美「わたしはポジティブなことを考えられるようになって話せるようになったわ。だからこの世界では藤堂君と協力していくわね。水嶋君、莉奈ちゃん、ありがとう」
水嶋祐樹「うん。俺と莉奈が健全で生きている世界線では俺達はがんばるから、この世界では二人で頑張ってね」
西浦真美「わかったわ」
水嶋祐樹「じゃあ、俺達はそろそろ元の世界に戻るね」
西浦真美「あなた達の世界にいるわたしにもよろしく言っておいてね」
笹原莉奈「西浦さん、じゃあ行くね」
そう話して俺と莉奈は病室を出た。まだ藤堂晃は少し話をしているようだったが、すぐに出てきた。そして藤堂晃は「水嶋さんと笹原さんのお二人は僕の家でゆっくりしておいてください。今夜、あなた達の世界線に戻るようにします」と言った。
俺と莉奈は二人で藤堂晃の家に戻った。そして西浦真美を含めて藤堂晃の家の中で夜になるまでまったりしていた。そして20:00過ぎに藤堂晃が帰ってきた。藤堂晃は夕食に高級な牛ステーキをお礼といって用意していた。かなり美味しい牛ステーキを食べた後、各自がシャワーを浴びてベッドで眠った。
目が覚めると真っ白な夢中空間にいた。藤堂晃も夢中空間にいて「みなさん、起きてください」と言った。莉奈と西浦真美が目を覚ました。そして藤堂晃が「ここはまだ僕のいる世界線の夢中空間です。ここから、元にいたあなた達の世界線に戻るようにします」と言った。
笹原莉奈「この世界線にいる藤堂さんとはお別れなのね」
西浦真美「なんか名残惜しい気持ちだけど、この世界にいるわたしも話せるようになったみたいでよかったわね」
藤堂晃「みなさん、今回は本当にありがとうございました。なんとお礼を申し上げればいいかわかりません。もしあなた達の世界線で困ったことがあれば、今度は僕が助けにいきますね」
水嶋祐樹「じゃあ藤堂さん、この世界線でも西浦さんと協力しあって頑張ってね」
藤堂晃「はい!では、みなさん、水嶋さんの手を握って目を閉じながらあなた達の世界線にいた11月4日のみなさんの部屋を強くイメージしてください」
莉奈と西浦真美は俺の手を握って目を閉じた。俺も目を閉じながら11月4日にいた自分の部屋を強くイメージした。だんだん眠くなってきた。意識が薄れる瞬間に藤堂晃の声で「みなさん、さようなら。本当にありがとうございました」という声がした。そして俺は完全に眠った。
■ 2018年11月5日(月)
朝8:00に目覚ましが鳴って目が覚めた。ここは俺の部屋で間違いない。どうやら元の世界線に戻ってきたようだ。いつものように自分の部屋を出て洗面所で顔を洗ってキッチンへ入った。テーブルには鮭の塩焼きとサラダ、ご飯と味噌汁が置かれていた。母親がキッチンから「祐樹、おはよう」と言った。俺は「母さん、おはよう」と言って椅子に座って朝食を食べた。
部屋で着替えて家を出ると空は青空だがすっかり寒くなった季節になったと感じさせられた。駅まで歩いていき、駅に到着するといつもの時間の電車に乗った。週末にどこの山に行こうか考えながらスマホで山記事を見ていた。そして会社の最寄り駅に到着した。
10:00前に会社に出勤をした。今日は社内全体朝礼の日なのでフロアの前のほうに行って立ちながら社長が出てくるのを待っていた。そして社長と西浦真美がフロアの真ん中まで歩いてきた。社長はいつものように社員の意気込みや社内の雰囲気の話などつまらない話をだらだらとしていた。しかし、あっちの世界線にいた社長と違って言葉の一つ一つが力強い感じがする。そして社長の話が終わると西浦真美が「今日かしばらくの間、インターンシップとして働いていただく蒼井菜穂さんです。蒼井さん、一言お願いします」と言った。この世界線にも蒼井菜穂は存在していたのかと思った。姿も全てあの世界線にいた蒼井菜穂そのものだった。そして蒼井菜穂は「みなさん、おはようございます。以前、わたしの父がこの会社で社長秘書をやっていました。しかし、わたしは父に負けないくらい頑張ろうと思いますのでよろしくお願いします」と言った。社員達が拍手をして、西浦真美が「では今週もみなさんがんばりましょう」と言って朝礼が終わった。
あっちの世界で使えたテレパシー能力が使えるのか試してみようと思い、西浦真美に『西浦さん、美人だね』とテレパシーを送ってみた。すると西浦真美から『莉奈ちゃんっていう可愛い彼女がいるのに何言ってるのよ』というテレパシーが送られてきた。この世界線でもテレパシー能力は使えるようだ。俺は西浦真美に『この世界線でも蒼井菜穂がいたのはびっくりしたよ』とテレパシーを送ると西浦真美から『わたしも今日知ったのよ。びっくりしたわ』とテレパシーが送られてきた。
この世界線でもテレパシー能力が使えるということはあっちの世界線で使えた能力が使えるということになる。そうなると莉奈はあっちの世界線で奪い返した特殊能力を持っていることになる。おそらく莉奈だけ持っていたという透過能力も使えるのだろう。もう既に特殊能力をこの世界線でも自由自在に使えるようになっている。この先、何か大変なことに巻き込まれないか心配だが、これまでもみんなで乗り越えてこれたのだ。それに、また2033年からメールが届くかもしれない。これから先の未来がどうなるかわからないが、俺は莉奈と西浦真美の三人で協力しあっていこうと心に決めた。




