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神官8

二人目の聖女が現れたという噂は瞬く間に広がった。

しかもそれが教会内から出たというのだから、矢那さんの立場は微妙なところだ。

本来なら勇者と聖女は神の使いだ。とはいえ、勇者召喚の儀式はセルレイン共和国が管理していたりと実態は微妙なところ。

しかし民衆にとってはやはり神の使いであるイメージが大きいわけで。

そんな聖女が二人現れて、片方は教会のお墨付き、もう一人は教会の感謝状を叩き返した人物となればどちらが信用されるかは言うまでもない。

あの時の矢那さんの行為は大司教の無礼あってのものだが、あの後の大司教があまりにあっさりしていたものだからほとんど噂されていない。

というわけで目下矢那さんはピンチに陥っているわけだが。


「別に良いんじゃないかしら。」

当の本人は余裕綽々だった。

祝賀会も明けて数日、ようやく評議会も事態を掴み始めた。

城内の使用人を通じて矢那さんや俺にも情報が来始めている。

にも関わらず、相変わらず矢那さんは興味なさげに術式の本を読んでいる。

「いいの?人によっては矢那さんのこと偽物って言ってるけど。」

「考えてみれば私って自分が聖女って証拠何も持ってないのよ。勇者と一緒にいて戦えたからたまたまそう呼ばれただけで。」

などととんでもないことを宣う。

「え!?矢那さん聖女の証明できないの?!ほ、ほら神の声を聞いたとか…。」

「それ私の口から言っても証拠にならないでしょ。ないわよ、別に。私は神のお告げなんて聞いてない。」

「で、でも神聖術使えるじゃないか。あれは」

「だから言ってるでしょ。あれはちゃんとお祈りしてれば使えるようになるものだって。最も私のはエリから貰った祝福を使ってるだけだけど。」

エリ?エリ…。なんか聞いたことがある名前のような…。

いや、それより。

「その祝福を貰ったってどういうこと?」

「そのままの意味よ。神に祈る者は神の恩寵を授かる。そして、その恩寵を人に与えることもできるのよ。」

「恩寵を貰うと、あの神聖術が使えるようになるの?」

「使うというのは正確な表現ではないわね。貰った物を消費する、といった感じよ。」

「…つまり、矢那さんの神聖術は回数制限があるってこと?それなら俺や負傷者治すのに使ったのは勿体無かったんじゃ。」

「目の前に苦しんでる人がいるのに、出し惜しみなんてしてたらエリに合わせる顔が無いもの。仕方ないわ。」

こともなげに矢那さんは言う。しかし、矢那さんの神聖術に回数制限があるっていうのは不味い情報だな…。

今でさえ偽物の噂が立ってるのに、神聖術が使えなくなったりしたら…。

「失礼いたします。聖女様、お客様がいらっしゃいました。」

メイドが部屋に入り、来客を告げた。

「お客様…?」

矢那さんが首を傾げる。

当然だ。城内のこの部屋を訪問できる人間は限られているし、大体の人間は名前を告げられる。

お客様、ということはつまり城外からの人間と言うことだ。

それも、聖女である矢那さんと面会できるほどの。

「勇者様に、エリ・スチュワートと言えば伝わると窺っておりますが?」

「え?誰…?」

なんか聞き覚えがある気もするが、さっぱり思い出せない。

エリって確か矢那さんが昔祝福を貰ったとかいう神官の名前だったよな?

いや、でもそれ100年以上前の話なわけで。

「知らないみたいだけど。」

矢那さんも心当たりはなさそうだ。

「左様でしたか…。しかしお会いされたほうがよろしいかと。

御客人は現在、二人目の聖女を名乗られている方ですので。」

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