聖剣6
「降伏しろ。」
そうは言ったが、本音を言うならば絶対に降伏なんてしてほしくなかった。
あの柳川を…今ならーー倒せる。
「…。聖剣か…。あるとは聞いていたが…。」
柳川が立ち上がる。動きからしてそこまでのダメージはないらしい。
「少しばかり力を得たからって、随分上から言ってくれるじゃないか。」
そして、柳川は構えをとる。俺が望んだとおりに。
「俺には勝てないぞ。」
口にすることで充足感が体を巡る。
そう、今の俺はー
「どうかな?」
強い。
柳川に斬りかかる。聖剣の力を借りた爆発的な加速で、柳川との距離を詰める。
柳川は逃げるように後ろに飛ぶが、俺のほうが速い。
追いついた俺がまだ飛んでいる柳川を斬りつける。
柳川は何とか剣で防御するが呆気なくふっ飛ばされる。
さっきは加減がわからなかったが、さっきの打ち合いで力加減は大体把握している。
だが、今度の柳川は先程違い地面を転がず綺麗に受け身をとって立て直した。
上手いな、なんて呑気に思いながらその柳川を更に追いかける。
呑気な、余裕な動きだが、その速度は柳川には驚異的に映っているだろう。
ふっ飛ばされた次の瞬間には追いつかれているのだ。
上段からの振り降ろし。地面に立っているのが仇だ。先程までのように衝撃が逃げないのだから。
柳川が両手の剣を交差させて防御の構えをとる。
選択ミスだ。防げるわけがないのだからダメージを承知で横か後ろに逃げるべきだった。
俺の剣が柳川の剣に当たった瞬間、柳川の剣がグラッと揺れた。
「え?」
重心を傾けながら、剣を反らしたのだ。
その結果、柳川の体と俺の剣は反対方向に動き、剣が地面を抉る。
受け流された!苛立ちと共に地面に刺さった剣がを再度柳川に、今度は斜め下から斬りつける。
だが、今度も柳川は両手の剣を振って、ちょうど俺と鏡合わせになるような動きで、剣を当てた。
まるで回るコマ同士が弾かれるように柳川の体が吹っ飛ぶ。いや、飛ぶことで衝撃を逃している。
その証拠に柳川は受け身どころか綺麗に着地をしている。
同様の衝撃が俺にもあったわけだが…聖剣の力がある俺にとってそれは足が地面から離れるほどの衝撃ではない。
更に募る苛立ちと共に再び柳川に肉薄し、剣を振るう。
「調子に!」
柳川も苛立ったように剣を振るう。
いける。
先程までのような受け流す動きではない。正面から打ち合う方向だ。
これまでの打ち合いでパワーは、いや、全てこちらが勝っているのはわかっているはず。何が狙いだ?
いや、なんであろうと今の俺なら押し潰せる。
剣がぶつかる。その瞬間二人の剣はまるで磁石のように弾かれた。
そして、柳川の剣がバラバラに砕ける。
「なっ!」
聖剣を持っている俺を押し返した!?
いや、まだだ。
理由はともかく柳川の剣は一本無くなった。今なら行ける。
もう一度柳川に斬りかかる。もう一本の剣が同じようにぶつかり、そして弾かれる。
わかっていれば大した衝撃でもない。普通に打ち合うのと同レベルだ。
聖剣を使ってから打ち合うということが無かったので少し面食らったが、あの奇妙な技を使ってなお有利はこちらだ。
しかも柳川の手にはもう剣がない。
「終わりだ!」
殺しはしない。だが腕の一本ぐらいは覚悟してもらうとしよう。
だが、三撃目も弾かれた。三本目の剣によって。
「…忘れてたよ。術式なんだったな、その剣。」
刃の砕けた柄から、新たな刃が生えてくる。
柳川がジリジリと下がり、一度距離を取る。
俺もそれを見逃す。お互い仕切り直しが必要だった。
なるほど、つまり柳川が術式の剣を使っていたのはそれが理由ということか。
刃を破壊する代わりに強力な一撃を放てる。
普通の剣ならトドメの一撃ぐらいにしか使えないが、術式の刃なら何度でも使える。
確かに良い技だ。だが…。
爆発的な衝撃、それに刃の生成…あの技は魔力の消費が激しいんじゃないか?
そりゃ、はるなの天照なんかほどではないだろうが、俺が普通に剣を振るうのに使う魔力からすればかなりの消耗なのではないだろうか。
加えて、今の俺には自分だけではなく聖剣の魔力もある。
消費的にも貯蔵量的にも、魔力は圧倒しているはず。
なら、このまま打ち合って柳川の根負けを狙う。
「ふふっ。」
思わず笑みが溢れる。
状況は未だにこちらが圧倒的有利だ。
「余裕だな。」
そんな俺を見て、柳川が言う。
「こんだけ有利だと流石にな。」
隠すことなく言ってのける。幾分か挑発も込めて。
「わからないな。確かにパワーもスピードも魔力もお前の方が上だろう。だが、傷つけられないわけじゃない。傷つけられるなら、殺すチャンスだってあると思うんだが。」
「本気で言ってるのか?今の俺に何撃も打ち込んで倒すなんて、そんなことできると本気で思ってるのか?」
「…。」
「傲慢だな、柳川。それがお前の敗因だよ。」
剣を構え、距離を詰めようとする。
柳川が剣を構え、距離を取ろうとする。
互いが動き出す、その一瞬手前に
柳川の体から、剣が生えた。




