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剣士8

「アインハルト流、抜刀術。」


彼女の宣言と同時に彼女の剣が消えた。いや、俺が見逃しただけだった。彼女が刀を振り抜くのを。

あまりに速かった。超人の目を持ってしても捉えることもできなかった。反応などもっての外だった。なのにー

「避けやがった?抜刀術を?」

ーそれを避けられたのは、それが予測されていたものだったからだ。

(リーランドから聞いてて良かった。)

間一髪で回避した俺は内心でアインハルトの奥義の存在を教えていてくれたリーランドに頭を下げた。

しかしそれも完璧ではなかった、刀の軌道から外し損ねた俺の剣は根本でキレイに切り飛ばされている。

アインハルト流抜刀術、アインハルト族にしか使えない必殺の奥義で、内容は文字通り納刀した刀を振り抜く居合い切り。

だが、その速度はあもりにも速く回避はおろか見ることさえも難しい。

更にその火力も段違いだ。さっきまで余裕で打ち合えていた剣が一瞬で切り飛ばされた。さすがにアレに斬られたら俺の体も無事ではすまないだろう。

一撃食らったら終わりなのは予想通りではある、しかし防御すら許されないとは完全な想定外だった。

「で、とうする勇者様?降参するかい?」

余裕綽々に、しかし一方で次なる抜刀術を放つべく刀を鞘に収めながらキョウカ。

もはや、彼女の間合いに入ることは自殺とそう変わらない状況となった。

けど、こっちもまだ切り札は残っている。

「まさか。ちょっと卑怯かと思ってたけど…。」

俺は左腕に付けた式具を起動させる。

「ファイアボール!」

俺の魔力は式具に刻み込まれた術式陣を通して変換され、炎の弾丸となる。それをキョウカに放つ。

「ちっ!」

舌打ちしつつもキョウカは刀を抜き放ちそれを弾き飛ばす。

「まだまだ!ファイアボール!」

続けてファイアボールを放つ。普通の兵士では切り札となるファイアボールだが、俺の魔力量なら牽制にも十分使える弾数を確保できている。

だが、キョウカは二発目のファイアボールを回避した。

横に回避したキョウカはその速度のまま俺に突撃を仕掛けようとー

「ファイアボール!」

したところで、俺の次なるファイアボールがキョウカを狙う。

キョウカは今度は横ではなく斜め後ろに下がりながら回避する。

距離が開けばファイアボールの回避は容易になる。だが、遠距離攻撃を持たないキョウカにとって、距離を開けるという行為は自らの勝ち筋を放棄することに他ならない。

少し間合いが広がった以上、俺も追撃のファイアボールは撃ちにくい。相手に簡単に避けられる距離では魔力の無駄になる。

「どうしたんだ?離れちゃ剣が届かないだろ?」

俺はキョウカがもし突っ込んできた場合に備えて油断なくファイアボールを構えつつ、キョウカに挑発をかける。

「ったく。どいつもこいつも、バカの一つ覚えだな。」

しかし煽られたキョウカは苛立っている様子は見せているものの、焦りも怒りも見せていない。

「なぁ、勇者様。アインハルトに剣で勝てなかったやつはどうすると思う?」

「…。」

いきなりのキョウカからの問いの意味が分からず答えに窮する。

アインハルトで剣で負けたら?

「そんなのー

「そんなの決まってるよな。」

遠距離攻撃をしかけるに決まっている。


誰もが思いつく対アインハルト対策、それは

「アタシらアインハルトが、遠距離対策してねぇと思ってんのか!」

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