第21話 従士のクマ退治
「なるほど、ありがとうございます」
かしこまって礼を述べておく。
「ところでリーシア殿は、これまでどんな冒険をしてきたのか。グリフォンをどうやって手懐けてきたのか」
こうした饗応を受けている以上は、こうした土産話をするのも客の務めだ。ある意味ではそのために領主は楽師を雇っているとも言える。特に、「塔の魔女」と行動を共にする「グリフォン騎士」なんていうのは、彼らの格好の酒のつまみだろう。
そこでリーシアは派手になりすぎないように気をつけながら、これまでのことを話していく。
幼い頃から村の力自慢に打ち勝ってきたこと、それを認められて騎士への出仕ができたこと、熊の単独討伐、コボルト討伐、騎士叙任。
この辺りまで話すと、すでに皆食事を終えて夜も更けてきていた。特にこの辺りの話については師匠との出会う前なので、師匠も含めて皆が聞き入っている。そうは言っても、リーシアとしては正直に言ってあまり武勇伝という気はしていない。
「皆さん感心して聞き入ってくださるのはありがたいのですが、この程度の話ならば、そこらの騎士なら誰でも語れる程度の話で、珍しくはないのではないですか」
と聞いてみた。
「とはいえ、リーシア殿。そもそも五つかそこらで村の力自慢を打ち倒して、騎士への出仕の話が出ること自体があまりある話ではないのですよ」とは奥方。
「そうなのですか。私が出仕した騎士、リチャード様のところには結構な人数の子供が集まっていたので、そういうのが普通なのかと思ってました。言われてみればこちらの方はあまり従士見習いがいませんね。私もまだ、イーダ一人だけです」
「あまり騎士だの従士だのがたくさんいても、食べ物が少ないようでは食べていけなくなるからな。ユーダリルでも正騎士はサムソンも含めて5人いるが、皆、支城の方に詰めていて、ユーダリル城では従騎士、従士しかいない」
「確かに、リチャード様の配下も正騎士は2名でした。城詰でしたが、リチャード様は三つの領地を治めておりましたので、たくさんの戦力が必要だったのでしょう」
「ほう、リチャードというのは2名の騎士を従えていたのか。なかなかの戦力だな」
「私ごときが熊狩に動員されるほどですので、周囲の脅威がそれだけ大きかったのでしょう」
「それにしても、10にも満たない子供が一人でクマを倒すとはな」
「得物が槍だったのが幸いしました。剣では無理だったでしょう。熊の攻撃が届かない距離から一方的に攻撃できましたので」
「それでもだ。そんな歳からグリフォン騎士の片鱗を感じるよ」
「お褒めいただきありがとうございます」
「さてそろそろ、宴もお開きにしようか。明日もすまないが、武勇伝を聞かせてもらうよ」
「ご馳走になります」
そう言ってリーシアはヨエル公の先に立って起立し、首を垂れる。
客間は男女それぞれに一間を案内され、藁床に眠った。




