偽りの勇者0
「では…。最後の一人ですね。」
リーランドが少し改まる。
当然だろう、リーランドにとって彼はまさに英雄なのだ。
「まず、確認だ。ハルナ、あいつは100年前の勇者なんだな?」
キョウカが確認をはるなに取る。
そう。
「ええ。キョウカ。洋司…柳川洋司は100年前に私とこの世界に来た、魔王を倒した勇者よ。」
彼も、彼女もこの世界を救った勇者達なのだ。
「だとすれば、彼の能力は、聖女様が一番ご存知と言うことですか?」
「…。まぁ、そうね。とはいえ、あんな情けない姿とは思わなかったけれど。」
「情けない?」
何のことだ?俺が見てきたのは圧倒的な強さ…特に防御面に関しては化け物じみた超人だったが。
「聖剣のない洋司は本来の力の半分も出せていないわ。」
「しかし…勇者様はその人物に敗北したのですよね…?キョウカと二人がかりで。」
「そりゃ。あなた達ぐらいなら聖剣が無くてもどうにでもなるでしょうけど。」
「ぐ…ぐらい?」
「ぐらいだと?」
はるなの不穏当な言い方にキョウカは勿論、俺だってムッとなる。
「はるな、俺だってもう相当な訓練は積んだんだ。」
「勇者様の仰るとおりですよ。アインハルトは言うに及ばず、いまや勇者様は力、技、共に有数の超人です。」
「その辺りは私も驚いているのだけれど…。なんにしても、洋司には遠く及ばない。そうでしょ?」
「…。」
確かに…。結論としてはそうなる。洋司、それにはるなが持つ魔力は桁が違う。
100年前、魔王を倒した勇者達としての貫禄だ。
「けっ…。剣と言えば、あいつ妙な剣を使ってたな。」
「あ、ああ。氷の剣を出して使ってたな。」
「そうね…。あんなの前は使ってなかったけど…。大方使える剣が無かったから自分で作ることにしたんでしょうね。」
使える剣が…無い?
「なぁ、はるな。さっきからやたら剣が剣がって、柳川の持つ剣って何かあるのか?」
「洋司は剣先から魔力を放出するのよ。だから強度の低い剣は魔力に耐えきれず壊れるの。」
剣から魔力を…?
「別にそんな凄いことじゃないわ。ただ、そういうスタイルってだけ。」
そうなのか…?まぁ、確かに式具なんかも、紙や木で作ると魔力に耐えきれず壊れるらしいが…。
「レーゼルではろくに魔力鋼も無いと…?そんなことは無いと思うのですが。」
リーランドが口を挟む。低級な式具は普通の金属だが、超人が使う物は魔力に強く、魔力を通しやすい魔力鋼と呼ばれる物が使われる。
俺が使ってる剣もそうだ。普通の剣より、硬いし軽い。デメリットは値段ぐらいのもんだが、国単位で持てないとは考え難いだろう。
「はぁ…。ジュンイチ、ファイアボール頂戴。」
呆れ顔のはるなに式具を渡す。
はるなはおもむろに式具に魔力を込めたかと思うとーいや、込めるとかいう量の魔力じゃないー式具が破裂した。
「…。」
「こういうことよ。」
唖然とする俺達にはるなが呆れ顔のまま言った。
「つまり…今の柳川は本気じゃない…。本気を出せない?」
「そうね、私も対策はしてきたけど…。
もし、彼が全力を出したら、私は負けるわ。」




