神官4
「あ、えっと。俺は真田純一って言います。」
「ジュンイチ…様ですか。」
変な名前ですね、とスチュワートさんは何度か俺の名前を繰り返した。
「ジュンイチ様。教会は現在入場を制限させていただいております。負傷した兵士の方々への治療が忙しく。」
「え、あ!いや。俺も治療で来てたんですけど。」
言いながら左腕の傷跡を見せる。
「ああ、ジュンイチ様も兵士の方でしたか。お若くお見受けしましたので…。失礼致しました。」
律儀に頭を下げるスチュワートさん。
「それで、どういったご要件でしょうか?本日は礼拝も休みとなっているのですが。」
「それが迷って…ゴホン!スチュワートさんこそ、どうしてここに?礼拝は休みなんですよね?」
強引に話を逸しに行く。勇者が迷子という事実は隠し通さなくてはならない。
「…。皆さん負傷者の治療に忙しくされています。
生命ある者、慈しむのは当然の事です。
しかし、どうしてそれが死者を弔うことより優先されるのでしょうか。」
突然の問いかけに、俺は答えられなかった。
いや、というかいきなり何言ってるんだこの人。
「はぁ…。私は戦死者の死後の安寧を神にお祈りしていたのです。」
こんなこともわからないのかこの馬鹿は。と言いたげなため息の後、スチュワートさんは砕いた説明をしてくれた。
「あ…。それ、俺もお祈りしていっていいかな?」
今回の戦争で死んだ人達、俺の勝利のために命をかけてくれた人達。
その人達に報いることは、もう出来ない。ならせめてーー
「…。では、こちらへ。」
スチュワートさんは淡々と祈りの簡単な作法を教えてくれた後、自らも神の像へと祈りを捧げた。
「「ーー。」」
二人してただ神に祈る。
俺みたいな不信神者が祈って、神様は怒らないだろうか?
いや、それでも、どうか俺のために死んでいったみんなのことだけはーー
『それでいいのですか?』
声がした…?
「え?」
「真田君!」
礼拝堂の扉が大きな音を立てて開き、彼女の、矢那さんの声が響き渡った。




