第19話 自己紹介
「遠くユーダリルまで、よくお越しくださった。そちらは?」
「私は魔導士、ザオベルです。よろしく」
「ザオベル様?はて、どこかで聞いたような。」
「ザオベル様は私の魔道の師匠で、吟遊詩人の歌う、塔の魔女です」
「おお!あの龍退治をした!?しかし、いや、まさか!詩人の歌を聞いたのは子供の頃ですが、失礼だがザオベル様は私と同年代か年下にさえ見えますぞ!?」
「ま、まあ、あまり老けないたちなんだ」
と、珍しく師匠が照れてもじもじしている。そこで明らかにヨエル様より年嵩のフィルさんが、
「恐れながら、我が師匠は私が幼少の頃弟子入りした時から、全く老いておりませんので」と暴露する。
リーシアも改めて「師匠はある意味化け物だなぁ」と思った。リーシアと一緒に行動するようになってもう、3年ほどになるけれども、リーシアやカルルの成長に比べても、師匠は全然変わらない。言っては何だけれども、フィルさんの方が余程年取った感じがある。もちろん、キューちゃんの変化の方が大きいけれど。
師匠は何だかそういう、時間の流れの外にいるような気がしてならない。リーシアが歳をとって老婆になっても、師匠だけは今のままでいると思う。
「そうなんですか、それはまた」
「そしてこちらが私の個人的な弟子のオルクス、スールズ。こちらが私の従士、イーダです」
それぞれを紹介して挨拶させる。
「フィレベルク殿は私の直接的な関係者というわけではなく、あくまで魔導士ザオベル様の徒弟となります。文士としてお手伝いいただくことも多々あります」
「よろしくお願いします」
「うむ。とはいえここで立ち話も疲れるだろう。宴席を設けてある。参られよ」
ヨエル様が踵を返して歩いていくので、リーシアも一行に頷いて後についていく。どうやらリーシアは広間だと思っていた部屋だが、ただの謁見の間だったようだ。先ほどの部屋より二回りほど広い部屋に通された。そこは中央に大きなテーブルがいくつか集めて据えられていた。
「おお!」
つい驚きが口をついたリーシアを横目で見て、ヨエル公は満足気だ。周囲を見渡すと壁には騎士物語のタピストリ、ヨエル公の物らしい盾、床には麦わらが敷いてある。勧められるまま着席すれば上座にはヨエル公と一緒に貴婦人が着席する。この方がおそらくヨエル公の奥方なんだろう。




