227 フォルティス編①
「フォルティス様はどの馬にします? ご自分の馬はいらっしゃらないって聞いてますけど」
今日の私たちは厩舎にいた。
そう! 乗馬デートするのだ!!
なんかこう、すごく貴族らしい感じがするよね。
いや皇女なんだけども……らしいも何もさらに上の身分なんだけどさ……。
一応教養として私も乗馬は習っている。
得意かと問われたらそうでもない。残念ながら。
乗れるよ!? お馬さんとも仲良しよ!?
でもほら、早駆けるとか伝令の人みたいにめっちゃくちゃスピード出せるかって言われたら絶対無理だし、オルクス兄様みたいに馬上で弓打って百発百中とかできないし。
いやそもそも狩りそのものができないんだけど……。
嗜み程度に学んだ方がいいのかって思った時期はあったけど、父様も兄様たちも、果ては妃たちまで反対してきたからさ……。
なんだよ、そんなに私はどんくさそうに見えるのか!?
まあそれはともかくとして、今日は乗馬デートなのだ。
フォルティス様は体を動かすのがお好きなので、野外デートだよなとは思っていたんだよね。
でも剣術の訓練をしている横で私が見学だといつもと何が違うのかわかんないし、私が一緒にやれるスポーツ(?)なんてものはないしさ……。
そこで乗馬デートってわけ!!
私ってば頭いいー!!
「……そうだな、どの馬にするか」
「どの子も気性は穏やかで、今は年齢を理由に下げましたが十分人を乗せるに足りる馬でございます」
馬番が微笑んでお馬さんの鼻先を撫でながら自信を持ってそう言ってくれるのを聞きつつ、私とフォルティス様は厩舎の中に足を踏み入れる。
いつも私は背丈の問題でポニーに乗っているけれど、フォルティス様はどうだろうか?
彼は大人と遜色ない体格を持っているので、全然どの馬でも乗れそうだけど……と視線を向けたら彼もこっちを見ていたバチッと目が合った。
「……そうだな、どの馬も機嫌良く丈夫そうだ」
「荷を載せる訓練もこなしております」
「なるほど」
(なるほど?)
わからん……いやまあ騎士たちが荷物を載せて移動するっていうことがままあるので、そういう意味では人間を乗せる以外にもいろいろと訓練が必要なんだろうなってことはわかる。
お馬さんからしたら鞍や鐙だって最初は異物でしかないもんね。
いや、農耕馬や競走馬といった種類がこの世界にもあるからそのくらいの違いはわかるけどね!
それよりも今も私にニンジンおねだりしてくるのが可愛くてたまんないけどね!!
ああーだめだよこれは今日乗せてくれる子用のおやつなんだよう、ああでもちょっとだけ、ちょっとだけなら……!
「姫」
「ひゃい!」
おっと危ない、誘惑に負けるところだったぜ……!
呼びかけに対して返答が上擦ったのは見逃してもらえたようだし、私も何事もなかったようにニッコリ笑ってフォルティス様の傍に寄った。
「この馬にしようと思う。こいつなら相乗りをしても余裕そうだ」
「あいのり……!?」
おっと、いきなり予定外のことが起きたな???
馬を並べておしゃべりしながら……と思ったけどフォルティス様は最初っから相乗りをご希望、とな……!?
いやじゃないですけど。
いやじゃないですけど!!
「そ、それではよろしくお願いします……」
「任された」
ふっと笑う姿はかっこいいなあ……ウサ耳が可愛いけど。
なんだこのギャップ男子め!!




