228 フォルティス編②
結局、フォルティス様と相乗りで遠乗りとなったわけだけども……いやあ、兄様に載せてもらう時とはやっぱり違うよね。
なにがって?
緊張度合いがだよ!!
イケメンで婚約者候補で普段適正な距離を常に保つタイプのフォルティス様と! 密着なんですよこちとら!!
(……サルトス様とユベールが基本的に距離が近すぎるだけなのよねえ)
サルトス様は集団生活で上下とかってよりは精霊と近いかどうかの有無で序列はあるけど、基本的にはみんな等しく平等、みたいな感覚だから私が皇女だとしてもそのスタンスはそこまで変わらないっていうから気付くと距離が近い、みたいな?
ユベールはあれよ、幼馴染みだからね!!
ピエタス様ともまあ、近いと言えば近い?
でもあれは同じ位の背丈ってのもあるから親近感っていうか、それこそある意味で失礼かなとも思うけどまだまだお互いお子様だもんねって感じが否めないというか。
(その点、フォルティス様は)
視線だけ、上に向ける。
キリッとした彼の顔を見て思わず前を向く。やべ、かっこい。
フォルティス様は、圧倒的に婚約者四人の中で〝大人びた〟人だと思う。
年齢的にはユベールと一緒なんだけどさ……。
立ち居振る舞いも、考え方も、おそらく――フォルティス様が一番、王族らしい。
だからもし私が〝姫として〟選ぶなら、彼はよく私を支えてくれることだろう、と思う。
(それとは別にフォルティス様は獣人として、強い戦士でありたいと思う高潔な人でもあるよね)
私のことを姫として、尊重してくれていることもわかっている。
だからこそ、この人が私の〝夫になる未来〟を選んでいいものか?
戦士として大成したいなら、政治の道も学ばなければならない立ち位置でいいんだろうか?
ただでさえ、草食獣種として苦労している人なのに。
「姫?」
「え?」
「何か考え込んでいるようだったから」
「……ううん、フォルティス様は体が大きいなあと思って」
「そうか? ああいや、姫は小柄だから」
ふっと笑ったフォルティス様は、自身が母国では小柄な方だと笑っていたこともある。
でも私から見たら十分大きいからそれでいいのだ。
ちなみに私は小柄って言ってもらってるけど! まだ十才だからね!!
これから伸びるんですよ、縦に縦に!!
「……姫がおれたちを相手に、いろいろと考え、思い悩んでくれていることはみんな気付いている」
「えっ」
「今日のデートを楽しみにしてくれていたことも含めてだけどな」
ははっと笑うフォルティス様は楽しそうだ。
みんなと打ち解けるようになってから、フォルティス様は良く笑うようになった。
母国ではどうだったかわからないけど……きっとそれは素敵なことだと思う。
「姫は思い悩む必要はないんだ。おれたちのみらいは、おれたちがきちんと考える。その上で、姫と今はこうしてデートを楽しみたい。それでいいだろう?」
「フォルティス様……」
「……いつか、獣人の国を案内しよう。きっと姫が聖女とか、皇女とか……そういったもので頭を悩ませることなく、楽しめるだろうから」
フォルティス様の言葉に、私は目を瞬かせる。
ああ、私はそんなに日々不安そうに暮らしていたのだろうか。
少なくとも気負いすぎであったことは、自覚しているだけにばつが悪い。
思わず目を逸らして前を向けば――そこには綺麗な花畑が広がっていた。
「ここらでいいか」
ひらりと先に下りたフォルティス様が、私に手を差し伸べる。
その手はやっぱり私よりもずっと大きい。
「お手をどうぞ、姫」
「……ありがとう」
ひらりと私を支えて降ろしてくれたフォルティス様と、まるでダンスをしているみたいだな、なんて乙女チックなことを考えたのは内緒である。
いやどっちかっていうとこれ親子とか兄様たちに子ども扱いで下ろされたのとあんま変わらないはずなんだけどね!?
むぅ……なんでだ。
「なかなかいい色の花だな。姫の髪にも似合う」
一輪摘み取った花を私の髪に添えてくれたフォルティス様は、くそう……どう見てもかっこいいよ!!
その花を大事に持ち帰って栞にした私を、どうぞ乙女と笑ってくれい!!




