第55話 報告①
ブロロロ――
二人はハーベイの街へ戻ると、そのまま門をくぐった。
「お疲れ様です。どうでした?」
防人の声に、アリーシャは額まで上げたゴーグルを指で押し上げながら水筒を取り出す。
チャポ――
軽く振ると水音が返った。
「水源あったのですか?」
「まだ断定はできないけどねっ。」
水筒を鞄へ戻しながら口元を緩める。
「期待はできる。」
防人の顔がぱっと明るくなる。
だがアリーシャはすぐに人差し指を立てた。
「まだ、他言無用ね。」
「わかりました!どうぞ。」
二人は再び魔鉱三輪を走らせ、街中へ向かう。
「黒影のことは言わないんだな。」
前を向いたままクリフトが呟く。
「言う必要ないでしょ。」
返事は早かった。
小屋へ戻ると魔鉱三輪を滑り込ませる。
ド、ド、ド、ド――
カチッ
ヒュゥゥ――ン……
シュゥゥ――……
駆動音が消えるのを待つ間もなく、アリーシャは飛び降りて前輪へしゃがみ込んだ。
「どうした?」
「ちょっと前輪がカリカリ言うんだ。」
さらに身を乗り出し、奥へ顔を近づける。
「ちょっと加速したときにね……。」
革手袋を外し、そのまま指先を差し込んだ。
「ん~……。」
探るように動かしていた手が止まる。
「……あ~奥まで入り込んでるねこれ……。」
上体を起こし、小さく息を吐いた。
「バラさないとダメだね……。」
「減速板は大丈夫なのか?」
顎に手を当てながら前輪を見つめる。
「それもバラしてみないと……。」
そして顔を上げた。
「クリフト。一人でダンゲルさんとこに報告行ってくれる?」
「このことは早く報告しないとねっ!」
クリフトが小さく息を吐く。
「そうだな。俺だけで行ってくる。」
「うん。よろしく―。」
返事をしながらも手はすでに前輪へ戻っていた。
クリフトは魔鉱三輪へ跨がる。
ブロロロ――
小屋を出る音が遠ざかる。
アリーシャはそのまま前輪へ向き直った。
カチャ――カチャカチャ……
固定具を外しながら隙間を覗き込む。
(減速器自体はだいじょうぶそう……。)
コンコン……コンコン……
木槌で軽く叩くたび、前輪がわずかに浮いた。
「よっと……。」
指を掛けて引き抜いた瞬間、ずしりと重みが腕へ伝わる。
「おも……。」
抱え直しながら作業台へ向かう。
腕に重さが食い込み、思わず肩へ力が入った。
「うぉりゃ!」
勢いをつけて持ち上げる。
ドスン!
作業台が小さく揺れた。
「ふぅ……。」
革手袋のまま鼻の頭をこすり、前輪へ視線を戻す。
前輪の縁を指でなぞりながら、小さく口元を緩める。
「さて……磨くか……。」
額の汗を拭う――




