奴隷1
セルレイン共和国会議室
「…。それで?」
評議員の一人が口を開く。場の空気が重いのは、噂を耳にしているからだろう。
「はい。皆様既に概要はご存知かと思いますので、仔細に説明させていただきます。3日前、レーゼル王国がリーシェナ国に対し宣戦布告を行いました。」
レーゼル王国は帝国、共和国に並ぶ三大国家の一国だ。
帝国の軍拡、共和国の勢力拡大に煽られてとうとう動き出した。
「王国がとうとう動いたか…。」
「わかっていたことだ。問題はー」
「ああ。リーシェナだと?」
「王国め、焦って判断を違えたか?」
リーシェナ国は王国と共和国の間に位置する諸国の一つだ。
国の規模も大したことがなく、王国が手始めに動くには良い相手と言える。
しかし、リーシェナは王国と領土を接していない。
つまり、リーシェナと戦争するためには、他国を軍隊が横切らなくてはならないわけだ。
もちろん、他国の軍隊が自分の国を横切って嬉しい国があるわけがない。
無駄に敵を作る行為だ。
「王国とリーシェナ国の開戦は一日後、国境付近のバラムス砦で行われました。」
「それがわからんというのだ!」
「王国の連中は気でも触れたのか?!」
軍の動員は一大行事だ。兵を集め、道具を集め、食事を集め、それでようやく出発する。
進行だってゆっくりとしたものだ。荷物を抱え、鎧を着た人間が何千何万と列を成して移動するのだ。
もちろん、国と国の間を一日で移動するなど不可能だし、逆算すれば、王国は宣戦布告の数週間前から軍の動員を始めていたことになる。
言うなれば殴りかかりながら「今から勝負だ」と言っているようなものだ。不意打ちにもほどがある。
「いえ、王国による軍の動員は現在に至るまで確認されていません。」
場の空気が凍る。それはつまり噂が本当なのかと。
軍が動かずに開戦した。常識的に考えてあり得ない。
この世界でそう言う非常識というのは
「つまり…。では、噂は本当だと?」
「そのとおりです。王国は超人一人のみを派兵。単騎にてバムラス砦を陥落、その後首都まで侵攻。首都防衛網も突破し、リーシェナ国は無条件降伏に至りました。」
あり得ない。
いくら超人が優れた力を持っているからと言っても限度がある。
「有り得んだろう!単騎で軍を壊滅させるだと?!」
「現状では、その有り得ないことが起きたとしか。」
「まぁ、落ち着け。それに関しては情報を集めるしかあるまい。」
「であるな。」
「では次だ。ともかく、王国は勢力拡大に乗り出した。次の狙いはどこだ?」
「定石であれば周辺諸国だが。」
「領土の繋がりのないリーシェナを一番に落としている以上、それはあるまい。」
「このまま我ら共和国を狙うという可能性も。」
「帝国の睨みがある状態でか?共倒れが目に見えている。王国もそこまで愚策はとるまい。」
「諸国への脅しでは?王国は距離を関係なく侵攻できるのだと。」
「この段階でそれをしては反感を買うだけではないのか?」
「脅し…。考えられないような侵攻。邪魔が入らない?」
「リーランド、なにか思いついたのか?」
「もしかするとですが、これはーーー




