249
エルヴェのせいで頭がいたい……純真無垢な聖女サマになんてもん見せるんだ、あの小悪魔系男子めえ……。
でも本当に仕事ができるんだよね、まいっちゃう。
「で、ひめさまが言ってた迷惑カップルってやつわかりましたよ~」
「さっすがエルヴェ~!」
できすぎて腹も立たないわ……。
とりあえず、エルヴェによるとあの二人が険悪な家の長女と三男、てこと。
女性の方は領地持ちの貴族家で跡取り娘、男性の方は同じく貴族だけどこちらは領地を持たない法衣貴族で城の文官……シアニル兄様の関係なので文化系を担当している部署に、父親が勤めているらしい。
「で、なんで険悪なのかっていうと先々代くらいに酒の席で取っ組み合いをして絶縁した事に端を発するそうですよ」
「ええ……」
先々代っていうと、あの悲恋(?)カップルの曾祖父くらいの年代か。
帝国内は特に荒れた時代でもないから、主義思想の関係かな?
「なんでも、揚げ物につけるソースで意見がわかれたらしくてそこから袂を分かったと」
「くっっっ……あ、いやうん、人によっては大事、なのかな……?」
思わず大きな声でくだらないと言い切ってしまいそうになったよ、危ない危ない。
まあくだらないことを表の理由にして、本当は別の……って可能性もあるけど。
だからこそこういうことにはね、思っても言わないって大事だよね。
「くだらないよねえー、アハハっ!!」
(エルヴェーーーーーー!)
「いやあ、めちゃくちゃ笑えるよ。調べて思わず笑っちゃったし」
お前は言うんか!
気持ちはわかるけどな!
「いやあ、ひめさまのことだから本当の理由が別にある……なんて考えてそうだからさ。オレもそう思って調べたんだけどこれがびっくり! 本当の理由」
「本当の理由なんだ……!?」
いやまあ前世でも唐揚げにレモンは戦争になり得たからな……!
確かにそういうことで喧嘩もあることだろう。
「元々大の仲良しで、子供が生まれたらお互いの子供を結婚させよう……とかベタなことを言い出す親友だったそうで」
「ほうほう」
「ところが生まれたのはどっちも男。まあしょうがないよねってその時は落胆だけで終わった。むしろ子供が元気に生まれて、同年代で友人になれたら最高だよねって感じ」
「うんうん」
「しかしながら子供たちは特に友情が芽生えることもなく」
「ん? うん」
「齢を重ねて今度は食の好みが変わってきて」
「う……うん?」
「段々意見も合わなくなってきて」
「うん????」
「で、挙げ句の果てに乱闘をしたと」
「何も同情できるところはないし共感もできないな……!?」
「それでお互いの家で仲違いを公的に宣言しちゃったから、今に続いてるってことらしいよ」
「最悪だね!?」
公的に宣言、それは家同士の対立を他の貴族家にも公に知らしめ、あちらに味方するなら容赦しないぞ……というようなものだ。
これが特に何も宣言のない仲違いなら、世代が変わっても怨恨の種とまではいかず和解の道が拓きやすいんだけどね……。
「揚げ物でそこまで……!?」
「いや揚げ物につけるソースね」
エルヴェの冷静な突っ込みが辛い。
からいんじゃないよ、つらいんだよ!




