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第19話 学校に行く編 3 他人の意見もまた自分を変えるチャンス

「駅前にマクドナルドができたそうですよ。どうですか? 行ってみたら?」がり勉猫が朝のルーティーンの中で、唐突にそう言ってきた。


どうせ逆らったところで文句を言われるだけだ。


モチオは何も言わずに黙り込んだ。


そして、いつもの時間にネコロボが迎えに来る。


魔の玄関口に向かうと、やはりそこにいた。


コツ勉猫だ。


(今日は……お弁当、持ってないよな……?)いつもあるはずのものがなく、モチオは戸惑った。


コツ勉猫「こんばんは。夕食は要りませんよね? 今日は会社の飲み会だからって、若い女の子と話しちゃダメよ! ねえ、私のどこが好き? どこが好き?」


モチオは面食らった。時々やってくる、コツ勉猫劇場の変化球。


(これは初めてだニャ!!!! なんと答える? なんと答えるべきなんだニャ!?)モチオが困惑していると、隣のネコロボが瞬時に機転を利かせた。


ネコロボ「お父さん、早く! 遅れちゃうよ!!」


モチオも慌てて話を合わせる。


モチオ「お、おう……!」そう言って、二匹は滑り込むように玄関を出た。


背後からコツ勉猫の声が追いかけてくる。


コツ勉猫「もう、あの人ったら! 憲太のことばっかりなんだから!! たまには私にも相手してよね、プンプン!!」そんな台詞を言い残し、コツ勉猫は満足げに去っていった。


ようやく外の世界へと逃げ延びたモチオとネコロボ。


モチオ「今ので、合ってたのかニャ……」


ネコロボ「コツ勉猫の表情から、満足を読み取りました。成功の可能性は高いです」

モチオ「サンキュー、ネコロボ!」モチオが親指を立ててサムズアップをすると、ネコロボも返した。


ネコロボ「お安い御用です」ピピっという音とともに、ネコロボもサムズアップを返す。


しかし、モチオにはどうしても拭えない疑問があった。


モチオ「ネコロボ、どうしてコツ勉猫は毎回毎回、俺たちが出る時間をピンポイントで把握しているんだニャ? もしかして、ずっとあそこで待っているのかニャ?」


ネコロボ「いいえ。これです」ネコロボは自分の胸のアンテナを指差した。モチオ「そうだったニャ……。お前にはGPSがついているんだった。それでかニャ……」


ネコロボ「そういうことです」


モチオ「いくらGPSで行き先が分かるとはいえ、毎回毎回あいつも飽きないなニャ……。っていうか、なんで唐突にあんな設定ごっこをしだしたんだろニャ?」


ふと思い、ネコロボの顔を見上げたが、これ以上質問するのはやめておいた。


モチオ「今日はバスに乗るんだなニャ」


ネコロボ「そうです」二匹はバス停へ向かい、やってきたバスに乗り込んだ。


モチオは財布から小銭を取り出し、料金口へと入れる。


一方、ネコロボは運賃箱の読み取りセンサーの上を素通りしただけで、決済が完了していた。


モチオ「毎回思うが、便利だなニャ。それも体内に内蔵されているのかニャ?」


ネコロボ「はい。キャッシュレス時代ですから。モチオさんも、どうですか?」


モチオ「いいニャ。俺は現金派だニャ」しばらくの間、二匹はバスの揺れに身を任せる。


モチオ「今時、現金派は合理的じゃない、とかは言わないのかニャ?」


ネコロボ「それは関係ありません。個人の考えでしょう。……それに私は金属に触れると劣化するので、小銭が持てないのです」


そんな会話の途中、ネコロボの体が不意にピクッと震えた。


モチオ「どうしたニャ? ネコロボ」


ネコロボ「当たりましたよ、モチオさん。PayPayスクラッチ。無料です、このバス代」


モチオ「えええ!! そんなのあるのかニャ!! ……なんか、俺も、使ってみようかニャ……」


ネコロボ「1%還元やスクラッチは、消費行動において極めて合理的、つまり……お得ですよ」


ネコロボはそう言って、モチオの方を見た。その時、後ろの席に座っていた乗客の子供が、ネコロボを指差した。ネコロボの背中にあるディスプレイには、実はスクラッチの画面が表示されており、そこには大きく「はずれ」と書かれていたのだ。


気まずい沈黙。


ネコロボはそっと振り返ると、その子供に向けて口元に指を立て、「シーーー、黙っていてください」のポーズをしてみせた。


◇駅前のマクドナルドに到着し、二匹はカウンターの前に並んだ。


店員「新発売のトリプルエビカツバーガーセットはいかがですか?」


モチオ「いや……ビッグマックを……」モチオが言いかけると、ネコロボが強引に割り込んできた。


ネコロボ「たまには、別のものを食べましょう。じゃあ、それでお願いします」


モチオがネコロボに不満の視線を送ったが、店員はにこやかにオーダーを通してしまう。


店員「お支払いはキャッシュレスですか?」モチオは少し緊張しながら、小さく頷いた。


モチオ「はい……ニャ」ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を見せる。バーコードが機械に読み取られた。


決済は一瞬で終わった。


あまりの簡単さに、モチオは拍子抜けした。


(あれ……? 簡単……便利だなニャ……)


モチオが後ろを振り返ってネコロボを見ると、ネコロボは自分のスマートフォンを指差し、画面を見るようにと合図を送ってきた。


画面を開くと、そこには「スクラッチを引く」のボタンが表示されていた。


モチオは画面を指でこすってみる。


『はずれ』


モチオ「次は当ててやるニャ! 見てろ、ネコロボ!」


ネコロボ「期待しています」


◇二匹はテーブル席についた。


モチオは運ばれてきたトリプルエビカツバーガーを一口、大きく頬張った。


モチオ「うまい、うまいニャ! これは……なかなかニャ。こういうのもたまには、良いなニャ」


隣のネコロボは、持参したポータブル電源にプラグを差し込みながら、淡々と語り始めた。


ネコロボ「こだわりを持つことは、良いことなのか悪いことなのか、私にはわかりません。しかし、人の勧めもまた、自分を変えられるチャンスなのかもしれない、と」


ネコロボのセンサーが優しく明滅する。


ネコロボ「きっとモチオさんは受け入れると思いました。私の能力です……それは予測していました」


モチオは食べる手を止め、苦笑いを浮かべた。


モチオ「なんか……がり勉猫に似てきてないかニャ? その口癖」


ネコロボ「……良い意味でしょうか? 悪い意味でしょうか?」


モチオはクスッと笑って、バーガーの包み紙を置いた。


モチオ「もちろん、悪い意味でだニャ」



ネコロボ「こだわりを持つことの是非は、私には判断しかねます。しかし、他者の意見は自己を変革する好機。人は必ず誰かの影響を受け、それによって成長するもの。……そう、分析いたします」


ネコロボはモチオを見たが、


モチオはそんな話はそっちのけで、エビカツバーガーを無心でほおばっていた。

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