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若干イライラしつつも追い返せたことで一安心。
まだ来るかもしれないけど……責任云々を言ったから多少なりとも響いてくれたらいいなあ。
いや……響いてたらもうちょっとマシか?
皇女のところまで来て「聖女なんだから」「皇女殿下だから」って泣くの相当アレだもんな……?
(いうて殆ど初対面と変わんないのにあれだもんな??)
そういう意味では今日メンタル。
多方面で胃もたれ気味だわ。
「……それが恋ってやつなのかなあ」
「あれは悲劇に酔っているだけだ」
「フォルティス様」
「本当にあの男がかのご令嬢を好いているならば、婿入りするためになんでもできただろう。王宮の文官という職を得る程度には優秀なんだ、たとえ下位だろうと」
「それは……」
確かにその通りではある。
この城で勤められる人間は、それ相応に能力が求められるコトが多く、文官登用試験を通る程度にはマシューさんは優秀ということになる。
なんたってこの国の中枢である皇城勤務、倍率はとんでもないと私の耳にも届くほどだ。
勿論、登用試験に合格したからといって人柄がいいかどうかはまた別だけど……。
「それならばあがけたはずだ。家を捨てるから婿入りを認めて欲しいとか、文官の昇級試験を受けて立身してみせることだってできただろう。相手の家に土下座しつづけて頼み込んですでに何年もやったというならまだ手も貸そうと思える――まさしく姫が言ったことではあるが」
むっと難しい顔をしているフォルティス様。
フォルティス様自身が、獣人の国で騎士として働くのは難しい草食獣種でありながら努力を重ねてきた人だけにあの二人のやりようはただただ甘えているようにしか見えなかったはずだ。
「……そうですよね、自分たちでまずどれだけ頑張ったのかってことを示して欲しかったですよね」
「ああ、まったくもってその通りだ。嘆いて密会だけして自分たちを慰め合い、周囲に手を差し伸べてもらうのを待っているだけだった」
「……今回のことで分かってくれたらいいんですけど」
「きっとわからない。また『助けてもらえなかった』という悲劇に酔うだけだとおれは思う」
「そうですか……」
ものすごくきっぱり否定されてしまった。
いやまあそういう人っているもんね……。
最終的に悲劇に酔いながら別れて悲劇にひたり続けるタイプの人っているもの。
あれはあれでドMなのかな? とも思うけど多分違う。
ただ、私にはわからない人種であることは確かだ。
「……もう来ないといいなあ……」
「……オルクス殿下にご相談してはいかがだろうか」
「文官全体の査定に入りそうだから止めてあげよう?」
それはね、マシューさんのせいでみんなが迷惑しちゃうからね!
あ、でもたまにはやった方がいいのか。
なら……いいのか……?




