暗殺者0
「え?」
柳川の体から剣が生えた。
いや、違う。後ろから剣を刺された?
血が吹き出した。ってことはそうなんだろう。
一体誰が?アリス…?
いつの間にか柳川の後ろにいたアリスが柳川の体に、胴体を貫くよう剣を突き刺していた。
状況を把握するだけで時間がかかる。というか把握しきれてなどいない。
何故アリスが?どうやって後ろに?あんなにあっさりと柳川の身体を貫いて。
唖然とする中、柳川が両手の剣を落とす音だけが響いた。
「…。私が…憎いか?」
柳川が少し振り向き、剣が刺さっているせいかほとんど首しか動いていない、右手が少し動いた気がした。
そんな中柳川が呟いたのはあまりに場違いで意味不明な質問だった。
「別に。あなたはご主人様の敵だから。」
アリスは淡々と返事をする。それは、その問が場違いであると理解できていないからだ。
答えたのは嘘をついたり黙ったりすることを知らないからだ。
聞かれたら答える、そんなシンプルな思考故。
「そうか…。」
柳川が胸に刺さった剣を掴む。
「その理由では殺されてやれんな!」
叫びながら剣を引き抜いた!開いた傷口からさらに血が吹き出す。
「エリスー!!」
そして、叫びと共に柳川の周りに優しい光が溢れ出す。
「神聖術!?」
「まさか!?」
確かにそれは神聖術の光だった。だがあんな眩しい光など見たことがない。
光はすぐに収まった。そして、当たり前のように、柳川から吹き出す血は止まっていた。
「怪我はさせたくない。下がっててくれないか?」
自分を突き刺したにも関わらず、柳川はアリスに優しく告げて、俺に向き直る。
「…。アリス、離れるんだ。」
動かなかったアリスが俺の言葉に頷き、姿を消す。
本当に、比喩ではなく、掻き消えるように姿が見えなくなった。
恐らくああやって柳川に近付いていたのだろう。
「ありがとう。」
「…別に。俺一人でも勝てるからな。」
素直な礼が何となく気恥ずかしく、そう返してしまった。
「ああ、そうだな…。しかし…負けてやるわけにはいかないんだ。」
そう笑って、柳川は再び剣を構える。俺も再び構えを直す。
…確かに神聖術を使えるというのは厄介だ。
だがそれでも、俺の有利は揺るいでいない。
なのに
目の前の男が、どこまでも、大きく、迫る壁のように見えた。




