共和国1
セルレイン共和国の評議会には重苦しい空気が漂っていた。
先日の、勇者と聖女、それにアインハルトがレーゼル王国の超人達に挑んで敗北したのを受けてだ。
状況的に痛み分けに近い結果であり、優秀な超人を失わなかったことは不幸中の幸いだった。
「どう見る?リーランド。」
評議員の一人が軍部の長であるリーランドに尋ねる。
超人を含む戦いは単なる数では表現できない。だから評議会には常に意見役として軍の人間が付いている。
「結果だけ見れば今回は引き分けに近い形でしたが、それはむしろ今回が幸運だつたと考えるべきです。」
「つまり…二度目があれば負けると?」
「そう考えるべきでしょう。そもそも、敵の超人がその三人だけとは限りません。」
「あんなのが…まだいると言うのか…?」
恐る恐る、まるで口にすれば実現するかのように呟かれる。
彼らの戦いは、一応報告されている。それは本人たちからは当然として、見張りにつけていた兵士からもだ。
戦闘に巻き込まれないよう、遠方から眺めていただけではあるが、それでも報告された戦闘の内容は唖然とするものだった。
特に聖女が発生させたという二つ目の太陽の話などは、聖女を小馬鹿にしていた評議員達の顔を引きつらせた。
普通なら間違いではないかと確認したいところだが、報告する兵士達自身困惑している様子を見せ、近隣の村からも太陽が突然二つになったという話が出ている。
超人とは普通では考えられない存在であるが、その中でも彼らは別格だ。
そんな存在がまだいるかも知れない。そしてそうなれば打つ手など存在するはずがない。
「可能性の問題です。こちらの最高戦力は彼ら三人ですが、あちらの戦力については未確認です。他の超人はまだしも、更に優秀な武器を装備してくる可能性は十分あるかと。」
淡々と述べるリーランドだったが、その言葉の中に含まれる棘に気付かない者はここにはいない。というより、ここはそうしたことに長けた人間の集まりなのだ。
だが、いやだからこそ何も言わない。突いても得にならないからだ。
嫌味ぐらいは言わせてやる、そういう余裕の態度だった。
「…しかし、考えねばならないのでは?」
「逆ではないのか?同じ異世界の人間が現れたのであれば、余計にアレを渡しては。」
「左様、アレごと他国に行かれでもすれば…。」
「しかし…戦ったということは、そうはならんということじゃないか?」
「わからんだろう。一度負けているのだ。寝返る可能性は十分にあると見るべきだ。」
評議員の人間は交渉の、つまりは話し合いのプロである。
であるからこそ、言葉の裏の裏まで見通せるし、僅かな視線の動きや仕草で相手の感情を読み取ることもできる。
だが、そんな彼らも、鎧が音を立てないように直立しながら、それでも手のグローブを握りしめて絞るように出た音の意味は理解できなかった。




