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「わ、わたくし、タルタリーヤと申します。サッカリン子爵家の長女にございます」
「……ポターティン男爵家のマシューと申します」
二人が頭を下げる。
どちらも緊張している様子が手に取るようにわかった。
私は思わず呟いた。
「タルタルソースとマッシュポテト……」
「ひめさま」
「あ、アリアノット様……」
エルヴェとピエタス様から鋭く呼ばれハッとして姿勢を正す。
いやあ、ごめんて! つい!!
揚げ物問題だけじゃなくて名前がソースと付け合わせっぽいとか反則じゃない?
しかもサッカリンとかなんだっけ? どっかで聞いたな……。
それも食品関係じゃなかったっけ……やだ、笑わせにきてない?
え? これ本当に?
思わずエルヴェを見たけどしれっとしていたので冗談ではないらしい。
私はとりあえず笑みを作って見せた、今更ということなかれ、さっきまでのやりとりは小声だったから問題の二人には聞こえていない。
……そう信じたい。信じているよ!!
「ご挨拶をありがとう、サッカリン令嬢、ポターティン卿。パーティーは楽しめていますか?」
「は、はい。おかげさまで……」
タルタルさん……おっと間違えた、タルタリーヤさんはちょっと目を泳がせていて、うーんこの人跡取りって割に腹芸できないタイプかなって思った。
招待状の偽装(?)で来ているくらいだから、もうちょっとこう、胆力がある人をイメージしていたっていうか……。
(いや待てよ、悲劇のヒロインパワーかもしれないな?)
愛のためならなんとでも! って行動できちゃう子がいたような気がする。前世でも。
ただまあその結果がどうなったかは思い出せないから、きっと大した思い出ではないのだろう。
マシューさんはちょっと神経質そうな雰囲気があるけど、この人は何かすごく意気込んでいてこっちの方が厄介そうだ。
恋は盲目って言葉もあるけど、それがぴったり当てはまって何かしら失敗しそうなタイプに見える。
……まあ、人を見た目で判断しちゃだめだよね! うん!!
「それじゃあパーティーを楽しんでくださいね」
私は早々にその場を離れることに決める。
ここで『相談があります』とか『お話が……』なんて言われたら厄介ごと確定だもの。
聞く気はありませんよ、という態度を示すことで相手にも伝わったのだろう、悲愴感たっぷりな目を向けられた。
うっ、良心が痛むぅ……。
「……私は揚げ物はいろんなソースをつけるのがいいと思うので、ご期待には添えませんよ……?」
「ひめさま、そうじゃないと思うんだよなあ。オレは塩とレモン~」
「ぼ、ぼくはソースが好きです、けど」
思わずな返答をしてしまって自分で何言ってんだ? と突っ込みたくなったが、エルヴェとピエタスが追従するようにツッコミながらも乗ってくれたお陰で、小さな笑いに変えることができてホッとする。
ありがとう二人とも、本当にありがとう!
一人で駄々滑りして悲しい思いをするところだったよ……!!
「お話があるようでしたら、城までお訪ねください」
私がそう告げると、二人は更に悲愴感たっぷりな目を向けてきたけどそのくらいの覚悟がないならこちらを巻き込まないで欲しいのよ。
人の恋路に首を突っ込むと、大抵碌なことにならないってのは世間の相場でしょ。
それがたとえ、あっちから巻き込んでくるスタイルだとしてもね!!




