二人目9
「ファイアーボール!」
術式の発動と同時にキョウカと俺が駆ける。
意図的に遅く発動させたファイアーボールの弾着と同時に俺とキョウカが柳川の間合いに入る。
「ふんっ。」
柳川は、後ろに少し下がりながら氷剣を投擲し、ファイアーボールを迎撃する。しかも、微妙に俺側に移動している。
「ちっ!」
同時に斬りかかるつもりが、タイミングがズレる。
だが、仕切り直しはできない。俺は柳川に真っ向から打ち込む。
当然の様に柳川の剣が俺の剣を受け止める。
柳川の足元がひび割れを起こすほどの衝撃を伴っているというのに、柳川に効いてる様子はない。
「せぇやっ!」
キョウカが俺の横から斬りかかる。
柳川は更に取り出した氷剣で受け止める。
二人がかりで押すが、柳川は受け止めている。
こいつ、どんな魔力量してるんだ?
「今だ行けぇ!」
キョウカが叫ぶ。俺に?じゃない!
「うおぉぉぉ!」
俺達の横を馬車が猛スピードで通り抜ける。
スピオレ達を輸送している馬車だ。
「させるか!」
柳川の目が馬車に奪われる。
その一瞬をー逃すはずがない。
キョウカが刀に込める力を引っ込める。当然柳川は体制を崩すことになる。
「ちっ!」
しかし、大きくは崩れない。目線は既にキョウカに戻っている。
俺と打ち合っている剣を戻し、キョウカが放つ追撃の一手を迎撃に向かわせる。だがー
「ジュンイチ!」
キョウカは柳川の隙に付け入ろうとはしていなかった。むしろその逆だ。押し出された勢いも利用して後ろに飛び退っている。
「まさか!」
柳川の視線が俺に動く。そう、キョウカは囮だ。
柳川の目が目まぐるしく俺を観察するのを感じる。俺が放つ追撃の一手がどこから来るのかを見極め、ガードしようと考えているのだろう。
だが。
「エクスプロージョン!」
瞬間俺を中心とした爆発が発生する。
ガードしようにも全身を覆う爆風に対処法など存在するわけもない。
「これは、一本取られたな。」
爆煙の中から声が聞こえ
俺は、慌てて飛び退る。
「おいおい、マジかよ。」
爆煙の中から平然とした柳川の姿が現れる。
服に煤がついてるあたり、当たらなかったという訳ではないようだが。
「エクスプロージョンでダメージが無い?!」
「いや、ちゃんと通っている。全く左腕がこの様だよ。」
柳川が左腕を上げる。手のひらの皮膚が焼けている様子がようやく目に入る。
「どういうことだ。全身を覆う爆発だったはずなのに、なんで左腕だけがあんなダメージを?」
「ん?何故って…。あの距離で起こった爆発なら腕を前に突き出せば大部分の威力は殺すことができるだろ?」
ばかな。あの爆発で、とっさに左腕を伸ばしたのか?他の部分を守るために?
というか腕が焼けてるのになんでこいつこんなにことなげに言うんだ。
いや、そんなことは今はいい。目標は達した。
「柳川、終わりだ。」
スピオレを連れた馬車はもう離れている。柳川も軽くない怪我を負ってる。
俺達を突破して追いかけるのは不可能だ。
「あぁ。そうだな。」
柳川はあっさりとそう言うと、氷の剣を消して、柄だけをしまった。
「今頃うちのメイドが馬車を押さえているだろう。もうお前たちを足止めする必要もない。」
そう言い残して、柳川は俺たちに後ろを向けて立ち去っていく。
「き、キョウカ?」
柳川が言ったことは本当か?なら、今すぐにでも馬車を追いかけるべきじゃないのか?
手負いの柳川を仕留めるなら今じゃないのか?立ち去ろうとする柳川に食らいつくべきじゃないのか?
どれが正解かわからない。
「…馬車を追うぜジュンイチ。どうせあの野郎は俺達じゃ仕留めるのは無理だ。」
「わかった。」
キョウカの苦虫を噛んだような顔をした発言に即答えると、俺達は馬車を追った。
たが、俺達が馬車と合流することはなかった。




