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聖剣3

聖剣を持つ勇者という切り札を得たセルレイン共和国は、すぐさまレーゼル王国に進軍した。

とはいえ、セルレインとレーゼルは直接的に土地を接してはいない。

今回の進軍は、両国中間に位置するバルドという小国にむけてのものだ。

一応はバルドは国としての体を持っているが、実態はレーゼル王国の傀儡であり、セルレインを牽制するためにわざと国を切り離しただけの領地みたいなものだった。

今までは目の上のたんこぶで済んでいたが、開戦するとなればバルドは潰しておかなくてはならない敵になる。

「バルドは小国です。勇者様がいればすぐにかたがつきますよ。」

とはリーランドの談。

レーゼルの奴らが来たらどうすんだ。」

「それはないでしょう。迎え撃つには我らに先んじてバルドにいる必要があります。しかし、バルドまでは我らのほうが近い。」

なるほど、距離的に間に合わないということか。

「それに、レーゼルとしてはバルドを守るより、捨て駒にしたほうが色々と都合が良いはずです。」

レーゼルとセルレインが戦争になる、つまり互いの領土を奪い合う段階になると、傀儡とはいえ間に他国があるのは面倒ということか。

それならいっそ、セルレインに一度奪わせて、それからセルレインに勝つ。

そうすればバルドは有効的な他国ではなく、自国の領土になる。

「…あんまり好きじゃないな。そういうのは。」


バルドへの進行開始は速やかだったが、その行軍は速いとは言い難かった。

今後レーゼルとの戦いが控えている以上、バルド戦が終わってすぐに兵を引き上げるのは愚策だし、今後を見据えた拠点製作が必要だった。

もちろん、砦の制作なんかすぐにできる訳がないので、バルドのものを流用するつもりだ。

しかし、補修や食料、武器なんかを運ぶ必要があり、進行軍はかなりの大部隊になってしまった。

で、今回の行軍にはもちろんはるなもついてきてる。

そうなると、一つ問題なのは…。

「おかえりなさいませ、御主人様。」


行軍の打ち合わせが終わり、自分の馬車に戻ってくると、メイド服のアリスが出迎えてくれた。

そう、アリスが問題だった。

「ああ、ただいま。アリス。」

言葉の拙さも無くなり、アリスはもう普通の人となんら変わりない振る舞いができるようになった。

「お魚ですか?鳥ですか?それともお野菜ですか?」

「まだ晩御飯には早いよ。」

なんか間違えたお約束を口にするアリスの頭をそっと撫でる。

最近は触れられる怖さもなくなって、嬉しそうに撫でられてくれる。

こんな風にだいぶ慣れてくれたとはいえ、まだ他の人達に預けるには不安が残る。

というわけで連れてくるしかなかったのだ。

「おかえりなさい、純一。」

さらにもう一人、はるなからも声が届く。

「ああ、ただいま。」

俺達勇者と聖女、それにアリスは専用の馬車で移動している。

国の重要人物を歩かせるわけには行かないということらしいが、実際のところ、多分あまり他の人達と話させたくないのではないかと俺は思っている。

多分、セルレイン共和国は俺達のことをあまり信用していない。

いきなり現れた異世界人を信用しろと言う方が無理なのはわかるが。

でも、ともに戦ってきたのだから少しは信じてほしかった…。

「それで、どうだった?」

「ああ、うん。やっぱりレーゼル…柳川は来ないだろうって。」

「そう、洋司がいないのなら事は簡単に済むわね。」

はるなが俺の傍らの聖剣をちらりと見る。

確かに、今の俺に対抗できる可能性があるのは柳川だけだ。

それがいないのなら、戦いは楽に進む。


全てが順調だ。新しい力は手に入れた、はるなも元に戻ってくれた。

強いて言えば

「…ヨウジ?」

アリスがもっと自発的になってくれたら、嬉しいんだけどな。

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