女神1
「これで満足ですか?」
エリの呆れたような声で説明は締めくくられた。
共和国の真実が知りたいと、そう尋ねる事ができる相手など俺にはほとんどいない。
その数少ない例外が、教会に属するエリ・スチュワートだった。
「私は政治屋ではないのですよ。」
「だから聞いたんじゃないか。一番聞きたい答えをくれそうな。」
「はるなは…。」
「…。はるなはなんだかおかしくなった…。柳川の事、かなり拘ってるみたいで。」
考えてみれば、意気消沈していた彼女が元気になったのも、柳川のことを聞いたからだった。
「ヤナガワは昔はるなと共に戦っていた。だとすればー
「柳川に何があるって言うんだ。」
かつての仲間、それがなんで敵対することになったんだ。
敵対するとして、あそこまで拘る理由は一体なんだ。
「はるなは話さないのでしよう?でしたらもう一人に聞くしかありませんね。」
「そりゃ…難題だね。」
聞きたい話は終わった。あまり邪魔をする前にお暇するとしよう。
「ありがとう、エリ。でも良かったのか?こんな戦争の引き金に優しくして。」
自嘲した礼に、エリは更なる嘲笑で返してきた。
「神の前に、勇者も人殺しも関係ありますか?」
「は、ははっ。」
「共和国に来た時点で、そういう覚悟はしてきたつもりです。今更そんなこと、懺悔する必要もありませんよ。」
「エリは…知ってて共和国に?」
いや、それを聞くなら望んで…と尋ねるべきか。
「共和国は元から教会との仲が悪かったですからね。志望する人間が少なかったんです。」
「だから代わりに?」
俺の相槌のような問いに…エリは少し考え込んだ。
「代わり…というのは少し違う気がします。私はただ神の奇跡を差し伸べたかった。それを得難い人々がいるというのならそこに行こうと、それだけだった。」
エリが助けだったのは教会の仲間ではなく、共和国の人々だった…ということか。
「神様か…。そういや、俺って教会が信じる神様のこと全然知らないな。」
はぁ、とエリがため息をついた。
「勇者様が言うと台無しですね。全く。」
そう呆れながら、エリはしかし少し嬉しそうに語ってくれた。
「女神エリスは我々を見守ってくださる存在です。ときに奇跡を起こし、我々を救ってくださいました。その最たる例が、滅びを待つ我々に勇者様を授けてくださった事なのですが。」
ふぇ、そうなの?でも俺が召喚されたときにいたのって共和国の術者だけだったような…。いや、この場合の勇者は百年前…柳川のことか。
「そうですね…。それこそ神であればあなたの問への答えも持ち合わせているかもしれませんね。」
「ははっ。良いアイデアだな。」
「本当にやるのですか?」
エリの訝しげな問いに俺は大いに頷いた。
「ま、俺も勇者なんだし。一回ぐらい神様に質問する権利ぐらいはあるだろ。」
そもそも神が存在してるとあまり信じてもないし…とはエリには言えないが。
「ではご自由にどうぞ。」
礼拝堂に着いたところで、エリはさっさと自分の祈りを始める。
「え、ちょっ。エリ、俺祈り方の作法とか知らないんだけど。」
何せ神様の名前だって今知ったのだ。
「神に祈りを捧げるのに作法などいりません。ただ、祈ればいいのです。」
そういって、エリは両手を組んで目を閉じた。
その様は正にシスターって感じだったが。
「ううむ。」
仕方ないので見様見真似で祈りのポーズを取る。
と言っても、俺のは祈りというより問いかけだろうが。
どうして、どうして…どうして!
「それをお答えするにはまず順を追ってお話しなくてはなりませんね。」
声に振り返ると、そこにはー




