第71話 それぞれの想い①
マーベリックの視線がリアへ向く。
「リア。君は蒼雷を撃てるのか?」
その声にリアの肩がわずかに上がり、集まった視線を受けながら、ゆっくりと顔を上げた。
「蒼雷は……撃てます。」
コチ――コチ――コチ――
言葉が途切れた室内で、時計の音だけが大きく時を刻んでいく。
「……ですが……安定しません……。」
マーベリックは小さく息を吐き、うつむいたリアから視線を外さずに問い返した。
「それは、魔力が安定しないということか?」
リアがそのままうなづくと、マーベリックは自分の掌へ目を落とした。
「蒼雷の仕組みは俺もわかっている。作り出した水を魔力で蒸発させ、大気を取り込み帯電を起こす。」
掌を見つめたまま指先をわずかに動かし、頭の中で重ねるように続ける。
「それをさらに魔力を重ね、高回転させ過電流を作り出す。」
そこで顔を上げ、リアを見る。
「そうだな?」
リアはうなづいた。
「はい……その電流を両手に分けて反発させ、一気に前方へ押し出します。」
マーベリックは顎髭に触れ、リアの両手へ視線を落とした。
「なるほど……だから弓の形か。」
リアがもう一度うなづき、伏せた目のまま両手をわずかに開く。
「押し出す方を大きく……押し出される方を鋭く……。」
開いた指先が止まる。
「……ですが私はそこがいつも安定しません。」
「暴発を抑えるのがやっとで……。」
コチ――コチ――コチ――
時計の音が再び沈黙を満たす中、マーベリックは目線だけを周りへ配り、そのまま時計を見た。
「わかった。今日はこれ以上話すと遅くなるからな。」
視線を戻し、椅子から腰を浮かせる。
「明日、これからについて対策を練る。」
そしてリアへ顔を向けた。
「リア。屋敷まで送る。」
その言葉にウェンティが腰を浮かせたが、マーベリックの視線が向くと、そのまま動きを止めて座り直した。
「そのほうがいいの。みんな疲れておる。」
「……はい。」
リアは立ち上がって皆に頭を下げ、顔を戻す途中でターニャへ目を向けた。今にも泣き出しそうな顔が視界に入ると、そのまま何も言わずに視線を外す。
「行くぞ。」
入り口へ向かうマーベリックを追ってリアが歩き出し、ウェンティもそのあとに続いた。
マーベリックはドアを開けてリアを先に通すと、自分も外へ出ながらウェンティへ振り返る。
「ターニャを頼む。」
「わかった。」
ウェンティがうなづくと、マーベリックはそのままドアを閉めた。
ガチャン――




