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こころののりしろ~不登校の君へ~  作者: モチモチオ
学校へ行く編

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第25話 学校に行く編 9 神様はいない

いつもの朝食の時間。


モチオはあくびを噛み殺しながら、テーブルへと向かった。


しかし、食卓の空気はいつもと違っていた。


みんなが深刻な表情で、じっと下を向いている。


モチオ「なに? なに? なんかサプライズでもあるのニャ???」


おどけるモチオに対し、がり勉猫は何も言わず、一通の手紙をそっと差し出した。


モチオは訝しげにその手紙に目を落とす。


読み進めるうちに、モチオの顔からみるみる血の気が引いていった。


モチオ「あのさー……冗談でもさー、悪い冗談と良い冗談くらい、俺でも知ってるニャ……」


がり勉猫は今度は、テーブルの上に置かれた新聞の隅を指さした。


紙面に大きく報じられているのは、政治家の裏金問題。


しかし、その片隅に、そんな政治家のお金よりも何倍も重く、些細なものとして扱われた、小さな命の記録があった。


――『転校初日の男児、トラックにはねられ死亡』。


モチオ「嘘にゃ!!! 嘘にゃ!!! 嘘ニャ!!!!!」


モチオは椅子を蹴り飛ばし、がり勉猫の胸倉を激しく掴み上げた。


モチオ「俺をこんなことで騙すなんて卑怯だぞ、がり勉猫!!!!」


がり勉猫は抵抗もせず、ただなすがままに胸倉を掴まれていた。


モチオ「今から、そのトラック野郎をぶっ殺しに行く!!! 今から行ってやるニャ!!!!!」


がり勉猫「……行っても無駄ですよ。もう警察に捕まっています」


がり勉猫の声は重々しく、あまりにも淡々としていた。


モチタ「最近連絡が来ないからおかしいと思ったんだよ!!! なんでだよ! なんでだよ!!!」


モチタが悔しそうに机を激しく叩いた。


モチオ「じゃあ、警察の中まで行ってぶっ殺しに突撃してやる!!!!」


がり勉猫「行っても無駄ですよ……」


モチオ「お前はモチロウと友達じゃないのか! がり勉猫、お前は平気なのかよ、お前はっ!」


モチオは狂ったようにすごんだ。


その瞬間、がり勉猫はモチオの声をかき消すほどの怒号を響かせた。


がり勉猫「ぶっ殺してやりてーに決まってるだろうが!!!!!」


がり勉猫が人生で初めて発した、汚く、剥き出しの感情の言葉だった。


がり勉猫は荒い息をつきながら、乱暴にもう一度、手紙をモチオの前に突き出した。


手紙は、モチロウの父親からのものだった。


『皆様へモチロウが一昨日、交通事故に遭い、亡くなりました。警察の話によると、モチロウが急に道路へ飛び出したと証言されています。


同級生から乱暴を受けたモチロウが、それを交わそうと道路に出た時、トラックは避けきれなかったと。


その証言通り、目撃者はいます。


また、モチロウの体にも痣が見つかりました。


現在もまだ、司法解剖中です。


しかし、警察および教育委員会は「いじめはなく、単なる不注意による事故だ」ということで処理するつもりのようです。


これから裁判になります。


モチロウの無念は、父親として絶対に晴らしたいと考えています。


モチロウは生前より、口を開けばあなたたちのことを話していました。


「みんなにカッコ悪い姿は見せたくない」と言っていたので、葬儀にご招待しなかったこと、心より申し訳ございません』


*それから、モチオは完全な無症状、無気力のまま、自室にこもった。


部屋の電気をつける気力すらなかった。


暗闇の中、モチオはかつて河川敷で交わしたモチロウの言葉を思い出していた。


――『神様って、本当に頭の輪っかがあるのかな? 杖を持ってさ。一度でもいいから見てみたいな……』


モチオ「……神様なんて、いねーわ」


モチオは小さく、ぽつりと呟いた。


暗い部屋、深い静寂。モチオはまた、かつてのような自室にこもる生活へと逆戻りしてしまった。


*翌朝も、その翌朝も。それからの朝食の時間は、みんな無口だった。


ただ、必要最低限の事務的な会話だけが交わされる。


暗く、重たい、地獄のような朝食の時間。


モチタ「……がり勉猫は、まだあそこにやってるの?」


コツ勉猫「そうみたい……」


*その頃、がり勉猫は――。


冷たい空気の中、警察署の前に立っていた。


がり勉猫の拳は、あまりにも強く握りしめられているせいで、痛々しいほどに細かく震えていた。


その目は、警察署の看板を、じっと見据えている。



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