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共和国2

術式とは、元の世界で言うところの科学技術であり、貴重な技術であり、情報である。

当然、研究者達は自らの研究結果を書物に、あるいは弟子達に残し、後世に残してきた。

セルレイン共和国においてもそれは同じであり、首都中央の城塞には術式に関する書物をまとめた大図書室が存在する。

そこは言わば知識の武器庫であり、整然と本が並べられていた…いつもなら。


今、俺の目の前には室内を所狭しと散りばめられた本が散乱していた。

詰まるところ、散らかっていた。

「で?はるな。これはどういうこと?」

俺はその中央で立ちながら本を眺めては投げ捨て、次の本を開いているはるなに尋ねた。

「ああ。純一。そこの本を取って。」

はるなは俺の質問を無視して来た。

そこって…どこだよ…。

辺りには本が散乱しているため、はるなが指定した本がどれかわからない。

「ああ、いいわ。」

と、はるなが近づいてきて床の本の一冊を拾う。

そして、中身をパラパラと流し見すると、また放り投げる。

「なぁ、はるな。」

再度の呼びかけに、ようやくはるなは溜息をついて作業を止めてくれた。


「師匠の術式?」

「ええ。私の師匠、術式に関する天才。アルフが残した…恐らく最高位術式。」

「それが…セルレインに?」

「…ええ。隠されていた。暗号化までしてね。」

図書室を荒らすのを一旦止めてくれたはるなは、俺といつもの中庭に来ていた。

さすがに寝転んだりはしていないが、草の上に座って話をしてくれた。

曰く、この城にある隠し部屋に一つの術式陣が残っていたそうだ。

その術式陣を残した人の名はアルフ。かつて世界を救った勇者一行のうちの一人で、はるなに術式を教えた師匠だそうだ。

「何でそんなものが…。暗号って、そこまでする必要あるの?」

「…アルフが作った術式よ。どんな力を秘めてるかわかったものじゃないわ。」

「んな大袈裟な…。ただの術なんでしょ?」

「天照より強力なのは確実でしょうね。」

「………。そりゃ…核兵器並みだ…。」

術者アルフが、その術式を隠した理由は分かった。

だが、もう一つわからないのは。

「なんでセルレインがそれを隠すんだよ。はるなに残した術式なんだろ?」

残された術式には日本語で「ワガサイアイノ弟子ニオクル」と書かれていたそうだ。

「『我が最愛の弟子に贈る』…ね。」

「はるなに残したものならはるなに渡すのが自然じゃないか。態々隠すものでもー

「あるでしょ。敵かも知れない人間に、強力な術式を与える訳がないわ。」

「敵って…はるなは百年前にも世界を救ってるんだろ?」

「そうね。」

「だったらー

「私は世界を救ったのよ。セルレインを救ったわけじゃない。」

それは…。

「同じことじゃないか…。」

俺の呟きには答えずはるなは話は終わりとばかりに立ち上がった。

「考えなさい、純一。戦うつもりなら…勇者の名前を背負うつもりなら。」

立ち去るはるなを見届けてから、結局俺は草の上に寝転んだ。

「…なんで勇者の名前が今出るんだよ…。」




「私に術式を残して…どういうつもりなの…。戦えって言うの?洋司と。どうして…。どうしてこんなことに…。教えてよ、アルフ。」

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