第18話:音無き暗殺者と、不可侵の城塞(後編)
特務暗殺部隊『影刃』の筆頭、シオンの冷たく閉ざされた世界が、暴力的なまでの熱量によってこじ開けられていく。
「んんっ……!? んぐっ、ぁ、あぁぁっ……!」
強引に塞がれた唇から、セトの純度百パーセントの液状マナが、熱い唾液とともに彼女の口腔へと直接流し込まれる。
感情を殺し、痛覚を麻痺させ、ただ任務を遂行するためだけに氷のように固められていたシオンの魔力回路。そこに、太陽そのもののようなセトの黄金マナが叩き込まれた瞬間、彼女の体内を満たしていた王国の『絶対服従の呪印』が、悲鳴を上げるように軋み始めた。
(あ、アツ、イ……ッ! なんだ、この、感覚は……ッ! 私の、中の……呪縛が……溶けて……ッ!)
シオンの紫色の瞳が、かつてないほどの驚愕と恐怖、そしてそれを瞬時に塗り潰す強烈な快感に大きく見開かれる。
セトの大きく分厚い手が、シオンが身に纏っていた国宝級のアーティファクト『影縫いの外套』を無造作に掴み、紙屑のように乱暴に引き裂いた。
露わになったのは、一切の無駄な肉を持たない、透き通るように白い少女の裸身。そしてその下腹部、子宮の直上には、王国最高の呪術師が刻み込んだおぞましい漆黒の呪印が、セトのマナに反発してどす黒い瘴気を放っていた。
「これが王国が貴様の脳と肉体を縛っていた鎖か。薄汚い。俺の極上のマナで、その下らない呪縛ごと、雌としての喜びを骨の髄まで焼き付けてやる」
セトは唇を離すと同時に、シオンの下腹部で脈打つ漆黒の呪印へと、自らの太い指を突き立てた。
「ひぎぃぃぃぃぃッ……!! あ、あ、ァァァッ……!」
感情を持たないはずの暗殺者の口から、鼓膜を劈くような絶叫が迸る。
セトの指先から、圧倒的な生命力と支配のエネルギーが直接彼女の魔力核へと注ぎ込まれたのだ。
王国の呪印がジュージューと音を立てて蒸発し、その跡地に、セトの支配を示す黄金の幾何学模様が、まるで焼き印のように深く、そして甘く刻み込まれていく。
「す、すごいですわ……! 王国の最高機密である精神支配の呪式が、セト様の圧倒的な『生命の力』の前に、なんの抵抗もできずにドロドロに融解していますの!」
大広間のソファからその光景を見つめていたフィアナが、自身の魔導デバイスに表示される異常な数値を前に、頬を高揚させて声を弾ませる。
「あの暗殺者の子……今まで何も感じないようにされてたのに、いきなりセトのすっごく熱いのをもらっちゃって……頭がおかしくなっちゃうよぉ……っ」
ミリアが獣の耳を震わせ、自分自身の太ももをきつく擦り合わせる。
シオンの体内で起きている劇的な魔力の書き換えは、すでにセトの刻印を受けている四人のヒロインたちの魔力回路とも激しく共鳴していた。エレナもクロエも、かつて自分が同じように過去の絶望や呪縛を打ち砕かれ、圧倒的な快楽とともに服従させられた記憶を呼び起こされ、甘い吐息を漏らしながらその場にへたり込んでいる。
「あ、あぁぁぁっ……! や、やめ……っ! 思考が、処理、できな……ッ! からだの、奥が……熱くて、おかしく、なって……ッ!」
シオンは床に崩れ落ち、純白の肌を極彩色の熱に染めながら、ガタガタと激しく痙攣した。
痛覚すら封じられていた彼女にとって、セトから与えられる「触覚」と「魔力の奔流」は、まさに致死量の快楽そのものであった。
彼女の魔力回路を巡っていた冷たい影の魔力が、黄金のマナと交わり、反転し、彼女の子宮の奥底で爆発的な熱を生み出していく。
「やめる理由があるか? お前の身体はすでに、王国の冷たい呪縛よりも、俺が与える熱と快楽の方を極上の養分として選んでいるぞ」
セトは傲慢な笑みを深め、身悶えするシオンの華奢な顎を掴み上げ、その紫色の瞳を正面から見据えた。
「見ろ。お前の股の間は、すでに俺の魔力を求めてだらしなく蜜を溢れさせている。感情がないなどと嘘をつくな。お前は俺に支配されるために生まれてきた、極上の雌だ」
「ひぅっ……あ、あ、あぁぁぁっ……!」
シオンの瞳から、大粒の涙がとめどなく溢れ出す。
王国の暗殺者としての自我は、完全に崩壊していた。
今まで彼女を縛り付けていた冷たい命令式はすべて消失し、代わりに彼女の脳髄と子宮を支配しているのは、「目の前の男にすべてを委ね、無限の快楽を与えられたい」という、剥き出しの狂信的な依存だけであった。
「あぁ……っ、熱い……もっと、もっと熱くして……っ! 私を、あなたの魔力で、めちゃくちゃに、壊してぇぇぇッ!」
シオンはついに理性の最後の欠片すらも手放し、自らセトの太い腕にすがりつき、交尾をねだる雌犬のようにその顔を擦り寄せた。
「いいだろう。俺の城塞の新たな影として、永遠の隷属をその身に刻み込め!」
セトはシオンの下腹部に刻まれた黄金の魔力紋に、さらに一段階引き上げた規格外のマナを叩き込んだ。
「アァァァァァァァァッ……!!!」
シオンの身体が弓なりに大きく反り返り、彼女の口から、生涯で初めての、そして最も強烈な絶頂の叫びが城塞の中に響き渡った。
彼女の体内から放たれた、漆黒と黄金が入り混じる魔力の波動が、城塞の床に落ちた影へと一気に浸透していく。
それは、シオンが持っていた『影の概念』を操る暗殺の力が、セトの『聖地創生』と完全に同調を果たした瞬間であった。
「これは……! 城塞内部のすべての『影』が、セト様の結界とリンクしましたわ! エレナの光の防壁の内側に、シオンの影の索敵・迎撃ネットワークが構築されたのですの!」
フィアナの驚嘆の声が響く。
光あるところに影あり。
外側からの物理・魔術攻撃を弾き返すエレナの『白銀の聖域』に続き、万が一内部に侵入を試みる者がいれば、城塞内のすべての影が牙を剥く『音無き暗殺領域』が、今ここに完成したのだ。
「はぁっ……はぁっ……。あぁ……ご主人、様……っ」
過剰な快楽の波がようやく引き始めると、シオンは完全に力が抜けきった身体をセトの胸へと預け、蕩けきった瞳で主を見上げた。
かつての感情のない人形の面影は微塵もなく、そこにはただ、絶対的な主の愛と力を求め、果てしない服従の喜びに満たされた一人の少女の姿があった。
「よくやった、シオン。お前の影は、今日からこの俺と、俺の国を守るためだけに機能する。もう二度と、王国の下らない命令に縛られることはない」
セトはシオンの汗ばんだ黒髪を優しく撫で、その熱を持った唇に、支配の証としての深い口づけを落とした。
「んんっ……ちゅ、れろ……ぁっ……。はいっ……私は、あなたの影……。あなたの与えてくれる熱なしでは、もう……生きていけませんわ……っ」
王国の誇る最高戦力であった暗殺者は、こうして最も容易く、そして最も深く、追放された農業魔術師の軍門に降った。
深淵の魔石プラントという無限の資源、そして光と影の絶対防壁を手に入れたセトのハーレム王国は、ついに王国そのものに対する本格的な逆襲の牙を研ぎ澄ませ始めたのであった。




