225 ピエタス編①
教会と美術館が所蔵する秘蔵品――宗教画の扱いは、とても難しい問題である。
教会側に言わせれば信仰のあり方や当時の人々の想いがあるのだから、今後も信仰のために教会にあるべき。
だけど修繕やそうしたものに対しての費用はやはりものすごくかかるので援助が必要なんだよ……!
対する美術館は美術品としての歴史的価値も考えたら、保存を優先して晒しっぱなしなんてあり得ない!
預けないなら修繕にお金をいただきますよ、技術料は別で。
特になくても困らないけど、あの高名な画家や彫刻家の作品が何も知らない人たちの手で劣化していくなんて……!
っていう問題で間に立つのが我ら皇族ってわけなのだ。
助成に対するあれこれや、それぞれの意見を元に貸し出しや修繕依頼の仲介をする機関を設けているので、今回のデートにはちょっと無理を言っても認めてもらえたのにはそうした理由があるのだ。
(まあ教会側としたら私が〝聖女〟だから、聖女の歴史について知りたいというなら喜んで! って感じだったけど……)
大体壁画とか、宗教画のモチーフになっているのってそうした奇跡の御業とか神々の恩恵が~……とかそういう物語だっていうからね。
勿論、これまでにそれぞれの神殿にいたという聖人、聖女の肖像画などもあるわけで。
ちなみにシアニル兄様も芸術家なので最適だと思うだろうけど、あの人は自分の好きな創作がしたいのであって、仲介とかめんどくさいからしたくないなあ……っていうタイプなので担当は別なのだ。
芸術は好きじゃないとか言いながら真面目に取り組んでいるのは、ヴェル兄様である。
弟の作品を守りたいし、妻が美術館巡り好きだからね! という理由だそうな。
大変ヴェル兄様らしいと思った。
妹としては、満点のお兄ちゃんです。
相変わらず人見知りなのか眉間に皺を寄せて対応するから毎度美術館の館長や教会の人たちが怖がっている……って話を聞くけどね!
「どんなのがあるんだろう、ピエタス様は知っている?」
「いいえ。……だからぼくも、ドキドキします」
まず、美術館の地下室へ。
湿気などをコントロールするための魔法がかかっている修繕部屋を見学した。
そこには何世紀も前の芸術家が残したという、大きなキャンパスがあった。
仰々しい行列が目指す先には、随分とトゲトゲした山が描かれている。
そこから光が発せられているような絵だったから……多分、ヴァノ聖国の、あの山なんだと思う。
私たちは時間の許す限り、修繕中のものも含めて美術館に収められている教会の所蔵していた宗教画や、当時のことをモチーフにしたという彫像、それから貴族家が個人的に収集していたというようなものまで見て回った。
どれもこれも美術品としては確かに一級品なのだろうけれど、私にはいまいちわからんかったな……。
ピエタス様はとっても目を輝かせていたので、よかったんだと思う。
(……とりあえず、人々の暮らしと宗教が結びついていたってことは、よくわかった)
でも結局、ここにある作品たちでは寵児や、奇跡に関すること……そして聖女や聖人を狙った事件のあらましなどは見当たらなかった。
(まあそりゃそうか、都合の悪い話は残しづらいよね……)
どっかには残っているのかもしれないけども。
混沌期だったかなんか、歴史の授業で宗教画などを燃やす暴挙に出た人がいるって習った気もする。
今世でもやっぱり歴史系は苦手なんだよなあ!
「……あれっ、この花の絵……」
なんてことはない、質素な瓶に一輪の花が挿してある。
そんな静止画だ。
パッと見てすごく素敵! とか色使いが……とかそういうビビッときたわけではない(そもそも私は芸術に疎いし)。
ただこの花が、メディーテー様と話をした時の花に似ているなって思った。
それだけだ。
「可愛らしい花ですね」
「ピエタス様」
夢中になって絵を見ていたはずのピエタス様が、いつの間にか私の隣にいた。
ちゃんと私のことも見てくれていたらしい。
おっと恥ずかしいな……興味ないのバレちゃったかな?
いや、綺麗なものを見るのは楽しいから好きだよ!
ただそれがどういう経歴でどういう技術で……とかそっちに興味がないだけ!!
ちなみに教会由来の宝飾品とかもあった。
なんでも何百年前とかは権威がどうちゃらこうちゃらで、豪奢に装って儀式をうんちゃらで……って話だった。
私の感想?
うん、あれつけて儀式とか超重そうだなって思いました!




