第59話 外壁の上で①
ゴオォォ――ン……
カンカンカンカン……
ゴオォォ――ン……
カンカンカンカン……
警鐘と避難鐘が重なり響く中、避難する住人の流れを縫うようにマーベリックとウェンティは外壁へ向かっていた。
足早に進むマーベリックの背を、ウェンティが懸命に追う。
やがて城壁が見え、登り階段の前に立つ防人へマーベリックが声を掛けた。
「ダンゲルはもう来てるのか?」
「はい。ダンゲルさんとリアは上に上がってます。」
小さくうなずくと、そのまま二人は階段を駆け上がる。
一段、また一段と登るにつれ視界が開け、眼下では屋敷へ向かう住人たちが列を成していた。
外壁へ出た瞬間、吹き抜けた風がマーベリックのマントを大きくはためかせ、その横でウェンティの銀髪もさらりと揺れる。
「なんじゃ……あの黒いのは……」
「あれ全部黒影か?」
ウェンティが囲いへ駆け寄り、身を乗り出した。
マーベリックも荒野へ目を向け、左端からゆっくりと視線を流していく。
「黒影だな……100……200……」
視線が右端まで届く。
「……300……。」
ウェンティが勢いよく振り返った。
「300だと!?」
マーベリックは小さく息を吐き、なおも群れを見据える。
「テセルスでもこれだけの大軍見たことがない。」
(しかも微動だにしない……指示に従ってるように見える。)
群れ全体を追う視線は止まらない。
(これだけの大軍どこにいた……女王が集めた……)
「……ック!」
声が耳をかすめる。
(……女王が作り出した……。)
「マーベリック!!」
「どうした?」
ようやく視線を落とすと、目の前ではウェンティがむすっと頬を膨らませていた。
「お主はこの一大事にもかかわらず……もういいわ!」
そう言って外壁の先を指差す。
「あっちにダンゲルとリアがおる!」
指先を追うと、風に揺れる黒と青のローブが目に入った。
「向こうに行くぞ!」
ウェンティが駆け出し、マーベリックもあとを追う。
二人が並ぶと、ダンゲルは一度だけマーベリックへ目を向け、すぐ荒野へ視線を戻した。
「これだけの大軍は初めてだ。」
「約300……。」
マーベリックも同じ荒野へ目を向ける。
「それにあの位置は蒼雷の射程外だ。」
横からリアが口を開いた。
「ダンゲル様。霧を撒きますか?」
ダンゲルは荒野から目を離さない。
「いや……今はいい。」
「はい。」
その時だった。
群れの中央、その後方でひときわ巨大な黒影がゆっくりと姿を現す。
「でかいやつが出てきおった……。」
ウェンティが息をのむ。
「女王だ。」
ダンゲルの眉間に深いしわが刻まれた。
「あれが……。」
マーベリックは巨体を見上げる。
(俺達を襲ってきた大型の黒影の2倍はある……。)
すぐ横では、リアが拳を固く握り締めていた。
(女王は何をやりたい……)
ヒュオォォォ――……
吹き抜ける風が一段と強まり、巻き上がった砂煙が一気に視界を覆う。
四人が身を低くして風に耐えた、その刹那――
シタタッ――
シタタッ――
「?」
マーベリックは反射的に風下へ視線を走らせる。
ガアァァ!!
「!?」
砂煙を突き破り、黒影がダンゲルとリアへ襲いかかる!




