第18話 ユーダリル領主
内堀の両脇に立つ待機所にいる衛士が出てきて、リーシアの前で敬礼をする。リーシアも横柄にはならないように気をつけながら返礼をする。
丁寧に書類を提示して、人員の一人一人を見せる。さすがにキューちゃんについてはギョッとするが、取り乱したりはしないのは流石だたった。
すぐに館に人が走り、知らせがいく。すぐに戻ってきて、
「お待ちしておりました。主が会うとのことですのでご案内いたします」と、先に立って歩き出す。
「ま、待ってください。グリフォンやワゴンまでお館に上がるわけにもいきませんでしょう」と止める。
「そ、そうですね。グリフォンというのは初めてですが、厩舎でも大丈夫でしょうか」
「キューちゃんは大丈夫ですよ。ここまでこのロバと一緒に旅してきたぐらい、安心できます。むしろ、お館の伝統的に、グリフォンやオルクスが大丈夫なのかをお伺いしたいのですが」
「えっ!?オルクス?」
「まあオルクスとはいっても、私の弟子でありますし、これまでに何かの問題を起こしたこともありません。普通の従士と同様に扱っていただければとは思いますが」
「なるほど、これまでにオルクスを迎えたことはありませんが、そういうことであるならお迎えするのに問題はないかと思われます。そちらの幼子も含めて、おいでください。」と館に案内された。
館の中では行き交う人が皆、足を止めてはリーシア一行に首を垂れて挨拶をしていった。
案内された広間に、立ち止まってお辞儀をしてから、顔を上げて名乗る。
「ミュルクヴィズのグリフォン騎士リーシア、お招きいただきありがとうございます」
「おお、入ってください」と、上座の方から声がかかる。意外な気持ちで室内に進んでいく。呼びだてした騎士よりも先に城主が広間で待ち構えているなんて、リーシアの経験ではこれまでなかった。
「私はこのユーダリルの領主をしてます、ヨエルです」
位置についてリーシアが跪く前に城主と名乗る人が座席から立ち上がり、段から降りながら手を差し出してくる。この手を取らないのは流石に失礼すぎるので、両手を持って握る。
「あ、ありがとうございます。リーシアです。こ、この度はお招きいただきありがとうございます」
こんなに近くに降りてきてくれる領主なんてと、リーシアは感激しているけれど、実のところリーシアが自分自身、領主だったことはすっかり忘れていた。
ヨエルは騎士として絶頂期ぐらいの年代、20代後半ぐらいに見え、豊かな髭に覆われた表情がにこやかだったけれども、どうにも目が笑っていないように、リーシアには思えた。




