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外伝 クッセルの勇者

「おっらぁぁ!」

気合い共に剣を振り抜く。迫っていた魔物の爪が剣とぶつかり、辺りに衝撃と火花を撒き散らす。

その魔物は5mはあろうかという巨体だったが、勢いに負け体制を崩したのは魔物の方だ。そして、その致命的な隙を逃すはずもない。

「アインハルト流、抜刀術。」

ソウヤの必殺の一閃が魔物の胴体を真っ二つに切り飛ばす。

そんなソウヤを別の魔物が狙う。魔力を孕んだ泥のようなものが幾つもソウヤに降り注ぐ。

「ソウヤ!」

俺の声を聞いて、ソウヤは後ろに下がる。だが、泥を回避するには不十分だ。

俺は、ソウヤの前に入り泥を剣で吹き払う。

泥を放った魔物を見ると既に首を跳ねられていた。一瞬、アイシアの姿が見え、直ぐに掻き消える。

「洋司、一旦下がろう。もう十分だ!」

「まだだ!」

言いながら次の魔物に突進する。立ち止まる暇などあるはずもない。

クッセルの方に行こうとしていた魔物も、流石に俺の方を見ざるを得ない。

何か魔力を放とうとしたようだが、それを待たずにたたっ斬る。

流れるようにその場にいた三体を道連れにした俺は、更に奥へ、奥へー

「洋司!これ以上は戻るのも難しくなる。」

ソウヤの訴えは最もだ。いや、俺がそう思うということはかなり控えめな表現で、実際には撤退すら決死の覚悟が必要と思うべきだろう。

今、俺達は侵攻する魔物たちの群れ、そのど真ん中にいる。

敵の注意を引くために敵陣ど真ん中に突っ込んだ結果だ。すでに完全に孤立しいるし、この突撃がどれほど効果があったのかもわからない。

少しでも敵の攻勢が緩んでいればいいのだが。

戦況は恐らく不利だ。敵陣で孤立してる俺には全体など知るよしも無いが、流れは伝わってくる。

最初はなんとか援護しようとしていた仲間たちの圧が今は感じられない。

体力の消耗、魔力の消費、味方からの援護、ここは一旦下がるべきだろう。

「駄目だ!はるなの炎が止まった!せめてはるなが戻るまではここで耐え切る!」

先程から砦から爆撃を行っていたはるなの魔力を感じない。

あの激しい爆発の音も聞こえない。多分魔力切れで休息に入ったのだろう。

はるなは大規模戦における切り札だ。莫大な魔力からくる攻撃術式は万軍に匹敵する。そのはるながいない今、俺まで下がるわけにはいかない。

「無理。はるなの魔力が戻るまでは保たない。」

いつの間にか近くに来ていたアイシアが冷静に告げる。

普通に姿が見えると言うことは彼女も消耗しているのか。

「洋司、我々が倒れたらそれこそ戦線を立て直すのが不可能になる。辛いのはわかるが、ここは下がろう。」

それはどこまでも正しい意見で、きっとそれが合理的で。

でも

「嫌だ!」

それで諦められるほど聞き分け良くはなりたくない。

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