第29話 スピンオフ:モチクロ絵本 「ペンキを被ったネコ」
昔々、モチコという真っ白な、とても美しい猫がいました。
けれど、モチコは自分の真っ白な毛並みに、どうしても自信が持てませんでした。
自分なんてちっとも可愛くない、そう思い込んでいたのです
ある日のこと、モチコがトコトコと道を歩いていると、一匹の茶猫が通りかかりました。
モチコ「まあ! なんて美しい猫なんだろう。私も、あんな風になりたいわ!」
モチコはそう言うと、近くにあった茶色のペンキを頭から思い切りかぶりました。
全身を茶色に染めて、モチコは嬉しそうに飛び跳ねます。
モチコ「やったー! これで、あの茶猫のように美しくなれたわ!」
またしばらくお散歩を続けていると、今度は綺麗なサバシロの猫に会いました。
モチコ「ああ! なんて美しい猫なんだろう。私も、あんな風になりたいわ!」
モチコはそう言うと、今度はサバシロのペンキを頭からかぶりました。
モチコ「やったー! これで、あのサバシロのように美しい猫になれるわ!」
さらに歩いていると、今度は艶やかな黒猫が前を通り過ぎていきました。
モチコ「まあ! なんて美しい猫なんだろう。私も、あんな風になりたいわ!」
モチコはそう言うと、今度は黒いペンキを頭からかぶりました。
モチコ「やったー! これで、あの黒猫のように美しい猫になれるわ!」
ペンキを重ねすぎて、自分の元の姿がすっかり分からなくなったモチコが、お家に帰ろうとした時のことです。
向こうから、一匹のシロネコが歩いてきました。
その姿は、光を浴びてキラキラと輝いて見えました。
モチコ「まあ……! なんて美しい猫なんだろう。私も、あんな真っ白な風になりたい!」モチコはシロネコになろうとしましたが、大変です。
もう、どこを探しても白いペンキが残っていませんでした。
モチコ「どうしよう……。白いペンキがないと、あの綺麗なシロネコになれないわ……」
モチコが困り果てていると、そこへ友達のモチオがフラリと通りかかりました。
モチコは藁にもすがる思いで、モチオに相談しました。モチコ「ねえ、モチオ! お願い、白いペンキが欲しいの。白いペンキをどこかで知らない?」
モチオは、ペンキでドロドロになったモチコの姿をじっと見つめ、呆れたように、けれど優しく言いました。
モチオ「はあ? 何言ってるニャ。お前は元々、真っ白な猫だろ。今被ってる変なペンキを、全部洗い流せばいいだけニャよ」
モチコ「え……?」モチコはお家に帰り、シャワーを浴びて、体にこびりついたペンキを全部きれいに洗い流してみました。
茶色も、サバシロも、黒も、全部洗い流したその時――。
鏡の中に映ったのは、元の、息を呑むほど美しいシロネコの姿でした。
お風呂から上がってきたモチコを見て、モチオはそっぽを向きながら、ぽつりと言いました。
モチオ「ほらみろニャ。モチコは、そのままの姿が一番美しいにゃ」
モチオのその言葉を聞いて、モチコは、白猫である自分のことが、前よりも少しだけ好きになりました。
おわり




