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聖女としての朝は忙しく、皇女としても昼も忙しい。
つまるところ私は結構忙しいのである。
勿論、婚約者候補たちがすごーく頑張ってくれているからね?
私の仕事の負担で言えば、百パーセントの内の二十パーセントとかそんなんだよ。
頭割りだよ!
それでも本来自分がやんなきゃいけない仕事を――いや、聖女と皇女の二足のわらじだからある意味で百パーセントと百パーセントを五人で割ってるんだから各二十パーセントとかなのか?
ごめん数字に弱いからよくわかんないや!
とにかく本来は自分でやらなきゃいけないことをみんなが負担してくれて軽いとはいえ、私の体はまだ子供。
なんなら頭を使って走り回ったらもうおねむだよ。
そりゃ幼児に比べたら体力あるけどさ、基本的に世の中の人間の平均的な体力だと思うんだ……。
(兄様とか父様が異常なんだって……あの魔力量と身体能力、両方兼ね備えてるのずるくない? その遺伝子はなんで私に入ってないの? 無駄にイケメンだしさあ!)
いや、イケメンは目の保養になるから無駄ではないな。
あと妃殿下たちも揃いも揃って美形だし、そういう意味では目の保養に困らないからそれはそれでオッケーなんだよな……。
おっと、そうなると私が超絶美少女だとしても美少女としての価値が揺らいでしまうな?
「現実逃避しても書類が終わらないよう……」
「そりゃ手を動かさなきゃ終わりませんよ」
「ア、ア、アリアノット姫、が、が、頑張りましょう!」
「うぇーん」
「じゃあひめさまがちょっと気を紛らわせるような話をしてあげますから、元気出してくださいよ」
「えっ、なんか面白い話題でも城内であったの?」
エルヴェの唐突な発言に私が思わず書類から顔を上げると、エルヴェはにんまりと笑った。
可愛い顔してその笑い方はどう見ても悪役ヅラなんだよなあ~……。
「それで? どんな面白い話を小耳に挟んだの?」
「ええ。先日の無礼なカップル――失礼、悲劇の恋人たちなんですけど」
言い換えてもエルヴェの言い方は皮肉ゥ。
まあそう言いたくなる気持ちはわからんでもないし、私の気持ちを慮ってわざとそうしているのかもしれないけど。
でもとりあえず書類から目を離したかった私はそっちに意識を向けることにした。
もう数字を見たくないんだよ……!
「男性の方は昇級試験に向けて勉強を始めたようですが、まあこれまでサボり気味だったのか少々忙しくなったようで。それで会える時間が減った途端女性の方が寂しがって雨あられと手紙を送っているようです」
「……周囲にバレない? それ」
「ええ。それで今、女性の方は謹慎。男性の方は……手紙の送り先が職場だったものですから減点ですね」
「最悪じゃん」
めっちゃ最悪じゃん。
頑張ってみせろとは言ったけど、タルタリーヤさん方向性ばっちり間違ってますね!
……えっ、タルタリーヤさんが跡取り娘なんでしょ?
領地の未来は婿の肩に……かあ……。
そりゃご両親だって先祖の確執云々以前に、能力あるお婿さん捜ししたいよね。
下級文官じゃなくて、領地の運営をしっかりできるタイプの、さ。
(……ただの確執だと思ってはいなかったけど、まさか本人の資質の問題が前で確執は二の次って可能性の方が高いのか~……)
じゃあやっぱりどうあっても『頑張って資質を認めてもらう』しか方法にないのでは……?
特にタルタリーヤさんは『自分が領地運営頑張るからマシューをお婿さんにして!』と訴えるのが一番早いと思うんだけど。
マシューさんも出世より領地運営の方が重視されてるんだから、そっち方面で役に立つ情報を持ってた方がいいと思うんだけどなあ……やる気は認めるが方向性がやっぱりこっちも間違ってんな?
とはいえ昇進試験の時期でもないので、文官試験でやる気を出したところで評価はまだできないけど。
こればっかりは合格してからじゃないとね。
過程も大事だけど、結果も大事だよ!
私だって聖女と皇女としてのお仕事は結果しか見てもらえないところが大多数だもん。
うっうっ、世知辛いがこれが世の中ってものだよね……!!




