剣士4
セルレイン共和国軍の進軍に対し、アーバント軍は受け止める形をとった。
両軍が接触する直前、両軍から矢と術式の応酬が始まる。
互いの一斉射撃によって、セルレインの勢いが落ちると同時に、アーバント国の守りに隙が生まれる。
セルレインは勢いが殺されて躊躇う素振りを見せ進撃の勢いを大きく緩める。結果、緩慢な兵士同士の衝突が始まる。
慎重すぎる戦い方にも見えるが、この状況が辛いのはアーバントの方だ。
この世界ではほぼ全ての兵士が式具による遠距離術式を備えている。これは普通の兵士目線で言うと非常に強力な切り札になる。
歩兵が放つファイアボールなんかの術式は、俺が撃つものと比べると数段威力が落ちる。
だが、それでも人間一人を焼くには十分な火力で、更に問題なのは防ぐ手段がほとんどないことだ。
この世界には金属鎧なんかもあるにはあるのだが、金属故にファイアボールの熱を吸収して発熱してしまって役に立たないのだ。
後は魔力の籠もった鎧というのもあるのだが、これは希少でほとんど超人にしか与えられない。
ちなみに俺が着ているのはそれよりもさらに希少な魔服と呼ばれるものだ。魔力の籠もった糸を編んで術式を織り込んだ物で、布製でありながらその防御力は金属の比ではない…らしい。
ともかく、そういう強力な遠距離攻撃を持つ者同士が距離を保っての撃ち合いになるとどうなるか。
結果は両軍数をすり減らすことになる、同じペースで。
こうなると最初の数が少ないアーバントが圧倒的に不利だ。
一万数が多いフィルレインはアーバントの兵士が全員死ぬとき、まだ一万残っている計算なのだから。
アーバントがこの状況を打破するには戦線の一部を突破して乱戦にもつれ込むしかない。
だが、術式と矢が飛び交う戦場でそんな突撃が許されるわけがない。
そんなことができるとしたら
「右翼、突破されました!」
兵士が叫ぶ。見ると、右翼側の敵が味方の陣に流れ込んでいる。
「来たか!」
敵軍の超人のご登場だ。




