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末っ子皇女は幸せな結婚がお望みです!  作者: 玉響なつめ
第二十二章 三つ巴ならぬ四つ巴、いや五つ巴?

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230 ユベール編②

 私たちは花を持って、転移した。

 キラキラした何かが私たちを包んで、眩しいなと思ったらもう次の瞬間には原っぱだったからびっくりした。


 ちなみにちゃんと護衛でグノーシスが着いてきてくれているんだけど、そのグノーシスが「これほどまでに安定した転移の術は初めてです」と言っていたのでユベールの魔法のレベルは相当高いんだと思う。


 その当のユベールは、ただ黙って原っぱをぐるりと見渡して「こんなだったっけ」と呟いていた。


(……ユベールにとったら、五年ぶりの帰郷ってことになるのかな……?)


 帰郷っていうのも変な話なんだろうか。

 今の彼にとってはオルフェウスこそが帰るべき国なんだから。


 でも、この土地は彼が生まれ育ったところでもあって……うーん、複雑ゥ!


 ちょっぴり感傷に浸りつつ、私たちはグノーシスの案内でお墓参りを無事に済ませた。

 ユベールが育ったっていう土地であることは間違いないけど、家屋は取り壊されてしまったとグノーシスが教えてくれた。


「……襲撃の跡もあり、調査終了後誰も住まわない建物は老朽化が進んで危なかったためと聞いております」


「そう……」


 農場主さんの家族は離れた土地で暮らしていたというし、今更ここに移り住む理由はないのだろう。

 それも、曰く付きとなってしまったようなものだしね。


 でも、ユベールにとってここは特別だったはずなのだ。

 二つ並んだ墓石を前に、ユベールは大きく息を吐き出す。


「今日、どうしてもここに来たかったんだ」


「うん」


「おじさんにお礼と、お詫びと、成長した俺を見せたかった」


「うん」


 奴隷とその主、そういう関係だった。

 でもユベールの話では父のように、祖父のように接し、可愛がってくれた人だったという。


 成長した彼の姿を、きっと喜んでくれているんじゃなかろうか、と私は勝手に思う。

 そうであってくれたらいいなと願わずにはいられない。


 ユベールは墓石を前に一回袖で目元を拭う仕草を見せた。

 泣いていたかはわからない。見るのは、なんだか失礼だと思ったから。


「……それで、ここでやり直したいと思ったんだ」


「やり直す?」


「そう」


 ユベールが、振り返る。

 綺麗な銀髪が、木漏れ日を受けてキラキラしていた。


 その目は決意に漲っていて、空に似た色合いの目が私をしっかり見ていた。


「ヴィルジニア=アリアノット姫。俺の名前はユベール、魔国オルフェウスの王子です。継承権はありません。魔法と剣が使えます」


「ユベール……?」


「鳥人族で、フクロウになれます」


「ユベール」


「奴隷の子として生まれたこの身ですが、尊き聖女である御身に生涯を捧げることをお許しください」


 そっと膝をついて私に頭(こうべ)を垂れるユベール。


 そんなことをしないで。

 言うのは簡単だ。


 でもユベールは複雑な世情と、複雑な親子関係、今もまだ彼を取り巻く複雑な環境の中で私のところに来ることを選んだ。


「……歓迎します、ユベール王子。私の婚約者候補様」


 まだ選べない私は、とてもずるい子だけど。

 それでもユベールが居場所と思って安心できたら良いなと思う。


 ユベールは、私の手を取って額に当てた。

 これがどんな意味を持つのか、私はもっと深く考えていかなきゃならないのだろう。


 出会った頃のように、兄様たちに守られてただ笑っていればよかっただけの時期は過ぎ去った。

 成長した私たちは、未来を見据えて生きていかなければならない。

 互いに厄介なことを抱えて、それを支え合うために。


(……でも結局みんなかっこいいんだよなああ~~~~!)


 それが一番問題である。

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