奴隷3
セルレイン共和国首都セルレイン
大陸内でも三大国家として謳われるこの国の首都の賑わいは、日本における秋葉原、日本橋にも引けを取らない。
並び立つ建物に、馬車用の車道と歩道が別れている道路。
現代のヨーロッパの街並みもかくやと言ったところだ。いや、それは言いすぎか?
そんな歩道にずらっと並ぶ様に様々な出店が並んでいる。
まるで何かのお祭りだが、これがこの街での日常だ。
そんな道を所狭しと道行く人々は走る人、歩く人、遊ぶ子供と様々だ。
時折人々がチラチラとこちらを伺う様子があるが、それ以外は至って平和そのものだ。
そんな街の様子を、俺と矢那さんはこの世界に来て初めて見ることができた。
「誘ってくれてありがとう、真田君。」
俺が興奮しているように、矢那さんもこの街の様子に興奮しているのか、少し頬が赤い。
何?俺が矢那さんを誘う様子が書いてないって?俺には沈黙の自由があるんだ。
ともかく俺たち、俺と矢那さん、キョウカにエリの四人で街をまわることになった。
ちなみに予算は200ミリタ、俺の一月分の給与と言うことになっている。現代価値に換算すると…いくらになるかはこれから調べる所だ。
「流石異世界って感じだね。いろいろと違うや。」
一見すると、元の世界にもありそうなただの賑やかな街だが、明らかな差異も存在する。
例えば馬だ。この世界の馬はどちらかというと狼に近いような姿をしている。街に売られている魚も微妙に変な形をしている。果物に関しては全く想像もつかないものばかりだ。
「そうね、でも美味しいわよ。」
矢那さんが事もなげに言う。まぁ、確かにこの世界に来てからこの世界の食べ物しか食べていないが、どれも美味しいものばかりだった。普通に食べれるのだろう。
「おい、シュンイチ。これなんかいけるぜ。」
キョウカが出店の中から果物を一つ取り出し投げてくる。
「お、ちょっ!投げるなよ。」
慌てた素振りを見せたがそれはもとの世界の癖みたいなものだ。超人として、戦士として訓練した今では、普通にゆっくり投げられた物を掴むぐらいは造作もない。
投げられた果物は拳サイズの黄色い果実だった。ふむ。
「あ、それはー
矢那さんがなにか言いかけているが、まずはちょいと一齧り。なるほど、みずみずしくて、うわなんだこれ酸っぱい!?
「げほっげほっ!なんだよこれめちゃくちゃ酸っぱいじゃんか!」
「それはペリテです。腐りにくい果物で保存食や調味料としてよく使われます。味はー説明するまでもありませんね。」
エリが解説をしてくれる。
「騙しやがったなキョウカ!」
「はははっ!こんな常識も知らねぇジュンイチが悪いんだよ。」
悪びれもせずにそんなことを言うキョウカ。
「仕方ないわねぇ。すみません。このシムノテをください。」
矢那さんが呆れながら店主から何かを買う。
「はいよ、さっきのペリテと合わせて300セリタだよ。」
「セリタ?ごめんなさい。私ミリタというお金しか持ってなくて…。」
「なら問題ねぇな。ほらよ。」
店主は緑色の葉っぱ、あれがシムノテだろうか?、を矢那さんーではなく俺に手渡す。
「飴みたいに舐めるのよ。すぐに酸っぱいのが収まるわ。」
葉っぱを恐る恐る咥える。青じそのような苦さを予想していたが、逆に凄く甘い。甘さが口の中を満たしていき、先程の強烈な酸味を打ち消していく。
「ありがとう、矢那さん。」
「どういたしまして。それでえっと…お会計は…」
「1ミリタは一万セリタです。」
困惑する矢那さんにエリが助け舟を出す。
おずおずと1ミリタ硬貨を矢那さんが差し出すと、お返しにと店主が大小様々な硬貨を返してきた。
「まいどあり。にしてもペリテいきなり齧ったり、金勘定も知らなかったり、もしかして…嬢ちゃんたち…。」
まずい、勇者ってバレる?
「おお、そうだ。この二人が勇者と聖女だ。」
ごまかす方法を考えていると、キョウカがいきなりぶち撒けた。
「ゆ、勇者様に聖女様ー!?」
店主だけではない、周りにいた住人の皆がこちらを振り返る。
「し、知らなかったこととはいえ勇者様と聖女様にとんだ無礼を!」
「勇者様!先の戦争では旦那を守っていただきー
「聖女ー!握手を!どうか握手を!」
勇者って凄いんだなー




