外伝
セルレインの首都はその他の多くの都市がそうであるのと同様に城塞都市である。
街の主要部をは高い城壁で囲われ、中心にある評議会の建物はいざというとき軍事拠点として機能する城である。
そんな城の中を矢那はるなは歩いていた。
やがて、その目的地に辿り着いた。途中少し邪魔はされたが…実のところ、本気で彼女の妨害ができる者などいるわけがない。
「よくここがわかったものだ。」
そこにいた人物はその実全く不思議そうでもなくそう言った。
「…あなたがアレを仕込んでいたのではないの?」
「いや…。いや、そうか何かあったのだな?実のところ私も何も知らんのだ。私が知っているのはただこれだけだよ。」
彼はそう言って、壁を見る。いや、壁一面に描かれた幾何学模様だ。
そしてその下にはこう書かれていた。
ワガサイアイノ弟子ニオクル
「…師匠。」
「神よ。」
腹部を撫でる柔らかな手から、柔らかな光が当たる。
熱い痛みが嘘のように引いていき、やがて無くなる。
「ありがとう。エリ。」
「いえ、それは構いませんが…私でよかったのですか?」
かんなの矢によって受けた傷がしっかり治っているのを確認する俺を、エリは訝しげな瞳で見つめる。
「…はるなの神聖術は制限があるらしいし…温存したいだろ。」
あれから…俺達が柳川達に敗北した後、傷を癒やそうとするはるなを止めて、俺は応急手当だけをして帰還、今やっとエリに神聖術で治してもらった。
「そうだ…。エリ。クッセルの戦いって知ってる?」
あの戦いのとき、はるなが言っていた…。多分100年前のこと。
「ええ、もちろん。この世界の人間なら知らない人間のほうが珍しいでしょう。伝説の勇者様の戦いですから。
ですが、そうですね。勇者様は貴方は御存知ないのでしたね。」
「ああ。教えてくれる?」
エリは了承して語ってくれた。




