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とりあえず、以前兄様たちと相談して私のこの『聖女としての能力(?)』については簡単には広めないことに決めていた。
なんせね、どんな病気や毒に対しても調べるための本があるって……これすごいことだよね? よく考えたらさ!
使い方がわかんないままだとただの本だけど、今回の件でその有用性に気付いたら怖いくらい価値があるんじゃないかと思うのよ。
これまで私はこの本で病気について対処がわかればいいな~くらいの気持ちだった。
ところがそれに付随して、影響あるなにか……例えば、今回の魔力風邪のように。
もし、治癒の過程で起こるあれこれを、悪用に向けたら?
稀少な能力者を得るために、魔力風邪をわざと蔓延させたら?
多くの稀少な能力を持つ兵団を作り、国家転覆を狙う人もいるかもしれない。
そしてそれに伴い、どれだけの人が犠牲になるのか……。
(……治療の過程で、ある程度熱が出たらじゃないと薬は投与できないって本に書いてあった。ある程度熱が出て、魔力風邪と断定できるところまでこないといけない)
初期段階では本当にただの風邪なのか、魔力風邪なのか、判断が難しい。
熱が出始めて、それが一定の温度を超えると魔力の暴走が始まる。
そこが魔力風邪の判断すべき点であり、薬を投与するタイミングであり、そして――稀少能力を得たかどうか、魔力の変動を見ることさえできれば判明できる……と本には書いてあった。
稀少能力を魔力の変動で見るってなんのこっちゃ? と私はなったけどね!
その辺についてはアル兄様とパル兄様が「なるほど」って言ってたからきっとなんとかなるよ!!
まあともかく、そうやって魔力風邪だけでこれなんだから他の病気に対してもあれこれできちゃうわけよ。
私を抱え込めば、不治の病って言われていたものだって解明できちゃうかもしれない(あくまでしれない)のだ!
それを利用したいと想う人はごまんといることだろう……と父様もそれを憂慮した。
権力者であればあるほど、それが表であろうと裏であろうと、利用できるものは利用する。それはたとえ親子であろうと……っていう殺伐とした面。
でも私はこれをまずはこの帝国のために、人民の命を救う形でそのついでという形で稀少能力者を得る形を提示し、それを父様は受け入れた。
あくまでそれは『聖女』であり『皇女』としての、二面性を持つ私だからこそである。
そう……これは皇女の公共事業!
聖女にして皇女である私にしかできないのだ!!
(……ってことにしておこうってなったんだよね)
なので、協力者には魔法の契約書を結ばせているってわけ。
口外したら色々と怖い(内容は教えてもらっていない)ことが起きる契約書だよってオルクス兄様が言っていたので、相当怖いことが起きるんじゃなかろうか……。
まあそれはともかく、私はアラン先生が私の知識を増やしてくれるのと同時に、私にとっての〝協力者〟となる医師であるかどうかを知っていかなければいけないなと思った。
どうしてかって?
だってあんなにも、医学に対して熱血だったからね。
利用……じゃなかった、協力してもらえるなら単純……じゃなかった、純粋な気持ちが強い人の方が扱いやすい……ごほん。
「最近思考がエルヴェ寄りになってきた気がする」
「それは大変問題です、姫様」
「だよね」
思わず呟いた言葉にデリアも深刻な表情で頷いた。
そうだよねー! 暗殺者と似てきた皇女とか洒落になんないわー!
いやデリアはエルヴェの正体知らないけども!!
「アラン先生の教え方は悪くなかったんじゃないかな」
「そのように見受けられます。教えることに慣れておいでのようでした」
「威嚇する猫みたいな先生だったね」
「……少々躾が必要かとは思いましたが、能力には申し分ないかと。もうしばらく様子を見ますか?」
「そうだね、患者に対する熱意は間違いなく本物だと思うし……私ももう少し生徒として努力してみようと思う」
病気について学びたいのであって、患者への適切な処置云々は……とも思ったけど病気の理解には必要なのか? と割り切ることにした。
(いや覚えること多いな……!)
げっそりする私に、手元の医療の本が輝いた。
……そろそろこの本にも愛称をつけてあげるべきかな。
さあ、本の名前(?)はなんになるのか……!




