第8話 不登校編 8 初陣
コンコンコン。
乾いたノックの音が、モチオの暗い部屋に虚しく鳴り響いた。
しかし、部屋の奥に引きこもるモチオには、もう返事をする気力さえも残されていなかった。
しばらくの間、張り詰めたような静寂が辺りを支配する。
――その直後だった。
ドカーー―――ン!!!
凄まじい爆音がモチオの部屋に轟き、強烈な衝撃波が駆け抜けた。
モチオ「何にゃ!!!地震か!!」
あまりの事態に、モチオは思わず叫び声をあげて跳び起きた。
強引に破壊された扉の向こうからは、真っ白な煙が室内に流れ込んでくる。
その煙に覆われた中心に、ひとつのシルエットが浮かび上がっていた。
あれは……
どこか見覚えのある、無骨な人影――。
◇ ◇ ◇
時計の針を、ほんの少し前の時間へと戻す。
リビングでは、がり勉猫たちが次なる作戦の会議を進めていた。
モチクロ「ネコロボ、、、やれそうかな、、、」
ネコロボ「わかりません、予測不可能です。しかし、まずは部屋から出す。これは、がり勉猫さんの言う通り……感情で思いっきりぶつかるしかありません」
がり勉猫「モチオさんは完全に感情が爆発しすぎてコントロールができなくなった結果、すべての感情を抑え込むという方向に行ってます。まずはなんでもいい、感情を取り戻すことからです」
モチタ「策はあるの?」
コツ勉猫「いろいろ秘策はちりばめていますが、、、問題が、、、、」
モチタ「何???」
がり勉猫「ネコロボのCPUだけでは、モチオさんの些細な感情をとらえることはまだ不可能です。よって、誰かがネコロボに入って操縦してほしいのです」
モチクロ「なら、がり勉猫でいいじゃん!」
コツ勉猫「いえ、お兄様と私は、ネコロボから取ったデータ解析をして策を講じるので、操縦と同時は無理です」
モチタ「なら僕が行くよ! モチオ説得するんでしょ? やってみる!」強い決意を胸に、モチタがネコロボの方を向いた。
モチタ「にしてもさ、、、ネコロボの顔がボコボコで、なんか笑ってるみたいに見えるね」
ネコロボ「そうでしょうか。。。。」
モチクロ「なんか不謹慎だよ、、、モチタ」
がり勉猫「いいえ、、、こういう場合は、笑っていきましょう。モチオさんの笑顔奪回の作戦ですから、ネコロボも笑ってる方がいいでしょう」
モチタ「じゃーネコロボ、行くよ!!」
ネコロボ「了解です!」
モチタが意を決してネコロボのコックピットに乗り込もうとした、
その時だった。
がり勉猫「あ、モチタさん、、これを、、、きっとあなたに役立つでしょう」
がり勉猫が、ずっしりと重いリュックサックをモチタに手渡した。
がり勉猫「ふふふ、、、きっと必要になるでしょう。。開けてからのお楽しみですよ!」
コツ勉猫「ネコロボには、、、これ」
そう言ってコツ勉猫は、ボコボコになったネコロボの胸元に、ピカピカと輝く金色のバッジをピンで留めた。
コツ勉猫「頑張って、、、モチオ姫を救ってね! ネコロボ王子様!」
ネコロボ「ありがとうございます。。。。」
仲間の想いを背負い、ネコロボは静かに歩き出す。
みんなに見送りを受けながら、モチオが立てこもる2階への階段を一段ずつ進んでいった。
◇ ◇ ◇
そして現在。
ネコロボはモチオの部屋の前に到達していた。
重苦しいの扉を前に、内部リンクで操縦者とAIの通信が交わされる。
ネコロボAI「扉は頑丈なバリケードで覆われています。また、鍵もつけているようです」
モチタ「やっぱり、、、想像以上だな」
ネコロボAI「スキャン完了。モチオの部屋の中を完全に見ました」
モチタ「どう? 部屋の状況は?」
ネコロボAI「ただ、、、、、」
モチタ「何? ネコロボ」
ネコロボAI「中を見て、、ショックにならないでください」
モチタ「???・・・・・・・・うん・・・」
ネコロボの生体センサーが、モチタの心拍数の跳ね上がりを感知した。
彼が激しく動揺している様子が、データとして伝わってくる。
ネコロボAI「本当に大丈夫ですか? もう後には引けませんよ!」
一瞬、通信回線に沈黙が走る。
モチタは深く息を吸い込み、腹の底から声を絞り出した。
モチタ「さあ、行こう!!!」
ネコロボAI「行きますよ!!! さあモチタさん、、、耳をふさいでください!」
モチタは「OK」と短く返し、自らの両耳を強く塞ぎながら、コックピットの中で叫んだ。
モチタ「モチオの心の壁なんて、こいつで全部、ふっと飛ばしてやる!」
ネコロボAI「出力MAX、、、、、、、出動!!!!!!」
ネコロボのハンマードリルがモチオのドアを無理やり破壊する。
破壊された扉の煙の向こう側、ボコボコに凹んで「笑っているように見える」顔をしたネコロボが、ゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた。
窓の外のスズメたちはその大きな音に驚いて飛び立ったが、少し距離を置いて
中の様子を見ていた。




