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神官1

アインハルトの剣士キョウカという切り札を失ったアーバント軍は速やかに降伏した。

元より兵力としては話にならないほどの差がある。それを逆転するための超人が負けてしまったのではどうにもならないのである。

こうして俺の初陣はセルレイン共和国の勝利という形で幕を閉じた。


のだが。

「全く勇者様は!私の指示を聞くようにとあれだけ言ったではありませんか!」

シャナル平野からの凱旋の途中、俺はリーランドから説教を受けていた。

理由はもちろん、アインハルトの消耗を待たずしての突撃だ。

「勝てたから良かったものの、もし負けていたら我が軍は敗走していたんですよ!」

戦争の行く末は、大体の場合その国が擁する超人の勝負で決まる。

他の兵士たちはその勝負を有利に運ぶためのオプションでしかない。

「我が軍はアインハルトの剣士を包囲していました。あの状況を維持すればかなり消耗させることができたはずです。」

数で劣るアーバントは切り札である超人の温存が出来なかった。

だから味方兵士を犠牲にして、敵超人を消耗させれば、勝負の勝率は上がる

「でも…。」

しかしながらその犠牲は苛烈なものだ。

剣を当てれば、矢が掠めれば、そんな消耗を期待されれば兵士たちにも甲斐があるかもしれない。

だが彼らに期待されているのはそれ以下の、ただ切られることだ。

腕を一振りさせるため、術式を一度使わせるため、そのために命を捧げろと命じられるのだ。

「でもではありません!勇者様も今回の苦戦で重要性は理解されたはず!」

その通りだった。キョウカとの戦いで俺の魔力は体感で2/3ほど使っていた。

逆に言えば、もしそれまでに1/3使っていればキョウカには勝てなかった。

キョウカの側だって、もしかしたら俺と戦うまでに疲れや怪我を貯めていたかもしれない。

それがなければキョウカは負けなかったかもしれない。

「我々は勇者様の勝利のために戦っているんです。…それを忘れないでください。」

怒鳴るような口調から一転して、諭すような口調に変わるリーランド。

ここで優しく言うのは…ズルい。

けれど

「俺はみんなのために戦うよ。」

一度口に出して、舌でころがす。その言葉は自然と俺に決意させるものだった。

「みんなが俺を勝たせるために戦うなら、俺はみんなが勝てるように戦うよ。」

この国の勇者として、譲れない思いだった。

「はぁ…。まぁ、勇者様のおかげで、かなり被害が抑えられたというのも事実です。」

溜め息と共に何かを吐き出したかのようだ。

リーランドの声から怒気がなくなる。

「勇者様、見事な働きでした。」

初めて褒められた気がする。

「この勝利も、今生きている兵士たちも、勇者様のおかげです。」

思えば、元いた世界で、ここまでの大任を任されたことなんてなかったな…。

「ありがとうございます。勇者様。」

…悪い気分じゃないな。

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