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ピエタス様は吃音のきらいがあるけど、それで以前はあまり話したがらなかった。
でも今は、頑張ってくれている。
勿論私も彼に支えられてばかりではいられないので、薬草の件や教会周りの人と主に話をしていたんだけど……。
「ひめさま」
「エルヴェ?」
「例の二人が今回のパーティーに紛れ込んでますよ」
「え? 名簿に名前はなかったよね?」
「それぞれ、きょうだいの名前を借りたみたいですね」
「……それってバレると厄介なヤツね」
「まあ慈善パーティーなんで、ある程度はお目こぼしもあるでしょうけどね。全くの別人ってわけじゃないから、家族の代理と言えばなんとでもなるでしょう。……ひめさまがいるんじゃなきゃね」
「あー、やっぱりー?」
皇族が参加するパーティーは、基本的に身元チェックが大前提だ。
代理が来るなら代理が行くと連絡しないと、万が一のことがあるからね……。
他のパーティーでも大貴族たちはそこを徹底させているところもあるわけで、慈善パーティーだからってそれが許されるかどうかは主催側の問題になるわけだけど……。
勿論、パーティーの招待状を偽造する人もいれば今回のように身元を偽造するパターンもあるし、全部をチェックしきれるのかって言うとはっきりいって無理である。
だってこの国に何人貴族いると思ってんのさ……って話よ。
身元証明のブツ持ってきてんのってなったらまあ、家紋とかになるんだけど……大きいパーティーならそれもやってるそうだけど、こういう慈善パーティーだと民間の人たちも交じるためどうしても難しいらしいんだな、これが。
だから見つかった場合、とても厳しく罰金刑が科せられると聞いている。
世の中、やっぱりお金持ってかれたら困るもんね……。
しかしあの揚げ物カップル、なんでまた偽造なんて……。
いや本人たちが揚げ物で揉めたわけじゃないんだけども。
「エルヴェ、念のため……あー、うん。穏便に。穏便に彼らが帰るよう誘導できそう?」
「やれっていうならやりますけど~? 気絶させて馬車に放り込むのと、ご実家から人を呼んでくるのと、正体暴いて憲兵に連れて行かせるのどれがいいです?」
「最後が全然穏便じゃない上にどれも自発的に出て行く要素がないんだよなあ」
私は穏便に、彼女たちが帰るよう、誘導しろって言ったんだけど?
いやまあエルヴェの案が手っ取り早いのは認めるけどさあ!!
「ぼ、ぼくも、エルヴェの案が、いいと、思いますけど……」
特別私たちの事業に関与はしないけどそれでも騒ぎが起きたらたまんないってところだろう。
まああの揚げ物カップルとしたら密会が出来るタイミングを逃したくないんだろうけど……。
「あれ? エルヴェ、あの人たちの女性側は確か跡取り娘なんだよね? 誰の名前を借りて来ちゃったの?」
「父親ですねえ。何か騒ぎがあったら家の責任待ったなし! で、その理由が悲劇の恋人との密会だとこれまた両家の戦い待ったなしかなって」
「わあ。……わあ」
人の恋愛にケチをつけるつもりはないが、どうか他人を巻き込まないでおくれよ。
でもなぜだろうか?
その彼女たちが近づいてきているような。
「……気のせい、では」
「ないですねえ~。どうします? 今ならまだオトせますけど」
「なんか物騒な言葉が聞こえた」
「ア、アリアノット様の、お、お考えに、し、従います。ど、どうなっても、ぼ、ぼくがお守りします、からね!」
ピエタス様が癒やしだなあと思いつつ、この人もエルヴェの案を支持したんだよな……という事実に気付いてしまった。
うん。人って、見えていることだけが全てじゃないよね……!
「せ、聖女様にご挨拶申し上げます!」
可愛らしい女性が緊張した面持ちで私に声をかけてくる。
皇女って呼ばない辺りがなかなか考えているようだ。
私は皇女だけど、同時に聖女だ。
皇女と呼ばれていたなら、そこには大きな身分制度の壁が立ちはだかるので話かけるならば初めての人としては間に誰か入ってもらうのが貴族ルール。
けれど聖女なら、話は別だ。
神の名の下に、ある程度の役職はあっても基本は平等を謳うので、聖女だってそれはそう。
なので聖女と呼びかけられたなら、私は振り返らなければ。
(巻き込まないで! 欲しかった!!)
揚げ物ソースの決着をつけてくれって言われたらどうしよう。




