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……いや、訪ねてこいとは言った。
言いましたとも。
その覚悟があるのかって問いかけるかたちで、確かに申し上げましたとも。
「……でもまさか、翌日にすぐ来ると思わないじゃん……?」
「ひめさま、目が死んでるよ。あの人たちのお茶請け、揚げ物にする?」
「止めて差し上げて」
お茶請けが揚げ物ってどういうことだ。
いや揚げドーナツとかチュロスだったらいいのか?
ソース問題と思ってしまうとどうしたってコロッケとかトンカツとかをイメージしてしまう……!
くっ、フライドポテトが食べたい。
「デリア、フライドポテト……」
「この時間にお勧めいたしません」
「だよねー!」
お口がフライドポテトを求めているんですけど許されなかった。
まあそれはともかくとして、来いと言ったら来てしまったので追い返すわけにはいかない。
私の立場上、聖女としても皇女としても一度言葉にしてしまった以上、責任が発生するのだ。
「まさか実行すると思わなかった。こんな早く」
「行動力のある無能ってのが一番厄介だけど一番動きますからね!」
「エルヴェ、言葉の威力が強すぎる」
「けれどその通りだと思います」
「デリアまで!?」
なんでうちの使用人たちの火力が高くなっているんだろう。
もう私の癒やしはソレイユだけなのか……?
思わず抱っこしていたソレイユに頬ずりしたら、ソレイユはソレイユで「いつでもブレス吐けますよ」みたいな目を向けてきていた。
誰に似たんだ、本当に!
私じゃないことだけは確かだよね!!
「……エルヴェ、とりあえず一般応接間に待たせておいて。お茶だけでいいわ。茶葉は任せる。あと、フォルティス様呼んできて」
「はい、かしこまりました」
「デリア、支度するけどほどほどでいいわ。今回だけで済む話……に終わればいいなあ。終わらないよねえ、きっと」
「そうですね、翌日すぐに押しかけてくる程度には追い詰められているのでしょうから。それにしてもどうしてフォルティス様を? こうした色恋沙汰は特に苦手な方と思いますが……」
「まあねえ」
でもフォルティス様に威圧してもらって泣き落としは無理だよってしておくのも大事だと思うんだよね。
そういう意味ではピエタス様とかサルトス様はついつい同情とか興味で話を続けちゃいそうなところがあるからさ……。
ユベールはだめだね、エルヴェとは別の方向で危ないから。
私がちょっとでも不快に思ったり面倒だと思ったら『処す?』って聞いてきそうだから。
そういう消去法でフォルティス様だよね!
兄様たちに頼ってもいいんだけど、それはそれで私が兄離れできてないな~って揶揄われるから駄目だ。
「まあ状況に因っては伯父様を呼んで、説法してもらう方向で……」
「それがようございますね」
これが駆け落ちするから祝福してくれ! なら伯父様に丸投げ一択だと思っているよ。
私は聖女だけど、まだまだ純真な子供なので。
「お支度できました」
「ありがとう。それじゃあ行きましょうか」
一般応接間は、城内にある応接間だ。
さほど重要でないお客を待たせる、たくさんある部屋の一つに過ぎない。
そこに通された二人は、カチコチに固まっていた。
先に到着していたフォルティス様の睨みが利きすぎているのかもしれない。
「……お客人方、おまたせいたしました。フォルティス様も同席、ありがとうございます」
「我が婚約者殿のためであればいくらでも」
おっとぉ、候補とはいえこちらは堂々たる立場であり、相手方二人にとってみると『後ろめたい』関係なことを揶揄するとは……フォルティス様、意外とやるなあ。
それにしてもちょっぴり怒っている様子なのはなんでだろう?
「……フォルティス様、もしかして今日の用向きについて彼らが話したんですか?」
「ああ」
「まあ。では、どのような?」
「端的に言えば――二人の関係を両親に認めさせる説得を皇女殿下にお願いしたい、と」
私は目を瞬かせた。
アホか! と思わず叫びそうになったのを堪えた。
えらいと思った。




