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先日、王都の外れにある貧民街で魔力暴走を起こした子供がいたという。
貧民街ができる理由は、様々な要因がある。
王都はどうしたって人が多い分、貧富の差が生まれやすい。
誰もが職を求めて華やかな町に来ても、職の数は限られる。
あぶれた人は日雇いの仕事や、低賃金の仕事で生活を乗り切るしかできない。
しかしそんな暮らしは余裕などまるでなく、切り詰めながら暮らす中で上を目指すことがどれほど難しいことか――前世の私が、それをよく知っていた。
助けてくれる人がいなければ抜け出せない、そんな泥沼に嵌まってしまったような感覚だ。
そして貧困層では魔力暴走で人が亡くなったとしても〝仕方ない〟で済まされがちだ。
何故ならば――彼らは余剰だからだ。
仕事を求めてやって来たが、人手が足りている以上どうしようもできない。
そうして賃金を得られない彼らは栄養状態が万全と言えず、そして魔力風邪になっても対応ができずに死んでいく。
これが貴族ならば、まず発症しない。健康で、かつ、魔力が高いから逆に病による暴走がない。自己防衛の方に魔力が働くので、むしろ病気になりにくいくらいだ。
それでも貴族の中で病弱とされる人がいるとすれば、それは生まれ持った魔力量が多すぎて器が追いついていないからとされるけどそれは病による魔力暴走とはまた異なる。
平民でも魔力暴走かどうかは初期段階で医師にかかれば済むし、栄養をしっかり取って休みなさい……で終わるという。
けれど貧困層はどうか。
医師にかかることが辛うじてできたとしても、栄養をしっかり取って〝休む〟ことは難しい。
重要度の低い貧民は、切り捨ての対象になりがちだ。
そのため、メディーテー様の本にも『栄養さえ取ればいいからと研究は打ち切られがち』と記されていたけれど――私が気にしたのは、その先の記述だった。
「医務官! ちょっと話を聞いてほしいの!」
「こ、皇女殿下?」
「魔力風邪の緊急薬を作りたいの。被験者を集うことはできる?」
「魔力風邪の緊急薬ですか?」
医務官が怪訝な顔をする。
切り捨てるごく少数のために、魔力暴走を起こすレベルの生活水準でしかない彼らには薬は高価だと言いたいのだろう。
医師として救いたい、だが生活を満たすことができないのに王都にしがみつく人々は正しいのかと倫理で難しい話だ。
勿論、王都以外に居場所がないというケースもあるだろうから、本当に一人一人に寄り添うことは難しい。
「お願い。どうしても確かめたいことがあるの」
「……承知いたしました、皇女殿下のご命令とあれば。ところで薬剤の材料はどのようなものを……?」
「これよ」
私は握りしめていた雑草を差し出す。
医務官が、ものすごい怪訝な顔で草をつまみ上から下から眺めて、机に置く。
そして大きなため息を吐いた。
「皇女殿下、さすがにこれは……貧民とはいえ、この国の民。できますればわたくしめといたしましても尽くす志で医務官を目指した身でございますが」
「聞いて! 聞いて! ちゃんとしたレシピがあるのよ!!」
遊びに来たんじゃないってば!
大慌てで私は医務官を止めてメディーテー様の本を見せることができず、私が書き写したものを見せる。
「魔力風邪を乗り切ると、一定確率で特殊な魔力を身につける人がいるそうなのよ!」




