神官10
矢那さんが神聖術を使ったことで、エリは神聖術が使えるようになった。
エリが神聖術を使ったことで、多くの神官が神聖術を使えるようになった。
問題なのは使える人と使えない人が分けられたことだった。
矢那さん曰く神聖術は"敬虔な信徒であれば誰でも使える"とのこと。
だとすれば使えない人間は敬虔ではないということになってしまう。
そしてよりにもよって、使えない人々は大司教を始めとした教会上層部に集中していた。
エリから言わせれば「権力争いで忙しそうでしたから。」とのこと。
神官たちからすれば自分たちの上が信仰心を持たないと証明されてしまったのだから上層部に対し退陣を要求するのは当然の流れだ。
しかし、教会の人事はその上層部に掌握されている。つまりは教会は既に腐りきっていた。
上層部は下部からの不満を全て無視し、事態が鎮静するのを静観する構えをとった。
ならばと敬虔な信徒達は独自に新たな旗頭を求めた。
白羽の矢が立ったのは、上層部で数少ない"使える"人物であったエドワード司祭だ。
元はこうした不満の受け皿になるために上に立ったお飾りだったが、この状況ではその影響力はただの受け皿には収まらない。
しかし、エドワード司祭は上層部の糾弾も新たな教会の設立にも乗り出さず静観の構え。
エリ曰く「エドワード司祭は信仰以外にあまり興味を示されませんから。」とのこと。
かくして教会は二分されたものの、一応は今まで通りの体を保っている。
「それはいいとして。」
「なんですかジュンイチ。そんな主人公が裏事情を説明し終えたかのような話し方をして。」
「エリの例え話はわかりにくいわね。」
「なんで、エリさんがここでお茶してるんだよ!」
ここ城の応接室。今は矢那さんとエリさんの女子会が開かれていた。
「私はちゃんと許可をとっていますよ。」
「いいじゃない。仲良きことは美しきかな。」
「では、はるな。今度はあなたの話を聞かせてください。」
「え〜。でも私そんな面白い話なんて。」
「何を言うんです。聖女様の話も異世界の話も、どれも興味はつきません。」
うふふふふという声を響かせながら女子会が再開してしまった。
…どうしよう…俺の場違い感が。
「お〜いジュンイチいるか?」
キョウカがノックもせずに部屋に入ってくる。
しまった女子が増えた!
「お!ジュンイチ、稽古しようぜ。」
HAHAHA、こいつに女子っぽさを求めた俺が馬鹿だったぜ。
「やだよ、お前本気で斬りに来るもん。」
「あん?本気でやらなきゃ意味ねぇだろうが。」
俺は二度とゴメンなんだよ、あんな痛いの。
「懐かしいわね。」
矢那さんがポツリと漏らす。
「そう言えば、かつての勇者様一行にもアインハルトがいたとか?」
前の勇者か…。百年前に魔王を倒してこの世界を救ったっていう。矢那さんはその時の一員らしいけど…。
他の人たちはどんな人たちだったんだろうか。
「ねぇ、矢那さん。前の勇者ってー
その時部屋がノックされた。返事も待たずにメイドが入室してきて。
そして慌てた様子で告げた。
「勇者様、聖女様。急ぎ会議室へお越しください。」
「どうしたんですか?」
「リーシェナが陥落しました。急ぎ対策を考えねばなりません。」
「リーシェナ?じゃあ王国が動いたのか?それにしたって早すぎるだろ。」
「王国よりの宣戦布告は3日前に行われていたようです。その後開戦、一両日の内にリーシェナ国首都リーシェナが陥落したと報告が。」
「一日!?んなわけあるか。軍の移動だけでもーってまさか。」
「はい。王国が動員した戦力は一人のみのようです。」




