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村瀬しなの0

「それでは、作戦会議を始めたいと思います。」

リーランドの言葉で話し合いが始まる。

いつものセルレイン共和国の協議ではあるが、今回のメインは評議員ではなく、俺達戦士だ。

「現状、我らがセルレインが保有する一線級の超人は勇者様であるジュンイチ様、アインハルトの剣士キョウカ、そして聖女様であらせられるハルナ様です。」

「あれ?リーランドは?」

俺の問いかけにリーランドは肩をすくめる。

「残念ですが、私ではもはや力不足です。お役には立てないでしょう。」

「ま、技が活きるのはある程度魔力が拮抗してる時だ。こいつには無理だな。」

キョウカがバッサリと切り捨てる。

「対するレーゼル王国で確認されている超人も三人です。」

柳川洋司、村瀬しなの、柳川かんな、の三人か。

「実際の所、どうなのですか、勇者様?戦ってみた感想は。」

このリーランドの問いかけこそが今回の議題だ。

「まず、村瀬しなのさん…だけど、彼女からはあんまりプレッシャーは感じなかったな。確かに強い魔力だったけど…。」

「明らかに戦い慣れてなかったわね。確かに強い魔力だったけど。」

「それがあいつの問題だろうが。なんだあの魔力量は!」

俺とはるなの感想に対してキョウカがテーブルを叩いて怒鳴る。

「アタシはずっと術式攻撃受けて一歩も近寄れなかったんだぞ!」

それは異様だ。確かにキョウカは刀で斬るしか能がない。

が、それ故に刀で斬る事に秀でている。それには勿論、斬る距離に近付く事も含まれている。

前に戦ったときキョウカに切られた腕が疼く。

迫る術式を避けながら近寄ってくるキョウカは正に化け物だった。

「何があったんだよ。あんな素人丸出しの撃つ術式なんて避けたら終わりだろ?」

いくら魔力が多くても、あれではキョウカを正確に狙って撃つなんて無理だろう。

「辺り一体氷漬けにしやがるのにどうやって避けろって言うんだよ!」

言われてみて、あの戦いの時、キョウカの周りの地面が凍りついていたのを思い出す。

「魔力に物を言わせた爆撃ね。私も戦いに慣れるまではやってたわ。」

はるながうんうんと首を縦に降る。

「あー、聖女様。どういうことか説明頂いても?」

状況が理解できていないリーランドが尋ねる。

「リーランドさん、多くの場合同じ超人でも、戦士型と術者型では反応速度に大きな差があるわ。同レベルの戦いの場合、術者が戦士型に術式を当てるのは困難だわ。」

「それはそうです。我々のような戦士は魔力の大部分を身体機能の向上に用いているのですから。術式に魔力を割いている術者とは条件が違います。」

「ええ。だから、術者は速射や連携、遠距離攻撃のアドバンテージなんかを武器に戦うのだけれど…。やはり戦闘面に関する技術で戦士型を凌ぐのは難しいところだわ。」

その通りだ。だからこその俺達の存在でもある。

大規模戦では遠距離攻撃を行える術者が一番の脅威だ。

だが、その術者は同レベルの戦士に負ける。

そして、戦士では大量の兵士を処理する力が無い。

いわばこの三すくみこそがこの世界での兵法の基礎なのだ。


「だからね、こう考えたのよ。相手が回避できない程広範囲を一気に攻撃すれば、技術なんか関係なく当てられるって。」


…。

「は?」

「だからね?術式を撃ってから着弾するまで、相手が五歩動けるとするでしょ?じゃあ相手の半径五歩以内全部を攻撃すれば絶対に攻撃が当たるじゃない。」

「あー…。まぁ…。その…。なんです…。確かに広範囲術式というのは一つの手ですが…。その場合は防御に徹することで凌ぐのではないでしょうか…。」

リーランドが混乱しながらも反論をする。

しかしやはり混乱している。ツッコまなくてはならないのはそこではない。

「そんなの、それ以上の火力で攻めたらいいだけじゃない。」

はるなはきょとんとした顔で言い返した。

かわいい。言ってることは完全な脳筋なのに。

「けっ。実際にやられたら何も言えねぇけどな。」

キョウカが愚痴る。そうだった、実際村瀬さんはそれをやったのだ。

「まぁ、私としてはもう一つの方が気になるけれど。」

「もう一つ?」

「遠隔発生型の術式を使っていたことよ。」

曰く

俺達が普段使っている術式というのは機能をかなり制限した物なのだそうだ。

例えばファイアボールは、手元に発生させた炎の球を正面に放つ術式だ。

だが、本来ならそれを槍の形に変えたり、手元では無く相手の目の前に発生させたり、自在に軌道を変えたりできるはずだ。

何故それが出来ないかというと術式がそれを制限しているからであり、

術式がそれを制限しているのは、術を放つ際の変数を減らす為だ。

戦闘中に、形状はこうで、相手との距離がどれだけで、軌道はーなんていちいち全て考えていられない。それぐらいなら最初から決まった条件にしておいて、使う側がそれに合わせたほうが遥かに効率が良い。

しかし、村瀬しなのはそれをしなかった。

はるなを一瞬包み込んだ氷の檻、あれが良い例だ。

あれはいきなりはるなの足元に発生した。つまり、村瀬さんはあの戦いの場で自分とはるなの距離を術式に織り込んで発動させたという事になる。

「頭が良いのは知っていたけれど、よくもまぁこの短期間でそこまで極めたものだわ。」

「つまり、彼女は戦闘こそ慣れていないものの一流の術者であると?」

「そうなるわね。」

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