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こころののりしろ~不登校の君へ~  作者: モチモチオ
学校へ行く編

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第30話 スピンオフ;コツ勉猫の新婚さんごっこの謎 

ある日の昼下がり、コツ勉猫が真剣な表情でモチオに詰め寄ってきた。


コツ勉猫「ねえ、今日は私たち、結婚して何日目?」


モチオ「はあ? 何言ってるニャ? 頭大丈夫か、コツ勉猫?」


コツ勉猫「……バカっ!!!!!」コツ勉猫は顔を真っ赤にして怒ると、ぷいと足早に去っていった。


モチオ「……あれは、一体何にゃ?」


ネコロボ「さあ……。私のデータにも該当する答えがありません」


しかし、悪夢はそれだけでは終わらなかった。


その日の夜、リビングにいたモチオの元へ、コツ勉猫が再び怒り心頭で怒鳴り込んできた。


コツ勉猫「あなたっ!! 浮気してるでしょ!? なによ、この名刺はっ!!!!」


モチオ「何を言ってるニャ? さっぱりわからん」


コツ勉猫「とぼけないで!!! これが決定的な証拠よ!!!」


バシィィィン!とテーブルに叩きつけられたのは、ただの真っ白な白紙のカードだった。


モチオ「いや……何も書いてないニャ」


コツ勉猫「もう知らない! もう知らないわ! まだそうやってとぼける気!? ……さあ、憲太! 実家に帰りましょう! 今までお世話になりました!!!」


コツ勉猫は隣にいたネコロボの腕をガシッと掴んだ。


ネコロボ「……私、憲太???」


モチオはただただ首を傾げるしかなかった。


コツ勉猫は「実家」という名の自分の部屋へと猛然と閉じこもった。


もちろん、息子の憲太ネコロボも道連れに。


*それからというもの、実験室の食卓は暗黒期を迎えた。


次の日の朝食の時間。


モチタ「ちょっとモチオ! なんとかしてよー! コツ勉猫が怒ってご飯を作ってくれないじゃん!!」


モチクロ「さすがに……毎食、白ご飯に梅干し一個だけはきついよ……」


がり勉猫「モチオさん、何とかしなさい! これではエネルギー不足で、私の研究や実験にも大きな支障が出ます!」


モチオ(……なんで俺がこんなに全員から責められているんだニャ!?)


理不尽の極みに、モチオは心の中で激しく毒づいた。


そして、その日の昼食。


モチオ「……またノリアートで『バカ』って書かれた、梅干し一個のご飯かニャ……」


ネコロボ「しかし、毎食ちゃんと全員分作ってくれるあたり、彼女の謎の優しさを感じます。ちなみに私は、昨日から毎日毎日……『憲太、お父さんみたいに浮気する男になっちゃダメよ』というお説教を、部屋で2時間ぶっ続けで聞かされています」


モチオ「お前まで俺を責めるのかニャ?」


ネコロボ「いえ。AIとして、観測された事実をそのまま述べただけです」


モチオ「しかし……何とかしないと、本当に餓死するニャ……」


ネコロボ「そのようです。残念ながら、モチオさん本人がこの『設定』を解決しない限り、梅干し地獄は終わりません」


モチオは渋々、この理不尽な新婚の修羅場を終わらせるため、必死に思考錯誤を始めるのだった。


モチオはコツ勉猫の「実家」こと、彼女の部屋のドアの前に立っていた。


モチオ「ごめんにゃー。もう絶対にしないから、ご飯作って欲しいにゃー……」


コツ勉猫「フン! 私は絶対に自宅あっちには帰りません! もう近所でパートの仕事も見つけてきているのですから!」


またある時は――。


モチオ「ほら! お菓子にゃ!!!! お前の好きな高級プリン買ってきたぞ!」


コツ勉猫「物で釣ろうなんて最低!!! 私はそんな安い女ではございませんわ!」


さらにまたある時は――。


モチオ「ほら、ほら……コツ勉猫のギャル語、また聞きたいニャー!!!」


コツ勉猫「やっぱり! あなた私なんかより、ギャルの方がいいんですわね!? 最低!!」


万策尽きたモチオは、頭を抱えて廊下にへたり込んだ。


モチオ「ダメニャ……。何をやっても裏目に出るニャ、ネコロボ……」


ネコロボ「彼女の感情ロジックは、現在の私のシステムでは全く解読不可能です。……どうでしょう。コツ勉猫さんがいつも読んでいる少女漫画を解析して、ヒントを得てみては?」


モチオ「少女漫画なんてこれっぽっちも興味ないが……背に腹は変えられないニャ……」


*翌朝。コツ勉猫は、今日も今日とて「バカ」のノリアート付き梅干しご飯を作ろうと、不機嫌そうな顔で部屋を出た。


その時、ドアの前に一輪の美しい花が置かれているのに気づく。


そこには、小さな手紙が添えられていた。


『河川敷に行ったら、とても美しい花を見つけたよ。なんか急にコツ勉猫を思い出した。いつもありがとう。……そうだ、今日は結婚28日目だね。おめでとう』


手紙を読んだコツ勉猫は、頬をぽっと赤く染め、周りをキョロキョロと見渡すと、嬉しそうにそれを抱えて一旦部屋へと戻っていった。


物陰から様子を窺っていたモチオとネコロボが、顔を見合わせる。


モチオ「……本当に、少女漫画の通りにやって、これでよかったのかニャ?」


ネコロボ「さあ……。人間の恋愛心理の予測は不可能です」


しかし、効果は抜群だった。


その日の朝食は、驚くほど豪華な、いつもの美味しいメニューに戻っていた。


モチタ「モチオ、ナイス!!!」

モチクロ「やっと……やっと毎食の梅干し一個生活から解放されたよ……!」

がり勉猫「素晴らしい成果です、モチオさん!!!!」


みんなが大絶賛する中、モチオだけは全く実感が湧かないまま、戸惑っていた。


モチオ「……ども、ども……」


*それから数日後。


実験室の片隅で、がり勉猫が妹のコツ勉猫にそっと尋ねた。


がり勉猫「ところでコツ勉猫。なぜあなたは、あんなにもモチオさんに『新婚さんごっこ』ばかり仕掛けていたのですか?」


コツ勉猫「それはですね、お兄様……これのためですわ! じゃじゃーーーん!」


コツ勉猫が誇らしげに掲げたのは、新しいAIのプログラミングデータだった。


コツ勉猫「女性の気持ちを100%熟知するAI、名付けて『王子様AI』ですわ!!!」


がり勉猫「それ……世間に需要はありますか?」


コツ勉猫「もちろんありますわ! 女の子はいつだって、王子様に大切にされたい生き物なのです! そのための深層学習ディープラーニング実験が、モチオさんだったのです!」


がり勉猫「そのための……実験……?」


コツ勉猫「はい! 失敗例のデータや、そこからの不器用なフォロー、ちょっとダメな男感のデータも、時にはリアリティのために必要ですもの!」


コツ勉猫は満面の笑みで、もの凄く酷いことを明るく答えた。


がり勉猫は、遠くで幸せそうに昼寝をしているモチオを見つめ、心の中で強く誓った。


(……この真実だけは、モチオさんには絶対に黙っていよう。命のために)


*――そんなこんなで。10年後の未来、文部科学省に認められて全国の学校へ配置されることになる「心に寄り添うAIロボット」には、


実は――。


コツ勉猫の強い強いこだわりによって、隠しモードとして【王子様モード(イケボ問搭載)】が、搭載されているのであった。


(おわり)

がり勉猫「これで完全終了になります。続きはありませんのでご了承ください。」


ネコロボ「モチオ相談所、 モチオ大戦争もよろしくお願いいたします」

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